33匹目 シルフ
無事に始まりの街に到着。
……ええ。無事でしたとも。今更ポイズンスネーク如きにやられるわけ無いじゃ無いですかー。やーだー。
……何故かストレージから毒消し丸が1つ消えているが俺達は全員無事だ。
「メッエーww、メーッエェッエッエwww、ガホッ!ゲホッ!」
アイギスうぜぇ。
俺が毒消し丸で咽ていたのがツボに嵌ったらしくずっと笑い続けてる、むしろ笑いすぎて自分が咽てるまである。
……にしても、腹立ってきたな。一回絞めようか。召喚モンスターと対戦もやってみたいし。
「……」ジト~
「……」サッ
アイギスをジト~と見つめていると、ピタっと笑うのを止めて明後日の方向を向かれた。
ちっ、勘のいいやつめ。まぁ、今日の所は勘弁しといてやろう。
……さて、街中でボーパル、ミズキ、その他を召喚しながら歩いて見たんだが今の所大丈夫そうだな。
一応うさぎさん装備は外してきたけれど、さっきからチラホラとウサミミが歩いているのを見かけるし、そっちも大丈夫かもしれんな。まぁ、今日は着替えるのもめんどくさいしいいか。
「あ、来た来た。もう!おねぇちゃん、おっそ~い!」
ぶんぶんと残像がのこる程の速度で手を振り回しているシルフは妖精の格好も相まってそこそこ人がいる大通りの中でも良く目立っていた。
まぁ、頭にウサギを乗せて肩にフクロウをとめ、ヤギを引き連れた初期装備の俺の方が絶対目立っているとは思うが。
「すまん、すまん。途中でモンスターに絡まれて遅れた。でも、遅れるって言ってあっただろ?」
「むー、そうだけども……まぁ、いいや。ボーパルちゃん久しぶりー!相変わらずもふもふだね~。キミ達は、はじめましてだね?フクロウとヤギかな?かな?」
「おう。新しく召喚した。ミズキとアイギスだ」
「きゅいー!」
「ホー!」
「メー」
「あ~ん。みんな可愛い!もふり甲斐がありそう。うふふふふ……」
「おい、シルフよだれ!よだれを拭け!後、俺ごと抱きつこうとしてないか!?やるならアイギスにしろ」
「メェ!?」
「おっといけない、じゅるり。それでは、いただきまーす!」
「メェェェェェェェ!?」
「ふわーモコモコだー。表面はちょっと硬いけど中は柔らかいねー」
シルフに捕われ身動きの取れないアイギスからしきりに目配せが送られたので、笑顔でサムズアップしておいた。
全力で可愛がられて涙目になっているが害があるわけでもなし。アイギスは犠牲になったのだ……。少なくともリアさんとの話が終わるまでは。
「ユウ君こんばんわ。あなた達姉妹はとっても仲良しなのね。うらやましいわー」
「こんばんわです。シルフとはリアルだと必要なこと以外はあんまり話しませんけどね。仲が悪いってわけじゃないのは確かですが。後、俺は男なんで姉妹じゃなくて兄妹です。……まぁ、もうだいぶあきらめ入って来てますけど」
「あらあら、ごめんなさいね。……ボーパルちゃんとミズキちゃんもお久しぶりね」
「きゅいー!」
「ホー!」
すちゃっ!と前足と片翼を上げてふたりが挨拶をしているのが分かる。見えたら可愛いんだろうな。頭の上と肩だから見えないけど。
「それとあの子は初めて見るわね……アイギスちゃんだったかしら?」
リアさんが視線を向けた先にはやりきった表情でフーっと息を吐き額を拭っているシルフと、全身の毛がわしゃわしゃになり地面に横たわってときどきビクンと震える以外は死んだ様に動かないアイギスの姿が―――
うん。時々動いてるし死んでないな。ならばよし。
「ええ、最近新しく召喚したんです。それでそのアイギスにについてちょっと話がありまして……」
「えーと、私が言うのもアレ何だけど……あの子はあのままでいいの?シルフちゃんもなんだか手をわきわきさせながらこっちに近づいて来てるんだけど……」
「トラップカードオープン!スケープミズキを召喚!」
「ホー!?」
