86匹目 妖狐戦後
「『封印』」
やっぱりね。前衛が出来る子は欲しいからね。もふもふだし。ボスじゃ無くなったら分身は流石に使えないと思うけど、幻惑を使ってボーパルとタイマンで同等の勝負が出来る上に、ふさふさだし。物理攻撃を大幅に軽減できるしっぽを持っていて、ふかふかだし、狐火っぽい火の玉は俺が得意な水とも、ミズキの得意な風とも、ティーニャの得意な土と光とも被らないから丁度いいし、もふもふだしな。
というわけで趣味と実益を兼ねてキツネちゃんは封印だ!!
……うん。大丈夫分かってる。封魔の本に表示された1%の文字を見た時点で冷静になったから。
えーと、次のイベントまでにはキツネちゃんを召喚したいから……後10日ぐらいだな。
……1日に10匹ずつかぁ……手札は割れてるし、最初苦戦したのはどこかの誰かが暴走したのをフォローするためだったから次回以降は楽にはなるだろうけどMPがなぁ……。
慣れてくればHPの減少は最小限に抑えられるようになるだろうけどMPばっかりは戦えば減るしな。
特に挑発を使いっぱなしのアイギスと魔法攻撃しかできないティーニャのMPが切れるのはマズすぎる。
となればMP回復薬を先に作るために第三層へ先に向かうべきか。
でも、第三層ともなれば敵もまた強くなる訳で。唯でさえも10日で残り99匹封印したい訳だし無駄な時間は……でも自然回復を待つぐらいなら回復薬を作ったほうが……むむぅ。
ちなみにHPとMPの自然回復速度は非戦闘時は1分毎に1%だな。ボーっとしてたら1時間40分で全回復するわけだ。
パーセントでの回復のせいでMPの低いアイギスの回復に1時間40分も掛かるけど、パーセント回復のおかげでMPの多いティーニャの回復が1時間40分で済むな。
……じゅうぶん長いな。まぁレベルが上がってくれば1%の値が上がってくるだろうからありがたいんだろうけど、1日に10匹狩るのに9回全回復が必要だとしたら回復だけで15時間もかかってしまう。
回復中は戦闘出来ないしやれることが少ないから、キツネちゃんと戦って、1時間40分ログアウトして、またキツネちゃんと戦って、1時間40分ログアウトして……
戦艦の擬人化ゲームをやってるんじゃないんだからそんな生活は嫌だな。
となればやっぱりMPの回復薬は必須か……
なら、キツネちゃんと戦った後、MPを一切使わずに第三層を回って月光草を採取して回るかね。索敵はMP使わないし戦闘を徹底的に避けて回ればいけるかなぁ……月光草がドロップアイテムじゃなくて良かったな。戦闘が必須じゃないならまだやりようはある……と信じたい。
こういうときに控えのモンスターがいたらローテーションを組んで戦闘出来るんだろうなぁ……。やっぱりキツネちゃんは欲しい。
「メェェ」
「ん。回復終わりっと」
ごちゃごちゃと考えごともヒールクリームをぬりぬりしていた手を止める。
アイギスはHPが多いからぬりぬりする量が多くて大変だ。ぬりぬりした後に薬が残らないからいいけど、もし残っていたら全身ベトベトだな。ボーパルのMPも切れちゃったからしょうがないんだけどヒールクリームも大人買いしないとダメだろうなぁ。
キツネちゃんと戦う前にお賽銭も入れる必要があることを考えると、更に出費が嵩むなぁ。
キツネちゃんは封印するからドロップは無いし、戦闘は出来ないし。第三層で採取する月光草はMP回復薬にして買い取るからむしろお金払うし。
今は懐に余裕があるからいいけどやっぱサモナーは懐事情がキツイな。
「きゅい!」
「ホー!」
「メェエ!」
「~~!」
「……にゃあ」
「うし。全員回復はばっちりだな。それじゃあ一旦街へ帰るか。MPを使うなとは言わないけどアイギスのMP量を下回らないようになー。あ、アイギスは勿論MP温存で」
「メェ」
本当は1本か2本ぐらいサンプルに月光草を持って帰りたいところだが、流石に新しいエリアに行く最初ぐらいは全回復状態で行きたいしな。
というわけで。街までレッツゴー!
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《召喚モンスター:ノゾミがレベルアップしました任意のステータスを上昇してください》
ノゾミ ミソラキャット
Lv16 → 17
体力10
筋力16
敏捷18
器用27 → 28
魔力4
精神9 → 10
スキル
隠蔽 気配察知 夜目 登攀 歌 回避 耐寒
街にとうちゃーく!
「きゅい!」
途中何回か戦闘をしたけどレベルアップしたのはノゾミだけだったな。やっぱりレベルが上がってくるとどんどん上がりにくくなってるなー。
「~~!!」
途中でMPの使用禁止を言われて暇になったティーニャが俺の髪の中に潜り込んで遊んでいる所為で頭がくしゃくしゃのわちゃわちゃになってるのをティーニャがお腹を抱えて笑ってるんだが……
お前の髪もくちゃくちゃにしてやろうか!!
「~~~!」
キャ~と叫びながら逃げ出すティーニャをむんずと掴んで同じ様に頭をくしゃくしゃのわしわしにしてやったが、ティーニャの細くさらさらの髪はどれだけかき回しても絡まる様子はなく絹のような手触りを俺の指に伝えてくる。
罰のつもりでやったのにティーニャがすごく嬉しそうなんだが……まぁ、かわいいからいっか。
んじゃ、とりあえずリアさんの所に言って木材以外のドロップを売って、お金を返してもらってからアトリエに行こうかね。
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カランコロン
「おじゃましま~す」
「きゅい!」
「ホー!」
「メェエ!」
「~~!」
「……にゃあ」
特に何事もなくお金を受け取った後アトリエにやって来た。
リアさんもいつも店にいて不思議だけどこのアトリエもいつもOPENの札がかかっているな。割と内部時間で深夜に来たりしてるんだが……
ちなみに今は日が暮れてから5時間ぐらいたった後だから……夜10時か11時くらいかな?それならまだ開いている店もある……かな?大体の店は閉まってると思うけども。
「おぅ!いらっしゃいデース!さっきぶりデース!」
いつも元気なエルが勢いよく扉を開けて出迎えてくれた。勢い余って扉の前でクルクル回っている程だ。
元気なのはいいことだよな。うん。深夜までこのハイテンションだと疲れそうだけども。周りが。
「さっきぶり……といっても4時間はたっているけどさ。……ちょっと気になったんだけどこのアトリエっていつまで開いているんだ?もう深夜だと思うんだが……」
「それは簡単デス!エルかフィアがアトリエで起きている間はアトリエが開いていて、エルとフィアが寝ている間は閉まってるデス!今はエルが起きてるのでアトリエは開いているデース!」
「な、なるほど……」
なんちゅーアバウトな……というか寝る瞬間まで働いているのか?それだけアトリエの仕事が大好きなのかそれとも儲かってないのか……
そういえば俺以外の客をアトリエで見た事が一度も無いような……あっ
「……エル。俺はたとえ何があってもこの店で買い物を続けるからな……」
「……?ありがとうデス?」
首を傾げるエルの肩を、涙を堪えつつポンポンと叩く。
うんうん。何があってみ俺だけはいつまでも味方だからな。
最悪の場合でもフィアちゃんだけでも養ってみせるから安心してくれ。
もふもふ!
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ビルダーズめちゃくちゃ面白いね!アトリエに通ずる面白さがある。でも部屋を作れる領域がもうちょっと大きくてもいいと思う。
おおきづち。お前は許さない。




