84匹目 VS妖狐②
シリアスのやりすぎで禁断症状が・・・ビクンビクン
十分ネタ満載だわ。とか言ってはいけません。
「コン!!」
「メェエ!」
「……にゃぁん」
ティーニャの魔法で目を潰されたキツネちゃんが手当たり次第に火の玉をばら撒いていく。
これに対応したのがアイギスとノゾミだ。アイギスが叫んだ瞬間。七色のカーテンの様なエフェクトが仲間全員にかかり、ノゾミは口にしているメロディーの調子をさっきよりも激しいものへと変更していた。
鑑定で確認したそれぞれの効果は被魔法ダメージ軽減と火魔法ダメージ軽減だな。
とてもありがたいんだが流石に流石に目の見えない相手が適当に撃っただけの直線軌道の魔法に当たったりは……うおっ!危ね!かすった!今かすったぞ!
キツネちゃん……恐るべし。
「……にゃあ」
俺の首に巻きつく形で乗り物がわりにしているノゾミが歌いながら俺を責める声音を出すという器用な真似をしているような気がするが気のせいだろう。
というか降りて自分で避けろよ。敏捷の値は俺と同じのはずだろう?
「……にゃ」
こら。目を逸らさない。
それと、キツネちゃんの火の玉のかすりダメージを受けると同時にアイギスがかけてくれたバフが切れた。
他の皆はまだかかりっぱなしなところを見るにダメージを食らうと切れるのかね?ならおしい事をしたなぁ。どうせならもっと大きなダメージの時に軽減して欲しかったなぁ。
……いや、別に大ダメージを食らいたいわけじゃないからね?だから明らかに俺を睨みながら大きな火の玉を出すのは止めようか。
そんなのくらったらHPどころか肉体まで消し飛んじゃうからね!?
「コーン!」
「『ウォーターシールド』!!」
ずっと詠唱していた水魔法の新技を発動させる。
地面から壁のように立ち上った水の盾がキツネちゃんの火の玉を防……げずに貫通して俺のところまで火の玉が飛んでくる。
あっつ!!仲間に指示を出せないっていうデメリットを抱えながら詠唱したのに一撃も防げないの!?
サモナー弱!
「メェエ!!」
「コン!」
ここでやっとアイギスの挑発が決まりキツネちゃんがターゲットを俺からアイギスに変更して接近戦をしている。
いや、殆ど一方的にアイギスが殴られているだけだけども。
アイギスはキツネちゃんの攻撃をかわすか、鎧で受け流すかしてダメージは殆ど食らっていない。流石だなぁ。
……っと、あったあった。ヒールクリーム。ぬりぬり……
「ホー!」
「~~!」
「コン!?」
そしてアイギスが注意を引き付けている間に後ろに回った飛行魔法攻撃部隊の二人が魔法を叩き込み、目に見えてキツネちゃんのHPが減る。
そしてこの攻撃でキツネちゃんのターゲットがアイギスから空を飛ぶ二人に移ってしまった。
キツネちゃんがアイギスに比べレベルが高いからか、精神が高いのか、挑発の効きが悪いな。かかり難いし、解けやすい。アイギス自体の火力は殆どないから攻撃で注意を引き付けるのも難しいしな。うーむ。
「コン!」
キツネちゃんが空を飛ぶ二人を打ち落とそうと火の玉を連続で放つ。
ミズキの体と同じ位大きな火の玉が高速で射出されるとはいえ直線軌道しか取れない火の玉如きに空を自由に飛びまわれる二人が当たるはずが無い。
「ホー!?」
……当たるはずが無い……のだが、火の玉の一発がミズキに命中し。ミズキが体中から煙を上げつつ高度を落としていく。
なんでだ……?あれぐらいの攻撃ボーパルに比べれば何倍も遅い。いつものミズキなら余裕でかわせたはずだ。
なのに、まるで火の玉が見えなかったみたいにクリーンヒットしたぞ……?
