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80匹目 月光草

 

「たっだいまデ~ス!!」


「きゅい!?」


 バァン!と扉が粉砕するんじゃないかと心配する程力いっぱい開けて入ってきたのはエルだ。

 突然の登場にすぴすぴ、きゅぃ~。とかわいらしい寝息を立てて寝てたボーパルが真上に跳びあがって天井にぶつかっていた。……うん。見た感じ傷も無いようだし良かった。


「フィア~お姉ちゃんが帰ってきたデスよ~。むぎゅぅ~すりすり」


「……ちょ、やめてください。子供扱いしないでくださいっていつも言ってるじゃ無いですか」


 俺がアトリエの天井の(・・・・・・・・)心配をしている間にフィアちゃんに接近したエルが横からフィアちゃんに抱きついてもふもふしてる。

 あら^~いいね。代わってほしい。


「今日もフィアはもふもふデース!ユウも一緒にどうデスか?」


 え?いいの?マジで?


「……!いい加減に……してください!」


「そげぶ!!」


 お、お~。エルが乙女とは思えない声を上げながら地面と水平にすっ飛んでいって錬金釜にぶつかってそのまま釜の中に沈んでいったんだが……。フィアちゃんが何をしたのか全く見えなかった。

 フィアちゃん……恐ろしい子ッ!


「……ふん。悪い子は調合しちゃいますよ!」


 怖いよ!人体練成!?身体の一部を扉に持っていかれちゃうよ!?


「ぶくぶくぶく……ぷはぁ!むー、フィアは最近エルに冷たくないデスか?ちょっと前までは、お姉ちゃん。お姉ちゃんってエルの後ろをずっと付いてきてデスのに。まぁツンツンしてるフィアもかわいいのデスが!」


「それに関しては全面的に同意」


「……はぁ。姉さんは一体いつの話をしているんですか。ユウさんもいるんですからやめてください……」


 あっ、あっさり釜から出てきてさらっとフィアちゃんの過去を暴露するエルにフィアちゃんが一気にお疲れムードに。

 それにしてもお姉ちゃんか……。おにぃちゃん♪って呼んでもいいんだよ?


「……呼びませんからね」


「まだ何も言ってないんだけど」


「……言葉にしなくてもあなたの顔を見れば何を考えているかは大体分かると言ったはずです」


「……にぃにぃ、でもいいよ?」


「言いません!」


 ちぇー。まぁそれはいいとして。今はエルの方だな。今は持ち帰った戦利品の仕分けをしてるみたいだが、なんか無駄にテンション高くない?酔ってるの?


「……いえ、いつもよりはテンションが高いですがお酒は飲んでいません。例の薬の完成が近いらしくて最近はずっとあのテンションです。このままだといつか致命的な失敗をしそうなのですがフィアがいくら言っても聞いてくれないのです……」


「そうか……それは……大変だね」


「……大変です」


 常にあのテンションの人と一緒にいるとかキッツ。俺なら半日も持たないかも。実際FWO発売間際のずっとそわそわしている翼の近くにとか居れなかったもん。そわそわちらちら鬱陶しかったし、用もないのに話しかけてくるし、ちょっとした事でバシバシ叩くし。


「……姉さん。ユウさんが麻痺毒針を持ってきてくれました。麻痺消しドロップの調合をしてください」


「ん?ん~麻痺消しドロップデスか~……うん。それじゃあ、フィアが調合してみるデス!」


「……え?フィアが、ですか」


「フィアのレベルなら多分大丈夫デス!」


「……た、多分ですか……」


 ほへ~、フィアちゃんも調合出来るのか。そういえば前ホットミルクを作っていたような気もするな。完全に看板娘が仕事なんだとばっかり……

 ?なんか、ちらちらフィアちゃんがこっち見てるんだけど何だろう。


 ん~、成功するように応援して欲しいのかな?


