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93匹目 教会

年度末で仕事が忙しいと言ったな。あれはガチだ。仕事面倒くさい・・・誰か変わってくれてもいいのよ?

 

 ログインしました。

 行きがけの駄賃に3匹目のキツネちゃんを封印して街へと戻ってきたわけだが、晩飯を食べに行くからと呼び戻され、再ログインしたのは午後10時ぐらいだな。


 朝一番に行くよりかは結果的に良かったかもな。

 まぁ、日の出から二時間しか経ってないからあんまり変わらないかもだが。


「お、ここが教会っぽいな」


「きゅい?」


 ログインした後また忘れないうちに教会へやってきた。

 でっかい十字架にでっかい鐘。プレイヤーだと思われる行列まであるから間違いないだろうな。


 ……やっぱり今度にしようかな。行列に並ぶとか面倒くさいし……

 うん。今日は日が悪かったんだ。明日から本気出す。


「ホー!」


「いてて……」


 さて、フィアちゃんのところにでも行こうかと振り返った俺のおでこを真後ろで待機していたミズキが突っついて止めた。


 うぅ……そういえば直前になって逃げようとしたら止めるようにミズキに言っていたんだった……。

 面倒くさいなぁ……まぁ、ミズキに言われたならしゃーない。並びますかね。


「メェエエ」


 教会から広場の真ん中まで続く行列の最後尾にウサギとフクロウとヤギと妖精とネコが並ぶ。

 ちょー目立ってるような気がしないでもないけどしょうがない。

 教会の周りを行く人の話し声が全て俺達の事を噂しているような気までする。

 まぁ、それは流石に自意識過剰だとしてもチラチラと視線を向けられているのは事実だな。俺が視線を感じて顔を向けたら一斉に目を逸らしてるし。絶対チラチラ見てただろ。


「~~~~」


 列に並び始めて10分もしないうちにティーニャが飽きたみたいだな。

 まぁ、列はちょっとずつしか進まないし、基本立ってるだけ(ティーニャは飛んでいるが)だし、飽きてもしょうがないわな。


 そんなあなたにはコレ!リアさん特製クッキー!ティーニャお気に入りのこのクッキー。今ならなんと同じものがもう一枚ついてお値段据え置き。無料でプレゼント!


「~~♪~~?~~!!」


 自分の顔ほどもあるクッキーを両手で一枚ずつ掴み喜びの舞を踊っていたティーニャだが、いざ食べようとして片手じゃ食べにくく四苦八苦してる。

 逆さまに飛んでも更に食べにくくなるだけだと思うんだが……

 一枚誰かに預ければいいと思うんだが、それは思い浮かばないんだろうな。あるいは一度貰った物を誰かに渡すのが嫌なのかもな。見てる分には面白いからしばらくは放置するけど。


「……んにゃ」ぺちっ


「あぁ!おしい!」


 暇を持て余した俺は今日こそノゾミをぎゅーっとしてやろうと四苦八苦しているのだが上手くいかない。

 ノゾミは俺に体をこすりつけてきたり、よく肩にのってきて乗り物代わりにしてきたりするくせに俺から触ろうとしたら逃げるからなぁ。

 隙を見て、なでなでぎゅーっとしてやろうと思うんだが。捕まえようと考えた時点で逃げられるんだよなぁ……

 動物ってそう言うところあるよね。おやつあげようかなーって考えただけで擦り寄ってきたりとか。


 だからこそ直前まで関係ないことを考えていr――――


「えいっ!」


「……んにゅ」ぺちっ


「あうっ」


 また避けられたうえに捕まえようとした手の甲を前足でぺちりと叩かれた。

 うむぅ……敏捷値は同じ筈なんだけどなぁ……やっぱ器用値が高いと回避率が上がるのかね?

 捕らえた!と思ったのにぬるぬる動いて避けられた。

 ……ぬるぬる動くって表現嫌だな……軟体生物みたい。いい意味でね!


「きゅい~」


 んー、にしてもなかなか順番が回ってこないな……

 列が長いのもそうだが、なかなか列が前に進まないんだよな……ティーニャはクッキーを一枚半食べた時点でお腹いっぱいになり、俺のポッケでお昼寝しているから静かになったが、今度はボーパルが欠伸をしている。まぁ暇だし、いいお天気だからな。森の奥は所々木漏れ日が指している以外はお日様の光は届かないからなぁ……


