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7匹目 コスプレ少女

 《キャタピラーの封印率が100%になりました》

 《キャタピラーが封印完了しました》

 《スキル:召喚魔法がレベルアップしました》


 無事にロッドを手に入れた俺は封魔の書をサブウェポンに設定してカシのロッドをメインウェポンに設定した。

 それからタク達に教わりつつ杖スキルとオススメされたダッシュと回避と防御のスキルをSP9を消費して取得したところでリアルでは午後8時。我が家の晩飯の時間だ。


 手早くリアさんとレンとフレンド登録をして屋台を後にさせてもらった。リアさんは基本的にここで店をやっているらしいので次からも素材の買取ではお世話になろう。


 てなわけで翼と2人FWOからログアウトして晩飯を食べる。


 ちなみに晩御飯はカレーだった。

 家ではカレーやシチューが作られると無くなるまでは3食同じメニューのセルフサービスになる。

 カレーとは母のご飯作るのめんどくさい宣言と同義であるのだ!


 てなわけで俺がカレーをよそっている間に翼が机を拭いてテレビを付けスプーンを用意する。


「ほい、翼の分」

「センキュー」


 翼と2人対面に座って何が面白いのかよく分からない芸人が出ているバラエティを何とはなしに眺める。

 テレビと翼からから笑い声が響いているが本当に何が面白いのだろうか。ただ断わっているだけにしか見えないんだが……


「あー、おもろかった。あっ、お兄ちゃんアレ取ってアレ。ほらアレ。えーとアレ……そう。イソギンチャク!」

「……ほい」

「センキュー♪」


 どうやら正解だったらしいが……なんだよイソギンチャクって……お前はカレーにイソギンチャク入れて食べるのかよ……力抜けるわ……。


 そんな脱力系晩飯を終え再びFWOの世界へと降り立った。

 タクとシルフはベータ時代のパーティメンバーと合流して本格的な攻略に入るらしいので俺の初心者講座もこれで終了。

 ボーパルと2人でキャタピラーを後2匹封印するために森の浅いところを中心に探索し、キャタピラーの封印率がやっとこさ100%になった。


「ふぅ、キャタピラー封印完了っと」

「きゅい!」


「ああ、これもボーパルのおかげだ。ありがとな」

「きゅぃ~」


 照れてるのかどことなくモジモジしている様にも見えるボーパル。可愛い。


「さて、これからどうするか。順当に行けば森の奥に進むべきなんだろうが野犬が怖いしなぁ……第一日もくれてきたしな」

「きゅい」


 俺の言葉に同意するように頷くボーパル。

 俺たちがログインしたころから徐々に日が落ち始めており今ではもう太陽はそのほとんどを地平線へ沈めており辺りを茜色に染めており何処か遠くからカラスの鳴き声まで聞こえてくる気がする。


 現実ではもう夜9時を過ぎており外は真っ暗だろうにゲームでは今やっと黄昏というのには違和感があるがゲームだけに内部時間が現実とはずれているのかもな。

 ともあれ、


「夜の森とかとても俺たちのレベルじゃぞっとしないし街に戻るか。あるいは街周辺なら今の俺たちでもある程度は狩れるかもな、夜限定のモンスターとかいるかもだし」

「きゅい!!」


 初めはボーパルが賛成の声を上げたのかと思った。

 でも違う。これは警告だ。すぐに杖を構え周囲を見回すが敵らしき影は見えない。

 小さく眉をしかめるもボーパルは未だに戦闘態勢を解いてはおらず、その長い耳を忙しなく動かし周囲の音を拾っているようだ。ならばここはボーパルの邪魔にならないように息を殺して些細な変化も見落とさないように周囲へと目を向けることに徹する。俺なんかとボーパルでは周辺の把握能力にそれこそ亀とウサギほどの差があるからな。


