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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第三章 確立
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待ち伏せ

 出発準備が整う頃、十四郎はマルコスを少し離れた場所に呼び出した。


「どうした?」


 何時になく真剣な顔の十四郎に、マルコスは腕組みしながら首を傾げた。


「諦めた様子ではないですね」


「そうだな……あの顔は」


 真っ直ぐに見詰める十四郎の目は、マルコスに去り際のアルベルトの顔を思い出させた。


「公演を飛ばす事になっても、先を急ぐ事を具申します」


「その訳は?」


 十四郎の意見にはマルコスも思う所はあったが、敢えて聞いてみた。


「我々を本物の使節団と思うなら……多分、襲って来ます。盗賊などに見せかければ、後々の問題も解決し易いでしょうから」


 見解を述べる十四郎の言葉には、マルコスも同意見だった。政情不安なこの国では、如何にアングリアン使節団でも襲われる可能性は十分にある。


 しかも、一見正式な護衛も無く無防備を装う事が、逆に付け入る隙を与える事になった可能性は大きかった。


「襲うなら移動中、街と街との間だな……目撃者のいない場所か」


 マルコスは襲撃地点を予測してみるが、多すぎて苦笑いした。


「昼間、全力で駆け抜けても難しいですか?」


 少しでも戦闘回避できるならと、十四郎は考えた。


「無理だな。エクスペリアム国境に近い程、街は少なくなる」


「ならば、誘いますか?」


 また、十四郎がらしくない事を言った。


「どうした? 何時ものお前らしくないぞ」


「何時襲われるか分からないままでは、対応が後手に回ります。待ち受けなら、最善の準備が出来ますから」


「分かった、皆を集めてくれ」


「はい」


 十四郎は皆を集めに走って行った。マルコスはその背中を見ながら、不思議な感覚に包まれていた。


____________________



 次の街までは一日で十分行けるが、その次は二日掛かる。しかも途中の森林地帯は襲撃には持って来いの場所だった。逆に言えば、待ち伏せにも好都合と言えた。


 ココとツヴァイが待ち伏せの場所を決める為に先行した。


「どうしたの? ビアンカ元気無いよ」


 マルコスの話が終わり出発の準備の最中、分かってはいたが、敢えて知らないフリでリズが尋ねた。


「私のせいで……」


「何? 自分がモテるって言いたい訳?」


 俯くビアンカに、リズはワザと意地悪い口調で言った。


「……そんな事……」


「いいよなぁ、私も一度でいいからモテてみたい」


 頭の後ろで手を組んだリズは、笑いながら呟いた。


「えっ?」


 その笑顔は、揺れるビアンカの気持ちをそっと支えた。


「ビアンカ、ワタシは何時でもあなたの味方よ」


 そっと近付いて来たシルフィーが耳元で囁くと、ビアンカは愛おしそうにシルフィーの首筋を撫ぜた。


「久しぶりに大暴れするよ。ワタシと十四郎の凄い所を見せてあげる!」


 アルフィンも興奮気味に尻尾を揺らした。


「ビアンカ様、言い寄る男など蹴散らしましょう」


 ノインツェーンが笑顔で言う。


「ビアンカには、指一本触れさせない」


 今度はリルが何時もみたいに、表情変えずに言った。皆の気持ちが嬉しくて、ビアンカはそっと十四郎を見ると、目が合った。十四郎は穏やかな笑顔を向け、小さく頷いた。


 言葉は無くても、ビアンカには確かに伝わった……とても穏やかで、暖かい気持ちが。


___________________



 ココとツヴァイが選んだ場所は、森の中心から少し離れた開けた場所だった。四方を見渡せるが、近くには太い木々もあり弓矢避けには好都合、しかも弓手が登って狙撃も可能だった。


 マルコスとココは敵の戦力を事前に削ぐ為、至る所に罠を仕掛けていた。馬車を円形に配置して人がいる様に見せ掛けてはいるが、ラナやダニー達は近くの安全な洞窟に退避し、ランスローやリズ、フォトナーの部下数人が護衛に付いた。


 襲撃隊は、十四郎を筆頭にツヴァイとゼクス、ノインツェーン、フォトナーと残りの部下で構成した。当然ビアンカは襲撃隊に加わり、アルフィンやシルフィーも参加する。マルコスとココ、そしてリルは木の上から敵を狙撃する段取りだった。


 準備は万端。各自は配置に付くと、戦いの先端が開かれるの待った。


___________________



「アルベルト様、野営の場所を見付けました。襲撃には最適の場所です」


 配下の騎士の報告に、アルベルトは立ち上がった。後を付ける事、一日半……待ちに待った瞬間にアルベルトに頬は緩んだ。


 もう少しでビアンカが自分の物になる。そう考えただけで、笑いが込み上げた。


「手筈は?」


「夜中を待って、三方からの同時攻撃で退路を断ち、一気に攻め落とします」


「その男達は?」


 数人の縛られた男達にアルベルトは線を向ける、鋭い眼光の男達は付近の盗賊だった。


「痕跡です」


 配下の騎士は、妖しい笑みを浮かべた。



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