240匹目 第二回闘技大会本選第一試合中堅戦
あれ?ゴールデンウィークが・・・あれぇ?
あ、今回はとある人からのご要望で、イナリ視点です。難しかった・・・。
「~~~!」
「コーン?」
ウチの頭に着地したティーニャちゃんが「イナリイナリ聞いて!ボクにいい作戦があるよ!!」と叫びながらウチの頭をペチペチ叩いてきたわ。
あ、「なぁに~?」って見上げたら、ティーニャちゃんがコロンコロンって背中を転がっていっちゃった。楽しそうに登ってきてるし大丈夫みたいね。よかった~。
『先鋒戦の熱気も冷めぬ内に中堅戦開始だぜ!ガンガン盛り上げていくぜぇぇ!!』
『盛り上がるのはいいけど倒れないようにね~。リアルと違って熱中症の心配はないけど、適度な休憩は大事だよ~』
「~~~!~~~!!」
「コーン・・・」
う~ん。「まずはイナリがドーンってして!そしたらボクがババーン!!ってするから!」って、言われたけどウチにはさっぱり・・・。
ボーパルちゃんならその説明で完璧に伝わるし、ミズキちゃんが居たら翻訳してくれるのだけど・・・。
『中堅戦は二対二のタッグ戦だ!二人のチームワークにも注目だぜ!』
『ユウチームはここで勝ったら二回戦進出だよ~。ソングチームも大将戦に繋げるために頑張れぇ~!』
「~~~!」
「コン!」
「よーし、ボクもかる~く勝っちゃうよ!ミズキねぇに続けぇ~!」って、ステージの方へ飛んでいったティーニャちゃんを追いかけて、ウチも慌ててステージに上がった。タッグ戦だから協力しないと勝てないのよ?協力しよ?ね?ティーニャちゃん。ね?
『両者同時にステージに上がったぜ!ソングチームはグリーン選手とピンク選手。ユウチームはティーニャ選手とイナリ選手だぜ!』
『ソングチームは名前が覚えやすくて助かるね~。第一試合は選手がみんなかわいいから実況にも気合いが入るよ~』
「ヤるデスよ!ホワイトの仇をとるのデス!」
「グリちゃん・・・ホワイトは死んでないよ?」
対戦相手はミドリ色とピンク色の二人みたいね。ピンクの方はボールみたいなのを持ってるだけだけど、ミドリ色の方はでっかい鎌みたいのを持ってるわ・・・。ちょっと怖いかも。尻尾は斬らないでね?ウチのトレードマークで、ご主人様も大好きなんだから!うふふ~。ここで勝ったらいっぱいもふもふしてくれるかな~?楽しみっ!
『実況は常に全力でやって欲しいものだが……まぁいい。両者揃った所で試合開始だぜ!!』
『どっちもがんばれ~!』
「一番鎌!突貫するデース!」
「行こう。グリちゃん!」
開始と同時に、ミドリ色の後ろにピンク色が隠れるようにこっちに走ってきた。アイギスちゃんが居ないから、ティーニャちゃんはウチが守らないといけないわね!まっかせなさい!
『グリーン選手とピンク選手は開始と同時に距離を詰めるぜ!前を走るグリーン選手の武器がデスサイズで、その背後にピッタリと付くピンク選手の武器がヨーヨーだな。グリーン選手が前衛でピンク選手が中衛って感じか?』
『・・・武器?鎌とヨーヨーが武器?私の中で武器の定義が揺らいでるんだけど?』
『鎌とヨーヨーは最初から武器だぜ?死神や元殺し屋だって愛用してるだろ?』
『例えのチョイスがおかしくないかな~?』
「~~~!」
「コーン!?」
ティーニャちゃんが「あとは任せたよイナリ~!」って、言いながら空に飛んでいっちゃったわ。
置き去りにされたかと思ったけど、防御力が無いティーニャちゃんは空に居た方が安全かもしれないわね。二人を倒すにはティーニャちゃんの火力が必要だもの、詠唱が終わるまで二人の相手はウチに任せて!鎌もヨーヨー?も、怖くないわ!