 そのボーパルが何かを感じ警戒をしているのならばそこには俺の感じられない何かがきっとあるのだから。


「きゅい!」


 忙しなくその小さな顔と大きな耳をきょろきょろさせていたボーパルだがやがて何かを見つけたのか一つの方向へと駆け出していく。

 慌ててボーパルの後を追う俺だが、当然小柄で俺よりも早いボーパルに追いつけるはずも無く……ボーパルは時々立ち止まって俺を待っていてくれていた。

 これは前にボーパルだけで突っ込んでいったときに叱られたのを覚えていたからか……あるいはこの先にある何かが自分一人では対処できないと考えての行動なのか。

 ともかく、慣れない森の中の道なき道を突き進んでいた俺達の元へとそれは突然訪れた。


 ドガアアァァァァァ……・・ン

「きゅいぃ!?」


 草木を掻き分ける音とボーパルの急かす様な鳴き声以外静かな森の中へと突如鳴り響いた轟音。

 何処か落雷を思わせるその音は間違いない何かの爆発音だ。

 その爆発音にびっくりしたのかひっくり返って坂上から転がり落ちてきたボーパルを抱え俺は音の聞こえた方へと走る。


 ここまでくれば俺も今の状況の異常性にも気がついてくる。

 時間は夕暮れ、つまりは昼のモンスターと夜のモンスターの変わり目の時間。

 場所は森の中、昼でも少し薄暗いのに日も暮れ始めた今では、夕日は木立に阻まれ日が届かず何とか前や足元も見えているがあと一時間もしたらやばいかもしれない。

 そしてさっきの爆発音。とてもではないがキャタピラーや野犬のようなモンスターが起こしたとは思えない。


 あの音はおそらく爆弾か何かが爆発した音。つまりはこの先には爆弾を使うような者。おそらくは人がいる。

 最後にボーパルの急かす様な態度と使い捨てであろう爆弾を使わなければならない様な状況とを合わせて考えれば、


「「「「「カーーーーーー!!」」」」」

「ちょっ!いやぁ!こっちこないでよーーー!!」


 誰かがモンスターと戦闘中、しかも劣勢であると予測するのはさほど難しくは無かった。


 モンスター カラスLv2

 状態 アクティブ


 難しくはなかった……んだがこの光景はあまりにも予想外すぎて思わず足を止めてしまった。

 さっきから聞こえていたカラスの鳴き声が単なるBGMじゃなくカラスのモンスターの泣き声だったから驚いたのか、否

 そのカラスの数が明らかに両手じゃ数え切れなさそうだったから驚いたのか、否


 カラスに襲われて涙目になっているのが見た感じ自分と同い年ぐらいで長いピンクブロンドの髪を後ろにおろしさらに頭の左右でツインテール?ツーサイドアップ?うさぎ結び?に髪を結ったどう贔屓目に見ても美少女としか表現の仕様がない優れた容姿の持ち主だったからか、否


 問題はその少女の格好にあった。

 白とピンクを基調とし要所要所に可愛らしいフリルをあしらった上着とスカートが一体となったドレスの様な服。そんな服でもある程度は動きやすさを求めたのか上着は体のラインにぴったり沿うコルセットの様な柄で少女の山も谷もある男好きしそうな体をこれでもかと強調している。

 また、スカートも足の動きを妨げないようにか膝上までしかなく膝から下は少女の白くほっそりとした足が覗いており、少女がカラスを振り払おうと手に持った杖を振り回すたびに短いスカートが危険な高さまで捲れ上がりそうになっている。

 さらに少女が振り回している杖もまた先端に水晶を据えたカラフルな色合いをしている非常に目立つ物でその服装と相まってどこぞの萌アニメの魔法少女のコスプレのようであり、またこの美少女はこの格好が非常に似合っていた。


 ともあれそんな日本でも極一部の地域にしか生息していないようなプリでキュアな格好の少女が、森の中で、たくさんのカラスに囲まれて、えいえいと杖を振り回しているのだ。一瞬脳が状況の判断を放棄してこのシュールな光景を呆然と眺めてしまっても仕方あるまい。


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