83匹目 VS妖狐①
※注意※
前半ユウがまるで主人公のような動きをしていますがこの小説は「VRMMOでサモナー始めました」であってますのでご安心ください。
「おとなしくもふられろーーーー!!」
戦闘開始。と同時に特攻!!目指すはキツネちゃんの後ろでゆらゆら、ふわふわしている4本のしっぽだ!
「きゅい!?」
俺の突然の奇声&猛ダッシュにボーパルがビックリして声を上げているが構うものか。
少しでも速く!一秒でも、一瞬でも、刹那でも速く!!あの桃源郷に至ってみせる!!
「コン!?」
初手から諸手を挙げて死に物狂いで突撃してくるのは流石に予想外だったのかビクッ!と一瞬体を震わせたキツネちゃんだがエリアボスに恥じない超速度でサイドステップをして俺の突進を余裕で避ける。
さっすがキツネちゃん。だがまだまだ!!
回避スキル《ステップ》!
「コォン!?」
全速力で走ってきた俺を回避したと思った瞬間。走る速度を一切落とさずに、直角に曲がって追尾してきた俺を見て思わずと言った感じで爪の生えた手を振り下ろすキツネちゃん。
咄嗟に手が出たという感じのそれほど力のこもっていない一撃だから受けても致命傷にはならないだろうがこのままだと確実に当たるコースだ。そして当然だが当たれば減速は必至!そんなのは認められない。
……やるならアレか。ぶっつけ本番だが今の俺なら出来るだろう。否。やるんだ!!
スキルチェイン!セットスキル《跳躍》!!
「コン!?」
キツネちゃんの振り下ろす爪を掻い潜る様に跳躍した俺はそのままキツネちゃんの上を飛び越えクルクルと回転しながらキツネちゃんの!シッポに!抱きつき!抱きつ……抱き……
く、くっそぉおおおおお!
スキル後硬直で動けない、だとお!?
折角……折角キツネちゃんのシッポに抱きつく形でぶつかったのに!抱きしめられないだなんて!あ、でも。顔に当たる毛がもふもふだぁ……。ああ!こんなにもふもふなのに思いっきりもふる事も出来ないなんてこんなに酷い罰が今まであっただろうか!!ふわぁ……鼻をくすぐるしっぽが柔らかくって温かい……こんな素晴らしいもふもふに包まれるだなんてここは天国かぁ……。なのにこの陽だまりを抱くことも出来ないなんてここは地獄か!!(この間0.1秒)
「コーーーーン!!」
「ん?え、うわっちゃ!あっちぃ!!」
キツネちゃんのシッポの付け根にまたがる様に着地しこの世の地獄と天国を同時に味わっていた俺の体が突然炎に包まれた。
流石の俺でも火達磨になりながらもふり続けるのはちょっと無理なのでキツネちゃんのシッポから転がり落ちてしまった。
まぁ、火達磨とは言っても体感的にはストーブに接近しすぎた時ぐらいの熱さなんだが、燃え盛る自分の体とゴリゴリ減っていくHPを見れば慌てもする。
「ふぅ。熱かった……はっ!?キツネシッポは無事か!?」
あの世界の宝に俺の所為で焦げ目が付いたりしてたら……。
最悪の想像に顔を青くしながら振り返った先では全身から薄っすらと陽炎の様な何かを立ち上らせつつ4本のしっぽを大きく開いて今にも飛び掛らんと姿勢を低くして俺を睨みつけているキツネちゃんがいた。
……うん。とりあえずしっぽは無事みたいだな。相変わらず美しい黄金色に輝いてる。まぁ当然か。自分の炎で火傷をするようなヘマは普通しないよな。HAHAHA……
って、めっちゃ警戒されてるぅ!!
キツネちゃんが俺を見る目にはありありと警戒の色が浮かんでおり。他にも俺を見下す様な色も……
有体に言えば犯罪者もしくはゴミを見るような目で俺を見ていた。
……ちゃうねん。おキツネ様のステキしっぽが素敵すぎて若干、理性とかテンションとかが吹っ飛んでいただけやねん。
少しとはいえ、もふもふスリスリした上に焼き入れられたおかげで理性とテンションが帰ってきて、代わりにプシュ~とやる気が抜けていったので許してくれませんかね……?
「コォオオーーーーーン!!」
はい。ムリでしたーーーーーー!助けてアイギス!!
「メェエ!!」
キツネちゃんが呼び出した4つの火の玉が俺に命中する直前に俺とキツネちゃんの間に《カバー》で割り込んできたアイギスがその体でもって火の玉を派手な炸裂音を響かせながら全て受け止める。
「アイギス!?」
助けを求めたのは俺だけども流石に今のはまずくないか!?アイギスは精神にはそんなに振って無いんだぞ!?