『ティーニャ選手はソングチームが接近する前に空へと退避。イナリ選手が単独で二人を相手するみたいだぜ。天使のティーニャ選手と、狐のイナリ選手は両方後衛っぽく見えるが大丈夫か?』
『ティーニャちゃんはリトルアークエンジェルだね~。浄化魔法が使えるんだよ~!あとすっごくかわいい!マジエンジェルぅ~!イナリちゃんはただの妖狐じゃないよ~?白炎妖狐だよ~!狐火と白炎狐火は全然違うからね~!体も白色で神々しいんだよ~!』
「コーン!」
ウチの尻尾が白いうちは、ティーニャちゃんの元には行かせないわよ?
アクションスキル<白炎狐火>
「グリちゃん!」
「がってんデス!」
むぅ・・・空中にいきなり出現させられる白炎狐火は、ウチの十八番で初見殺しだったんだけど、避けられてしまったわ。
確かに出現前に少し白い火の粉が飛ぶから、知っていれば避ける事は出来るけど・・・まさか一発目から避けられてしまうなんてね。戦闘経験が多いのか、勘が鋭いのかは分からないけど厄介なのは変わらないわね。
『ソングチームを不意に現れた白炎狐火が襲うも、左右に散って回避したぜ!』
『白炎狐火は、尻尾の先からしか出せない狐火と違って、任意の場所から出現させる事もできるんだよ~。代わりにその場で爆発させる事しか出来ないけどね~。尻尾の先から出した場合は、狐火と同じ様に操れるよ~』
「次は・・・」
「こっちの番デス!!」
アクションスキル<カマイタチ>
アクションスキル<双円斬>
「コン!」
アクションスキル<ステップ>
くぅぅ・・・二方向から同時攻撃は辛いわね。なんとか避けたけども、前足にヨーヨーの刃がかすってしまったわ。
物理攻撃なら尻尾で軽減も出来るのだけど、大きな鎌から飛んで来た斬撃はもちろん。ヨーヨーって言うのまで、ピンク色の手から離れたら刃が生えてきたから尻尾では受けれないのよ。
受けられない以上、避け続けるしかないのだけれど・・・既に尻尾の先がステージの壁にくっついてるのよね・・・。
『二手に分かれたグリーン選手とピンク選手が同時に遠距離攻撃を放つぜ!イナリ選手に迫るのは大鎌から放たれた衝撃波と、二つのヨーヨーだぜ!』
『交差するように迫って来た二つの攻撃を、イナリちゃんは避けたみたいだけど・・・ちょっとかすってたね~。やっぱり近接戦は苦手なのかも~』
「~~~!!」
もう切り札を切るしかないかしら・・・と、考えていたら「ここぞって時こそボクの出番!!」っていう元気な声が空から降ってきたわ。
マジックスキル<ライトシャワー>
ダブルマジック<ライトシャワー>
声に導かれる様に上を見上げると、光量を何倍にも跳ね上げた満天の星空の様にピッカピカと輝く光の矢の群れが・・・。
えっと、ウチは巻き込まないでね・・・?
『ステージの隅に追い詰められたイナリ選手のサポートに、空から光の雨が降りそそぐぜ!』
『サポートというか、殲滅に見えるけどね~。光の雨どころか濁流だよ~』
「ピンク!こっちに来るデス!」
アクションスキル<トルネードサイズ>
一拍後には光の雨がそのまま落ちてきて、ミドリ色とピンク色が見えなくなったわ。
流石ティーニャちゃん!ナイスアシスト!大好きよ!