 ふぁ~あ。っとと、ボーパルの欠伸が移っちゃったな。なんで欠伸はうつるんだろうか?まぁいっか。ボーパルとおっそろい♪


「ホ~」

「メェエ~」

「……にゃぁぁあ~」


 うん。別に全員で欠伸をする必要はないんだよ?と、思ったら一緒に列に並んでいる他のプレイヤーにもたまたま近くを歩いていたNPCにもうつっていた。


 さ、さすがはボーパル。欠伸でも強いな。あるいはボーパルがかわいかったから皆見ていてそれでうつったのかな?それなら分かる。


 ん?周りを見渡していて気付いたが列に並んでいるプレイヤー……特に男性から同じ単語が何度も呟かれてるな。……「シスター」がどうとか。


 ……あぁ。これだけ列が長い理由も、クエストを受けるだけなのに妙に1人あたりの時間が長い理由も分かった気がする……

 つまりはここに並んでいる人の大部分は回復魔法目的じゃなく人に会いに来ているわけだ。その人とは勿論……


「あっ!お姉ちゃんはっけーん!」


 違う、(お前)じゃない。


「いやー、ごめんね!遅れちゃった!あ、ボーパルちゃんもひさしぶりー!元気だった?」


「きゅい!」


「いや、遅れたも何も特に約束もしてなかったと思うんだが……というかサラっと列に割り込むなよ。迷惑だろ……」


 晩御飯のときに教会に行く話しをしないほうが良かったか……?いや、別に一緒に並びたくない訳じゃないけどさ。俺が我慢して並んでたのに後から来てなんの苦労も無く割り込まれるとイラっとするよな。


「えー、そんなちっちゃい事ばっか気にしてるからお姉ちゃんはちっちゃいんだよ」


「なん……だと……!?」


 まさかの俺の身長が伸びない原因が発覚!俺わりとおおらかな性格のつもりだったんだが……


「しょうがないなー。ねぇねぇそこの人」


「え?俺っすか?」


「そうそう。お姉ちゃんの後ろに並んでいる冴えないあなた!ここにならんでもいーい?」


「ごふっ!お、おう……」


「いいってさ、お姉ちゃん!」


「あー、うん。ならいいんじゃないかな……」


 俺の後ろに並んでいた冴えない太めなお兄さんが口から赤い何かを吐きつつお腹を押さえて蹲っている。何も悪くないのに罵倒されたからな。かわいそうに……


「妖精ちゃん……かわえぇ……はぁはぁ……」


 訂正。ダメだコイツ、早く何とかしないと。


「あはは~。ミズキちゃんもアイギスちゃんも久しぶり~。あはっ。皆もふもふだぁ~。もふもふ。じゅるっ。おっとよだれが……」


「きゅい!?」

「ホー!!」

「メェエ!メェエエエエ!!」


 ダメだコイツも、もう手遅れだ。


 とりあえずアイギスの背中でよだれを拭こうとしているシルフを引き剥がし、「妖精ちゃんの……よだれ……!?」とか呟いている背後の男をヒールフックで黙らせる。

 ……どこかから不本意ながら知り合いになった変態紳士のうらやましそうな声が聞こえてきた気が気のせいだろう。足元からありがとうございます!と聞こえてきた気もするがこれも気のせいだろう。


「えほっえほっ!……急に首元引っ張ったから息が詰まっちゃった……あれ?ティーニャちゃんは?」


「ん?ティーニャなら俺のポッケで寝てるけど?」


「何それうらやましい!あたしにも分けて!」


「いや、分けてと言われても……ひゃっ!?」


 指をわきわきと動かしつつ高い敏捷値を余すところ無く発揮して俺に接近したシルフが正面から俺の左右のポケットに両手を突っ込んできた。


「~~~!?」


「ひゃっ、ちょっ、くすぐった……ひっ」


「ティーニャちゃん発見!ここか~、ここがええんか~」


 ティーニャを発見したあとも、にやにやとイタズラっぽい顔でポケットに突っ込んだ手を抜かずにわきわきと俺のふとももをくすぐってくる。


 こ、こいつ絶対わざとやってやがる。こうなったら……


「シルフ……いい加減にしろ。じゃないと……草喰わすぞ」


「すみませんでした!!!」


 ズザーっと音がしそうなほどの勢いで俺から飛びのいたシルフが土下座をして俺に懇願している。FWOでは痛みは感じないように出来るけど味覚は普通にあるからな。ボーパルに草を食べさせられて以来草喰わすぞはシルフによく効く脅し文句になっている。


 ふん。まぁ許してやるか……


「~~?」


 気持ちよく寝てたのに突然起こされただけじゃなく、狭いポケット内で、もみくちゃにされたティーニャがポケットの縁をつかんでちょこんと頭だけをだし、土下座するシルフを不思議そうに眺めていた。

もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


出番があるごとにシルフの頭が弱くなっている気がする・・・まぁ、もふもふが増えているからね。しょうがないね。

そしてサブタイトルが教会なのに教会に入れなかった件・・・

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