「大丈夫。フィアちゃんならきっと上手く作れるよ!俺もフィアちゃんに作ってもらったほうが嬉しいし!」


「……はぁ。分かりました。フィアも初めてなのであまり期待はしないでくださいね」


「うん。頑張ってねー」


 うし。パーフェクトコミュニケーション!フィアちゃんもいそいそと調合の準備を始めてるし。選択肢は合ってたみたいだな。いや、選択肢は出てないけども。


「頑張るデスよ!フィアなら出来るデス!あぁ!そこはもっとグルグル~って感じでやるデス!あっ!違うデス!それじゃグルルグル~デス!そうじゃなくてグルグル~デス!」


「……」


 エルがフィアちゃんが調合している釜の近くをうろちょろしながら声をかけ続けている。

 うわ、あれはウザイ。あのフィアちゃんが目に見えてイラっとした顔をしてる。あんなフィアちゃん見てられない。


「……あ、そうだ!エル、魔力回復用の薬ってどうなったんだ?」


「それじゃんグリグラル……ん?あ!忘れてたデス!」


 必至に教えようとしている気持ちしか伝わっていないエルを釜から引き離しつつ魔力回復薬について聞く。

 離れる途中にフィアちゃんに小さな声でありがとうございますって言われたからやっぱりウザかったんだな。


 ……エルに比べてフィアちゃんの調合のレベルが低い理由ってまさか……

 どの業界でも教育者の不足って問題だよね。


「魔力の回復薬デスが先に結論を言うデスと今ある材料じゃ作れないデス。森エリアの奥地の更に奥。所謂第三層のエリアに生えている月光草という薬草が必要なのデス!」


「第三層……月光草……」


「魔力回復ポーションを作るだけなら月光草と高品質の薬草を薬師に持っていけば、最低限の魔力回復薬が出来るデスが……300mlぐらいの飲み薬を全部飲み干さなきゃいけないのでユウのパーティには厳しいと思うデス」


「それは無理だな」


 ティーニャとかそれだけ飲んだらお腹が破裂しちゃうんじゃないか?いや、でも明らかに自分の体積より多い量のお菓子を食べたりしてるから大丈夫か。

 でも、そもそも人間みたいにイッキ飲みが出来る口の構造をしているメンバーが少ないのに零さず飲み干せって方が無理だな。ティーニャはちっちゃいしどの道時間が掛かっちまう。


「だから、ちょっと手間とお金が掛かるデスが他の薬と同じ様にそんなに大きくないアメ玉に調合するデス。エルじゃ、ちょっと第三層はきついデスから月光草の調達はユウに任せるしか無いデスが……」


「おう。時間はかかると思うけどいつか持ってくるよ」


「お願いするデース!」


 《クエスト『月光草の納品』を受理しました》


「出来たー!」


 およ?フィアちゃんとは思えない元気な声がエルの後ろから聞こえてきたな。完成したのかな?


「……この叫び声はお約束なのです。調合が成功したら叫ばなければいけないのです。皆やっているのです」


「さ、さいですか」


 好きでやっている訳じゃないことをやたらと強調されてしまった。心配しなくても元気なフィアちゃんもかわいいのに。


「……絶対分かって無い顔をしています」


「そんな事ないよ。フィアちゃんがいかにかわいいかは良く分かってるよ?」


「……やっぱり分かってなかったです」


 ぷいっと顔を背けられてしまった。横を向いても耳まで赤いことは触れないでおいてあげよう。


「う~ん。うん!全部よく出来ているデス!これなら納品しても問題無いデスね」


 お、無事先生からの合格も得られたみたいだな。


「やったねフィアちゃん。いぇ~い!」


「……い、いぇ~。はっ!や、やりませんからね」


 え~、いいじゃんハイタッチ。やろうぜハイタッチ。ハイ、ターッチ!


「……やりません」


 ちぇ~


「よし。これで納品依頼の殆どをフィアに回しても大丈夫デスね。エルの研究の時間がまた増えたデス!デュフフ……」


「……フィアちゃん。エルがあんなこと言ってるけど……」


「……はぁ。うすうすそんな気はしてました。仕事をするのはいいのですがまた姉さん暴走しないように見張ってなきゃいけない事を考えると……はぁ」


「う、うん。頑張ってね。いろんな意味で。またお土産持ってくるからさ」


「……はい。今日はお土産ありがとうございました。大切にしますね」


「おう。それじゃあまた……って、麻痺消しドロップ貰うの忘れてた!」


「……あ、麻痺毒針のお礼も渡し忘れてます」


 フィアちゃんが急にワタワタと動きだす。もう、そんなに慌てなくてもいいのに。別に急いでいる訳でも無いんだしさ。


「とりあえず今来てる依頼は全部フィアに丸投げしてエルはさっそく研究を……」


 ガシッ!


「……姉さん?少しOHANASIがあります」


「ひ、ひぃ~。じょ、冗談デ、スよ?」


「……冗談かどうかはフィアが決めますので心配はいりません。大体姉さんはいつもいつも……」


 ……前言撤回。もう帰っていいかな?

 でも今のフィアちゃんに声を掛ける勇気は無いです。

 だからエル。そんな目で俺を見てもダメだ。今回はエルが悪いんだからしっかり怒られて反省しなさい。


「……姉さんはこの前だって……その前も……」


「ご、ごめんなさいデス!エルが悪かったから許してほしいデース!」


 ああ、今日も平和だなぁ。

もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


前話でネタが3つ、4つ入ってるといったな。あれは嘘だ。

感想で2つしか見つけられなかったって人が居たからザックリと解説を入れつつ書き出したら7つ程見つかりました。ほぼ倍。ちょっとした言い回しを含めたらさらに増えます。

詳細はその感想の返信を見てもらえれば・・・。おかしいな。なんでこうなった?

全部分かってた人は友達(*^o^)/

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