アクションスキル<隠形>
『グリーン選手が上空に向けた鎌をヘリコプターの様にブン回し、降り注ぐ光の雨を打ち落とすぜ!!』
『本当に空を飛べそうな勢いで回してるね~。大鎌って回しにくそうなんだけどなぁ~・・・』
「さっすがグリちゃん!」
「ふふん。光の雨がなんぼのもんデス!」
光の雨が止むと同時にその場から走って距離をとる。隠形で姿が見えなくても攻撃は当たるもの。同じ場所に居たら意味ないわ。
『見事に光の雨を打ち落としきったグリーン選手!大鎌を回して渾身のドヤ顔だぜ!』
『硬直前の僅かな間によくやるね~』
「コーン!」
アクションスキル<白炎狐火>
スキルチェイン<隠形>
「っ!グリちゃん危ないっ!」
「デェス!?」
二人の死角へと走りこんで白炎狐火を撃ち込み、直ぐに隠形を掛け直す。
以前のウチだったら、近づいて殴るか尻尾の付近に狐火を出すしか攻撃方法がなかったから、すぐに発見されて連続で隠形をかけるのは難しかったけど。任意の場所に出現させられる白炎狐火ならば、攻撃からウチの場所を割り出す事は出来ないわ。
『決めポーズを取りながら硬直しているグリーン選手を白炎狐火が襲う!爆発する寸前の所でピンク選手が押し倒して直撃は避けたぜ!』
『ステージ上にイナリちゃんの姿は見えないね~。妖狐と言えば、狐火と隠形だからね~。二人ともがイナリちゃんから視線を外したのは失敗だったね~』
「グリちゃんは伏せてて今度は私の番」
「任せたデース!」
隠形をかけられたということは、相手はウチを完全に見失っているって事だから、背後にまわって畳みかけるタイミングなんだけど・・・なんだか嫌な予感がするわ・・・。
アクションスキル<円刃車輪>
『ピンク選手がヨーヨーを両手に構えて高速回転する!ヨーヨーから飛び出した刃が反射した光が、ステージ上に渦を描いて広がっていくぜ!』
『綺麗だけど・・・あれ~?ヨーヨーのヒモの長さって自在に操れるものだっけ~?まぁそういうスキルだしね~』
「コーン!?」
ピンク色がステージの中心でグルグル回ると、ギラギラ輝く回転する刃がピンク色を中心に広がっていく。
くぅ・・・避ける場所がないわ・・・!仕方がないわね!
アクションスキル<ハンマークロー>
『ステージ全てを覆い尽くすヨーヨーの大車輪に、身を隠していたイナリ選手が引きずりだされたぜ!』
『グリーン選手は伏せればヨーヨーの下に入って避けられたけど、イナリちゃんはおっきいからね~』
「見つけたデス!!」
アクションスキル<ヴォーパルスイング>
ウチに迫る刃を爪で弾き落とすと、隠形が解けたウチへミドリ色が飛び掛かってきた。
大きくジャンプして振りかぶった大鎌は、紫色の光を纏って何倍ものサイズに巨大化しており、どう考えても当たったらヤバそうね。今すぐ逃げたいけれど、ハンマークローのスキル後硬直で動けないわ・・・た、たすけてぇ~!
『姿を現したイナリ選手へと、グリーン選手が躍りかかる!』
『大鎌が禍々しい紫色に輝いてるよ~。名前的にもヤバそうな大技だね~』
「~~~!!」
アクションスキル<魔力圧縮>
マジックスキル<アイスランス>
ダブルマジック<サンダーピラー>
「さ、流石に雷は斬れないデスよ!?」
「隙あり~~!!」の掛け声と共に、空からでっかい氷の塊が降ってきて、なんとか鎌で氷を切り裂いたミドリ色を、落ちてきた雷の柱が貫いたわ。
ふぅ~。助かったわ。ティーニャちゃんありがとう。
『大きく飛び上ったグリーン選手へと、空から巨大な氷の槍が襲い掛かるぜ!』
『なんとか身を捩って氷塊を切り裂いたね~。でも、直後の雷は防げなかったみたい~。砕けた氷の欠片に雷がパチパチ走ってて、きれ~』
「コーン!」
アクションスキル<白炎狐火>
「っ!きゃぁ!!」
見られてるから隠形は出来ないけど、追撃ぐらいはしないとね。
『先に硬直から立ち直ったイナリ選手の白炎狐火が、ピンク選手を吹き飛ばしたぜ!』
『イナリちゃんに集中したら、ティーニャちゃんの強力な魔法が降ってきて~。イナリちゃんから視線を外したら、また隠形で見失っちゃうわけだね~。かわいくてもふもふなのに、恐ろしいコンビだよ~!』
「やっぱり手ごわい・・・」
「一人ずつならなんとかなるデスけど、二人揃われると厄介デスね」
「だけど私達だって!」
「絆の強さなら負けないデス!」
背中合わせになって何かを話していたミドリ色とピンク色が、互いに頷き合った直後。ウチへと駆け寄って来た。ティーニャちゃんの次の詠唱が終わるまで、もうちょっと話しててもよかったんだけどね。
『再びソングチームの二人がイナリ選手に突撃するぜ!!』
『最初と同じくグリーン選手が前を走って、小柄なピンク選手がその背に隠れる様に走ってるね~』
「コーン!」
アクションスキル<白炎狐火>
「この一撃で決めるデス!」
アクションスキル<ヴォーパルスイング>
接近されるのはよろしくないので白炎狐火で進路を塞ぐと、さっきも見た鎌が紫色になるやつでジャンプしてかわされたわ。でも、白炎狐火は種族スキルで硬直がないから、あの一撃を交わすのは容易いわね。
『進路上に現れた白炎狐火を、グリーン選手が飛び上って避けたぜ!!』
『でも、飛び上ったらまたティーニャちゃんに狙撃されちゃうんよ~?』
「後は頼むデスよ!ピンク!」
「任せて。グリちゃんが繋いでくれた勝機を無駄にはしないっ!」
「~~~!?」
「コーン!?」
うそっ!?ピンク色がミドリ色を踏み台にした!?
