43匹目 精霊ちゃん
ティーニャに案内されて訪れた花畑の奥地。そこは中心に銀の杯型の噴水がある小さな泉だった。
まぁ、俺から見て小さめってだけでフェアリーから見れば学校のプールぐらいの大きさあるけどさ。
「~~!!」
「ふむ?ほうほう。そなたはこの者と共に行くと?ふむ。既に名も貰ったのか。ティーニャ……良い名なのじゃ」
「~♪」
そしてこの湖にいたのはフェアリーだけじゃなかった。今ティーニャが手をフリフリしつつ一生懸命説明している相手。
見た目は年齢一桁ぐらいの幼女だな。ティーニャや他のフェアリー達と同じ輝くエメラルドグリーンの髪にシルフが着ていたのと同じ妖精シリーズの服をちっちゃくした物を装備している。あら可愛い。
NPC 未設定
精霊 ???? Lv??
《スキル:鑑定がレベルアップしました》
およ?モンスターかと思ったらNPCの精霊ちゃんだった。職業とレベルが見えないのが怖いんだが、もしかしてすごく強いのだろうか。
「うむ?どうしたのじゃ人の子よ。わらわの顔に何か付いておるのかの?」
コテンと首を傾げる姿には人間のNPCとの違いは見て取れない。まぁ、モンスターのフェアリーもしぐさは人間っぽいしこれぐらいは当然か。
「んにゃ、別に……」
「あ、分ったのじゃ!わらわの性別が知りたいのじゃな!」
「……」
……この子はアホの子なのかも知れない。
「結論から言えばわらわ達に性別の違いは無いのじゃ。お主が連れておるモンスター達にも性別の違いは無かろう?基本的に性別を気にするのはお主ら人間ぐらいなものじゃな」
「いや、別に聞いてないんだが。何故突然そんな話になったんだ?」
何?ロリババア属性な上に恥女なの?
「ん?人間とはコミュニケーションを取る時に相手の性別を重視する生き物では無いのかの?」
「うん。一概には否定できないが……」
「じゃろう?前回花畑に来た人間に教わったのじゃ。この喋り方もその人間に教わったのじゃが、やっぱりあやつの言うことは正しかったのじゃな!」
おい、誰だ前回来た奴!個人的な趣味を無垢なNPCに押し付けてんじゃねえ!!
「むぅ。わらわの言うことが信じられないのなら……確認してみるかの……?」
「垢BANされそうだから、結構です。だからそのたくし上げたスカートを下ろしてください」
「うむ?そうか……」
なんでちょっと残念そうなんだよ……
「はぁ……そんな事はさておき、一旦ログアウトしたいからテントを張る場所を借りたいんだけど」
「うむ。聞けばお主達はわらわの家族達の危機を救ってくれたというそうじゃしの。それぐらいいくらでも使ってもらって構わないのじゃ。人の住処に戻りたいときもわらわに言って貰えれば噴水経由で人の住処にいつでも帰してあげられるのじゃ。ただ……」
精霊ちゃんはそこで言葉を切って辺りに視線を動かす。うん。精霊ちゃんの言いたいことは分る。
「~~~~!!~♪」
「きゅい!?きゅい!!」
「~~♪~~~!!」
「ホー!ホ~」
「~~!」
「「「~~~~~!!!」」」
「メエエエエップ!メェ、ゲホッゴホッ!」
ピッチャピッチャ、バッシャァアアアアアン!!
水辺で戯れる動物と妖精達……うるせえ!
ていうか最後津波起こってたけどあれ水魔法使わないと発生しない威力だよな!?フェアリーは魔力高いんだから簡単に魔法使うなし。
「きゅい!」
バッシャァアアアアアン!
「「「~~~~♪」」」
……俺は見てないぞ。ボーパルの横なぎの蹴りの余波で津波が発生してそれに飲み込まれたフェアリー達が楽しそうに回っている所なんか見ていない。見てない事は無いことと同義だな。うん。
「……場所を貸すのはいいんじゃが、ちとうるさいからの。寝ることはできぬやもしれんがよいかの?」
「ああ。ログアウトするだけだから大丈夫だ。まぁ、晩御飯を食べたらすぐ戻ってくるからちょっとだけ貸してくれ」
「ふむ。ではそれまでに謝礼を用意しておくのじゃ」
「ん?ティーニャも付いて来てくれる事になったし場所も貸してもらったんだ。別に謝礼なんて要らないぞ?」
妖精シリーズの装備を貰っても嬉しいっちゃ嬉しいけどうさぎさんシリーズの索敵能力を捨ててまで装備したいかといわれるとうーん。
「まぁそう言うでない。受け取って邪魔になる訳でも無かろう?人の好意は素直に受け取っておくものじゃぞ。むしろお主に謝礼を用意しなければわらわの器量が狭いと思われるのじゃ」
「そんなもんか?」
「そんなもんじゃ」
精霊とそんな会話をしつつ、張った状態のテントをインベントリからドン。と、取り出し。突然現れたテントに目を輝かせたフェアリーが集る前に急いで飛び込んでログアウトする。
ダース単位どころかグロス単位で押し寄せてくるフェアリーの声を聞きつつ俺の意識はゆっくりとユウの体から離れていった。
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「大きなハコと小さなハコどっちでも好きな方を持っていっていいのじゃ!」
ログインした俺をテントの前で仁王立ちして待ち構えていた精霊ちゃんが開口一番そう言ってきた。
むふーっと鼻を膨らませてドヤ顔をしている精霊ちゃんの足元には一抱えぐらいありそうなハコと手のひらサイズのハコがそれぞれ置いてあった。
「……えーっと、そのハコは?」
「うむ!お主ら人の間で語り継がれる伝承を元に用意してみたのじゃ!中身はハコのサイズには関係無いからひとおもいに選ぶのじゃ!」
「……ここでフェアリーイーターのモノマネをしたら閉じ込められるんですね分ります」
ハコと中身が対応していないことをバラシたらハコのサイズを変えた意味がないだろうに……
俺が独断と偏見で決めてもいいんだけどここは民主主義的に多数決で決めようか。
「せっかくだから、俺はこの小さいハコを選ぶぜ!」
「きゅい!」
「ホー!」
「メエエ!」
「~~!」
小さいハコを選んだのは俺とミズキ。
大きいハコを選んだのはボーパルとアイギスとティーニャだな。
という訳で精霊ちゃんからの謝礼は大きいハコに決定!
ハコの中身はなんだろなっと。
「テレテレテレテレテレテレ!ゴマダレ~!」
「きゅい!」
「ホー!」
「メェェ!」
「~~!」
「何が入っていたのじゃ?わらわにも見せて欲しいのじゃ!」
さっそく蓋を開けてみる俺の後ろにボーパル達がついてハコの中を覗きこもうとしてくる……何故か精霊ちゃんやフェアリー達も一緒に。
「いや、精霊ちゃん達が用意したものじゃないのか?」
「ん~、確かにそのハコを用意したのはわらわ達で間違い無いのじゃが中身は違うのじゃ」
「「「~~~~!」」」
どういうこっちゃ。ハコの中身はシステムが用意する感じなのかな?
まぁ、それはさておきハコの中身だが……
「指輪?」
ちっちゃい指輪が1つだけ入っていた。
ミドリの大きな宝石の付いたその指輪は、リングの部分が銀で出来ていて内側に小さな文字でビッシリと読めない文字が彫ってあった。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
精霊ちゃんに変なことを教えた人、先生怒らないから挙手しなさい 。ノ