「わーい♪新しいもふもふだぁ♪」
「ホーーーーーーーー!!??」
「……」
「……」
「もふもふ♪」
「ホ~」
「……それでアイギスの話なんですけどね」
「あ、はい」
「アイギスにあう鎧を作って欲しいんですよ。説明を読む限り、専用の鎧を装備できるんですけど、どこで買えばいいのかさっぱりで……」
「うーん。流石にヤギ専用の鎧を置いてあるお店は始まりの街広しといえど、無いと思うけど……。あっ、でもこの前、馬鎧を作ったって、知り合いが言ってたから頼んでみるわ。今はどこも忙しいから作成は闘技大会の後になると思うけど……」
「全然okです。ありがとうございます」
闘技大会までにもう一回クラスチェンジするかもだが装備品は自動でサイズが変わるから大丈夫だろう。
「ふぃ~、汝もよきもふもふであった……」
「ホ~」
向こうも終わったみたいだな。二人とも何かツヤツヤしてる。
最初は嫌がっていたのに気持ち良かったのかな?二人目だから多少抑え気味だったのかも。
「んじゃ、そろそろ出発するか。アイギスも起きろ~」
「メェェ……」
「えー、まだボーパルちゃんもふもふしてない!」
「移動しながらもふれば?」
「その手があったか!」
「きゅい!?」
キュピーンと目を光らせてボーパルをロックオンしたシルフに生贄を捧げて移動を開始する。
フィアちゃんの依頼を報告してないけど期限は無いしシルフを待たせて行くほどじゃないな。
じゃあ、砂漠に向けてしゅっぱ~つ!
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「ヘクチッ!ペプチッ!さむ!夜の砂漠ちょーさむい!」
「だろうねー」
舐めてた!思ったより3倍は寒い!夜の山も寒かったけど砂漠は輪をかけて寒い!
でも耐えられないほどじゃないのがまた腹立つ。もう一回街に帰るのはめんどくさいが寒いものは寒い。
「というかボーパル達もふもふ組が平気なのはまだ分かるけど、俺と同じぐらい薄い装甲のシルフが平気そうなのが謎なんだが……」
「きゅい?」
「ホー」
「メェェェェ」
「精神力の問題だよ、キミ。……なんちゃってね、防寒のスキル取ってるから寒さには強いんだよ。寒くて手元が狂うのも、わざわざ装備を変更するのもアホらしいじゃない?」
「むぅ、確かに」
「全職共通で2ポイントだから取ったら?ちなみに耐暑っていう暑さに強くなるスキルも同じポイントで取れるから一緒に取るといいかもね」
「そうすっか」
耐寒を取得したらちょこっと寒さが和らいだ気がしたが殆ど変わらないな。レベルが上がればもっとはっきり変わるんだろうか。
「まぁ、あたしとしてはあたしの格好よりもおねぇちゃんの格好のほうが驚きだったけどね。確かに今流行りで高性能だけどウサギさんシリーズって、ますます女の子にしか見えないよ?いや、最初から女の子にしか見えないけど」
「うるさいわい」
かわいいからいいんですぅー。かわいいは正義!
「んで?砂漠にはどんなモンスターが、ぁ!?」
足元がズリっと滑って顔面から砂の中に突っ込む。実はこうやって転ぶのは3回目だったりする。砂漠歩きにくすぎ。服や口の中に砂が入ってこないのがせめてもの救いか……。
アイギスは大丈夫そうだけどボーパルが移動しにくそうなのも気になるな。ボーパルの機動力が封じられるのはいたい。超いたい。パーティ全滅レベルの打撃だ。まぁ、ジャンプ出来ないって程じゃないし大丈夫だろうが。
「痛っててて、また転んじまった、な?」
顔を上げようと着いた手がズリズリと動いていく。というか俺が倒れてる地面自体がゆっくりと動いて、る!?
俺が嵌ったのは流砂。そして流れ落ちる砂の先。もっとも窪んだ場所ではキチキチと耳障りな音を出しながら、俺がすべり落ちてくるのを待つ一体のモンスターの姿が見えていた。
最近このひきが多い気がする・・・