『なんだぁ!?ピンク選手が唐突に上空に吹っ飛んできたぜ!?』
『グリーン選手の大鎌の刃にピンク選手が乗ってて、空中でぶん投げたみたい・・・ほとんど打ち合わせ無しでこんなコンビネーションが出来るなんてすごいね~』
「~~~!」
「逃がしはしない!」
アクションスキル<スピニングバインド>
「コ、コーン!」
きゃー!!どどどど、どうしましょう!?ティーニャちゃんの目の前にピンク色がー!あ、あわわわわ!!
「はぁぁぁぁぁ!!」
「~~~!?」
「コーーン!!」
慌てて逃げようとしたティーニャちゃんが、ヨーヨーの紐でグルグル巻きにされてビタン!って叩きつけられちゃった・・・。
『天へと跳躍したピンク選手が、両手のヨーヨーでティーニャ選手を拘束!そのままステージへと叩きつけたぜ!』
『あぁ~!ティーニャちゃんが!』
「おっと。行かせないデスよ?」
「コーン・・・」
助けに行きたいけど、ミドリ色が邪魔・・・。ううん。すぐにティーニャちゃんが消えちゃったからミドリ色が居なくても助けられなかったわ・・・。
『ティーニャ選手HP全損につき、場外へ強制転移だぜ』
『うぅ・・・これでイナリちゃんは2対1になったね・・・頑張れイナリちゃ~ん!諦めちゃダメだよ~!』
「ここから先は・・・」
「ずっと私達のターンデス!」
「コーン・・・」
大きな鎌を肩に担いだミドリ色と、両手にヨーヨーを構えたピンク色がウチを指を差して挑発してくる・・・。
切り札を使っても・・・一対二は厳しいわね・・・。
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「私達の」
「勝利デース!」
『そこまで!イナリ選手HP全損!試合終了だぜ!!』
『イナリちゃんも頑張ったよ~。お疲れ様~』
「~~~・・・」
「コーン・・・」
負けちゃった・・・せっかくミズキちゃんが勝ったのに・・・ウチらが勝ってたら二回戦進出だったのに・・・ご主人様はウチらの事を怒るかな・・・?
「二人ともよくやったぞ。えらいえらい。大将戦が終わったらいっぱいご褒美あげるからな~」
「~~?」
「コーン・・・?」
しょんぼりと肩を落として帰ってきたウチとティーニャちゃんをご主人様は優しくなでなでしてくれたわ。
うふふ~。ご主人様のなでなでは気持ちいいから好きなのよ~。なでなでも好きだけどご主人様の事が大好きだもの。くっ付いてご主人様の匂いに包まれるのが世界一幸せだわ。思いっきりぎゅってしてくれないかしら。
『本選第一試合中堅戦!勝者グリーン選手とピンク選手!!おめでとう!!』
『今回は二人のチームワークが光ってたね~。次の大将戦は三対三だよ~!もっとも~っと凄い試合になるのを、期待してるからね~!』
「だから・・・あとは俺達に任せろ」
「きゅい!」
「メェ~」
最後にポンポンって頭を軽く撫でて、なでなでを終わらせたご主人様がステージへと上り。その後ろを楽しそうなボーパルちゃんと、面倒くさそうなアイギスちゃんが続いて上っていったわ。
確かにウチらが負けちゃったのは残念だったけど・・・あの三人が一緒なら負ける気がしないわね!
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。
VRMMOでサモナー始めましたの1巻2巻が大好評発売中!
3巻は6月の9日に発売予定だぜ!
次回は早めに投稿・・・出来たらいいなぁ・・・(遠い目)
あ、ピンクとグリーンは流石にまんまだから修正入るかも。具体的には二人の武器が変わったりとか。