「メェエ!」
だが、そんな俺の心配を土煙と一緒に吹き飛ばすように高らかに咆えたアイギスには多少煤けているものの致命傷には程遠いほどのダメージしか負っていない。
アイギスの新スキル《鉄壁》一定時間動けないかわりに防御力が格段に上昇するスキルだったか。
任意のタイミングで解除して動けた《硬化》の方が使い勝手が良くて強かったんじゃね?って思ってたけどまさかここまで防御力が上がるとはな……
「きゅい!」
「コン!」
そしてアイギスが敵の注意を引き付けている間にボーパルがキツネちゃんに肉薄する。
互いの体温すらも感じられる超至近距離。そこはボーパルの間合いだ。
「きゅいきゅいきゅいきゅい!」
「コーン!!」
息もつかせぬボーパルの連撃。足先が既にブレて見えないほどの高速の攻撃に、しかしキツネちゃんはきっちり対応し、時には爪で受け流し、または紙一重で避ける。
……んん?なーんか違和感があるな。
キツネちゃんがボーパルの攻撃を全てさばいている様にも見えるけど、半分くらいはボーパルの方が攻撃を外しているような……
というか若干攻撃する場所がズレているように見える。ボーパルが今更そんな初歩的なミスをするかね?それも何度も。
「コン!」
半分攻撃を外しているにもかかわらず均衡した戦闘をするボーパルに業を煮やしたのかキツネちゃんが鋭く吠えるとアイギスに命中したのよりも一回り小さな火の玉が4つ浮かび、それぞれがボーパルにむけて殺到する。さらに退路を塞ぐ様にキツネちゃん本人もボーパルへと爪を振り下ろす。
「きゅい!!」
スキルチェインを無限に繋げられる訳じゃないボーパルもここで勝負にでる。
振り下ろすキツネちゃんの爪に耳を掠めながらも下を潜り抜けたボーパルがキツネちゃんの脇腹へと鋭い跳び蹴りを放つ。
ボフン
「きゅい!?」
が、ボーパルの放った蹴りはキツネちゃんが体に添わせるようにして移動させたしっぽに当たり、そのまま跳び蹴りの勢いでもふもふのシッポへとボーパルの体が埋まっていく……。
何そのステキすぎる防御方法!!俺もやられたい!顔突っ込みたい!!頭突きで攻撃すればいけるかな?
「コン!」
「きゅい!?」
キツネちゃんが一鳴きするとしっぽが燃え上がり火達磨になったボーパルがしっぽごと地面に叩きつけられコロコロと地面を転がってやがて止まった。
あー、なるほど。俺もあれをやられたのか……
とか言ってる場合じゃねえ!ボーパルは無事か!?
「きゅい……」
うん。ボーパルは残りHP1割をきっているがなんとか無事みたいだな。
そして減ったHPも、みるみると回復していく。おそらく回復魔法だろう。でも、ちりちりになっちゃった毛は戻らないんだな……。キツネちゃん許すまじ。
「ホー!」
「~~!」
「コン!?」
さて、ボーパルが時間を稼いでくれている間にミズキとティーニャの詠唱が終わり、風の刃と光の球体がキツネちゃんに迫る。
もふもふのしっぽを切り裂きにかかった風の刃を危うくかわしたキツネちゃんだが、至近距離で炸裂した光球の光を見たらしく。目を強く瞑っている。
分かる分かる。初見だとどういう動きをするのかじっと見つめちゃうよね。俺達も試し撃ちの時に全員で地面をのたうち回っていたし。
まぁ、慣れた後は皆で影法師を作って遊んだりしてたけど。
「メェエ!」
「……にゃぁん」
さらに鉄壁の硬直から復帰したアイギスが前に出て、俺の体をよじ登ったノゾミがメロディーを口ずさみだす。
いくぞキツネちゃん。ボーパルが戦線に復帰するまでの間。魔法主体の第二ラウンド開始だ!
……あ、俺が最初に飛び掛ったのはカウントしない方向でお願いします。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
たまには真面目に戦闘もしないとね!
シルフVSフウリンぐらいには真面目に戦闘したね!
クラスチェンジした皆の実力を書くにはどうしても強敵を出さないとだしねー、特にアイギス。
おかげで今回はネタ少な目。代わりにキツネ攻略の伏線がチラホラと。
ヒント!『夜の森』の『キツネ』です。・・・友達に勧められてやったけどあれは怖かった。ホラーは鬼門。
一緒に勧められた『サラダ』は大好きだけど。小人さんカワユス。
さて、本編に入れられなかったネタをここぞとばかりに入れたところで。
毎日雪がやばくて車の発掘が大変な天気ですがよいもふもふを!




