79匹目 本好き友達
前回の話を投稿して思ったこと~。
別に投稿遅れたって程じゃなくね?慣れって怖い・・・
「おじゃましまーす」
「きゅぃー」
「ホー」
「メェエ」
「~~♪」
「……にゃぁ」
カランコロンとドアベルを鳴らしてアトリエに入る。俺の挨拶に合わせてボーパル達がそれぞれ鳴いているのを聞くと今更ながら大所帯になったものだと実感するな。
「……いらっしゃいませ。もう少しで読み終わるのでちょっとだけ待っていてください」
工房に入ると隅っこの本棚の近くの椅子に座って本を読んでいたフィアちゃんが顔を上げて俺達にそう言った後すぐに顔を下げて読書に戻ってしまった。
ついに玄関まで迎えに来るのを諦められてしまったな。
まぁ、最初の何回かしか玄関で待ってたこと無いしね。あれ最初の1回だけだったっけ?
んー、まぁいっか。
「……ふぅ」
とか思っている間にフィアちゃんが本を読み終わったらしくパタンと胸の前で両手を合わせる様に本を閉じると、しばらくの間余韻を楽しむように目をつむった。
ちなみにボーパル達は既にそれぞれのお気に入りの場所で寝転がって寛いでいる。
実家のような安心感を感じている所悪いけどここ人の家だからね?確かにしょっちゅう通っているけども。
「……んしょ、んしょ」
俺もアイギスの隣にでも腰を下ろそうかと思っていると本の世界から戻ってきたフィアちゃんが、座っていた椅子から降りて、本を乗せた椅子を本棚の方へと運んでいる。
あー、本棚の上の方に本をしまいたいのかね?
大丈夫かなぁと、心配には思うもののぶっちゃけ俺とフィアちゃんじゃあ身長がそんなに変わらないから変わってあげる意味があんまり無いっていうか、どこにしまいたいのか分からない分邪魔にしかならないというか……。ちっちゃくないよ!
「……んー、わっ!……わわわわわわ!」
「おっと、危ない危ない」
まぁ予想通りというか案の定というか。不安定な椅子の上で背伸びして本を押し込もうとしていたフィアちゃんがバランスを崩して後ろに倒れてくる。
ゲーム内だし椅子から落っこちたぐらい大丈夫だとは思うけど、こんなこともあろうかと後ろで控えていた俺が倒れこんできたフィアちゃんの背中を支えて、そのまま一旦椅子から降ろす。筋力にもちょっとは振ってるからな。これぐらいは余裕だ。
……こんなこともあろうかと!どうでもいいけど一度は言ってみたいセリフだよね。
「……あ、ありがとうございます。助かりました」
「本当だよ?気をつけないと危ない……というか本棚が大きすぎじゃね?」
今までは背景の一部として気にもして無かったけど壁一面を完全に塞ぐ大きな本棚にビッチリ本が詰まってるのは明らかに大きすぎ。多すぎだと思う。地震が起きたら全部降ってきて圧殺されそうだ。あ、ゲーム内だから地震は無いのか。
「……普段はアレを使っているのですが。今日はあなたを待たせていたので急いだ方がいいと思って……」
怒られると思ったのか両手で本を持ってその本に顔を隠す様にして、本の隙間から俺を伺うフィアちゃん。
んー、危ない事をしたっていう自覚はあるみたいだしあんまり叱るつもりは無いんだけど……
「それでフィアちゃんが怪我される方がよっぽど困るよ。時間よりも本よりも、フィアちゃん大事」
「……ごめんなさい」
ん。分かればよろしい。
で、結局本はしまえなかったから、フィアちゃんがいつも使っているアレとやらを使いたいんだが……
「えー、っと……あぁ、いつもはあのハシゴを使ってるんだね」
「……いえ、それはキャタツです」
「どう違うの?どっちも同じようなものじゃない。もっと本質を見ようよフィアちゃん」
「……」
無言で抗議の目を向けられてしまった。どうやらフィアちゃんの中ではこれは譲れないらしい。
まぁ、俺はどっちでもいいんだけどね。
んで、脚立を二人で本棚まで移動させて、フィアちゃんに下で脚立を支えてもらって今度は俺が上に登って本をしまった。にしても本当に本が沢山あるなぁ。
「フィアちゃんはいつもどんな本を読んでるの?」
「……特にこだわりは無いです。物語、歴史書、レシピ本、日記、絵本、図鑑、漫画。何でも読みます。最近だとあなた達の様な人が持ち込んだ本を読みました。興味深かったです」
「あなた達の様な人って……プレイヤーの事?」
「……そうです」
へー、つまりは現実世界の本をこっちでも読める、と。まぁ普通にネットも繋がってるし本が読めてもおかしくは無いか。
……あれ?何かフィアちゃんがあげた本の種類に違和感が……
「……あなたは本を読むのですか?」
「んん?あぁ、そうだね。動物の本とかライトノベルとかよく読むよ。今時電子媒体じゃない紙の本なんてかさばるだけだー。何て言う人もいるけどさ。やっぱり本をこの手にもって読むのは充実感が違うよね。目的も無く本屋さんをうろつくのも楽しいし。あ、もちろん電子書籍を嫌いな訳でも、」
ガシッ!