「ホ、……ホー……」
「コン!」
「メェエ!」
ふらふらと落ちてきたミズキ目掛けてキツネちゃんが疾走する。
アイギスが何とか引きとめようとするがキツネちゃんの方が敏捷が高く追いつけない。
落ちてきたミズキに追いついたキツネちゃんの爪がミズキを引き裂く。
「きゅい!!」
その直前に割り込んできたのはボーパルだ。
小さい体で弾丸の様に飛び出し側面からキツネちゃんへと急接近する。
キツネちゃんもボーパルの接近には気付いているようだが余裕の表情でしっぽを動かすだけでボーパルへの対応を終わらせる。
キツネちゃんは気付いているんだ。
ボーパルの速さではどれだけ急いでもキツネちゃんがミズキを切り裂く方が速いと。
ボーパルの覚えているスキルには近接の打撃攻撃しか無いと。
だから、キツネちゃんが一足先にミズキを切り裂き。ボーパルの攻撃はさっきと同じ方法で防ぐことが出来ると確信している。
だから……ボーパル相手に油断をしてしまった。
「きゅい!」
キツネちゃんへと近づいたボーパルが地を蹴るとその場で宙返りをする。ボーパルが宙返りをした位置はキツネちゃんにはまだまだ届かない位置だ。
キツネちゃんにはそれが意味の無い、無駄な行動にしか見えなかっただろう。
確かにボーパル単体ならばそうだ。
だが、ボーパルが光を放っている脚甲を装備しているのならば話は変ってくる。
「コン!?」
ボーパルの装備する風斬りの脚甲から飛び出した半月型の斬撃がボーパルの走る速度をプラスされた視認すらも困難な速度でキツネちゃんに迫りふさふさのしっぽを貫通してキツネちゃんへとぶち当たり。吹き飛ばす。
きゃー!ボーパルさんかっこいい!!
仲間のピンチに颯爽と駆けつけ。切り札を使って脅威を跳ね除け。傷ついた仲間を癒す。
どうみても主人公だな。
俺も回復魔法覚えようかなぁ……
「~~!!」
ボーパルに吹き飛ばされ体勢の崩れたキツネちゃんへとティーニャが追い討ちをかける。
「コン!!」
追い討ちまでキッチリ喰らい。全身で怒りを表しながら立ち上がったキツネちゃんは4本あったふさふさしっぽが1本無くなり3本になっている。
勿体無い!切れたしっぽはどこ行った!?抱き枕にするから頂戴!くそぉ!見当たらねぇ!!
……まぁ、そうだよな。部位欠損のパーツが落ちてるとか嫌だよな。剣で斬られた腕とか足とかが転がってるとか、いくら血が出なくても発禁待った無しだわな。
「……にゃぁ……」
相変わらず俺の首に巻きつく形で肩に居座っているノゾミが(この人、主なのにさっきから見学と応援しかしてない……)と呟いているような気がするが気のせいだろう。ノゾミだって歌ってるだけだしな。まぁ、それが仕事なんだが。
それに俺だってただキツネちゃんのしっぽを眺めていたわけじゃない。
観察に徹する事でキツネちゃんの行動パターンは大体分かった。
近接では主に爪で攻撃してしっぽで物理攻撃を無効化する。遠距離では4つの火の玉を飛ばしてくるが直線軌道だけなので回避は容易。
魔法防御は高いけど体力は低そうだな。んで、敏捷が高いみたいだけどボ-パルに追いつける程では無い……と。
正直油断さえしなければ負ける事は無いだろうな。
……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
「コーーーーン!!」
アイギスが肉盾をして。あんまりダメージが通らない魔法部隊がチクチクと嫌がらせをして。ここぞというタイミングでボーパルがでかい一撃を入れる。それを繰り返してるうちにキツネちゃんのHPが5割を切りキツネちゃんから白金のオーラが立ち上る。
ボス特有の強化エフェクトだな。ストーンゴーレムの時は行動パターンが増えたし注意……し……ない、と……
「「「コン!!」」」
増えた!!
キツネちゃんが今までに無いほど大きな声で吠えたと思ったらキツネちゃんの輪郭がぶれていって。気付いたらキツネちゃんが3匹になってた。
最初は4本あった尻尾がボーパルに1本切られて3本になって3匹に分裂して9本になった!九尾の狐だ!
いや、一匹から9本生えてるわけじゃないけどさ。
3匹もいるんだし1匹くらい貰っていってもいいかな?ダメか。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
キツネちゃんのイメージは、H○LICの管狐のおっきいバージョンの顔をかわいくデフォルメして、肉付きを良くした感じを思い浮かべてもらえれば大体あってます。
H○LICいいよね。マルダシとモロダシと管狐がかわいい。(未見さんに誤解を与えていくスタイル)
次回!妖狐戦決着!