「はぇ!?」
本をしまって脚立から降りた瞬間フィアちゃんに手を握られたんだけど!なにごと!?なんかすごいデジャヴ!あの時は立場反対だったけどさ!ていうか男嫌いの設定どこいった!まさか俺は男枠に入ってないと!?へこむよ!地味に凹むよ!
「……本好き友達ゲットです」
「え?何?というか手……」
「……あっ、すみません」
あっ……フィアちゃんの手が離れちゃった。
……ちょっともったいなかったかなー、なんて思ってないんだからね!
……なんかこの反応も懐かしいな。
「……で?何の話をしてたんだっけ?」
「はぅ……はっ!ほ、本とも……じゃなくて本好き仲間ゲットと言ったんです」
俺の手を掴んでいた両手を胸の前で握って、少し赤い顔ではぅはぅ言ってるフィアちゃんがめがっさかわいすぎて生きるのが辛いです。
それはもう出所不明の方言が出るくらいに。顔にやけてないかな?大丈夫?
「……ふぅ。あなたにはフィアセレクトの面白い本を貸してあげます。感想は原稿用紙5枚ぐらいでいいです」
「わーい。ありがとー。って感想多くね!?原稿用紙5枚って言ったら2000文字だよ!?……あれ?思ったより少ないのか?んん?」
いや、読書感想文とか原稿用紙2枚を埋めるのにも苦労していた記憶があるし、2000文字は十分多いか。なんか最近感覚が狂っているような気がする……。
「うーん。ただ貸してもらうだけっていうのもな……あ、そうだ。フィアちゃんにお土産があるんだった」
「……お土産、ですか?」
「じゃ~ん!マ~ジ~ック~サ~ン~ド~」
「……なんですかその言い方は」
いや、お約束かなと思って。秘密でも道具でもないけどさ。
「はい。どうぞ」
「……わぁ」
フィアちゃんに手を出してもらってその手の上にマジックサンド入りの小瓶を摘んで乗せると、フィアちゃんは魔力に反応して輝くマジックサンドに負けないほどに目を輝かせて小瓶に見入っている。
うんうん。喜んでくれたみたいでよかった。
砂はまだまだあるからな。これで喜んでくれるのなら安いものだ。
「あ、麻痺毒針も持ってきたから納品と麻痺消しドロップの調合もお願いしてもいい?」
「……きれい。あ、はい。分かりました。ありがとうございます。調合は姉さんが帰ってきてからになりますが……もうすぐ帰ってくると思うのですが……」
バアァン!
「たっだいまデ~ス!!」
お、噂をすればなんとやら。エルが帰ってきたみたいだな。魔力の回復薬の話も聞きたかったし丁度いいな。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
ちなみにこの小説の文字数は一話平均3000文字ぐらいです。
なのに今回もネタが3つ、4つ入ってます。何故だ。
もっと本質をみようよ。