208匹目 聖獣のエルダーグリフォン
「ぐっ……グリフォン。キタ――――――――――――ッ!!」
「グェエ!?」
「きゅい!?」
ウェヒヒ。神父が最後の最後に召喚したのは真っ黒のグリフォンだった。グリフォンだよグリフォン!
あ~グリフォン出ないかな~?グリフォン欲しいなぁ~?(チラチラ)ってしてた結果がやっと形になったよ!ふひ。絶対にゲットしてやる!マスターボールを持てぃ!
ネームドモンスター 聖獣のエルダーグリフォン Lv50
状態 アクティブ 憑依 聖闇反転
おぉう。レベル50でネームドモンスターか。白銀ちゃんとかかなり強かったのにその上位互換……しかもこっちはフルパーティじゃない上にクレアとアリスっていう護衛対象も居て、アイギスがお留守番で俺は瀕死。
敵は強大。圧倒的。対するこちらは連戦と俺の我が儘で万全とは程遠い。
普通に考えれば勝算など無い。元々の目標であるアリスは既にこちらの手にあるんだ。イベント的にはなんとか逃げてウツロおばあちゃんにでも丸投げするのが”正しい選択”というやつなのだろう。
まぁ、そんな事は知った事では無いが。
だってグリフォンだよグリフォン!!大事な事だから2回目だよ!もう一回言うよ!グリフォンだよグリフォン!!
戦力差が絶望的?そんなものもふもふを諦める理由になりはしない!
勝算など無い?もふもふ魂を数字で語れるものかよ!足りない分は勇気で補えばいい!
逃げるのが正しい選択?正しくなくて大いに結構!それでもふもふを手に入れられるのならばいくらでも間違ってみせよう!
どんな理不尽が襲おうとも勝てばいいだけの話だろう?いつだって貫き抗う言葉は1つ。だとしても!
「グッ……グエェ!!」
「コーン!」
俺の魂の叫びをぶつけられ若干身を引いていたグリフォンがそんな自分を恥じる様に、または恐怖を覚えた自分に怒りを覚える様に翼を大きく広げて一歩を踏み出した。
グリフォンの感情に呼応するようにグリフォンの体から立ち昇る黒いオーラが勢いを増し、更に鋭くなった眼光で俺やクレアを庇うイナリをギンと睨みつけている。
くっくっく。そんなに怖い目で見つめても俺の目は誤魔化せないぞ?
黒いオーラで分かりにくくなっているが、グリフォンの体はヌイグルミの様に要所要所が丸っこいシルエットをしている。
鷹である首から上と翼は羽毛がいっぱい生えていてもっこもこになってて、肩から下の獅子の体は短い毛が隙間なく生えており撫で心地が良さそうだ。
つ~ま~り~、獅子の体に跨って思いっきり抱きしめながら首筋に顔を埋めてすりすりもふもふするのが至高というわけだ!
あぁ、いや。鷹と獅子の境目をもふるのも捨てがたいなぁ……羽毛と体毛だと生え方違うよね?どうなってんだろ……くふふ。今から全身を撫でまわすのが楽しみだなぁ~。グリフォンが!泣いても!もふるのを!やめない!
「でゅふふふふふ……」
「グッ……グルゥ?グエェェ?」
おっといけない。つい声が漏れちゃったぜ。ついでに涎も。じゅるり。
うん?グリフォンの全身を舐めまわす様に眺めながらどう調理しようか……もとい、どうもふり倒そうか考えていたらグリフォンの様子がおかしい様な?
さっきまで眼光鋭く睨みつけて威圧していたグリフォンが心なしか涙目で怯えて尻尾を体の下に巻き込んで後ろ脚がプルプル震えているような……
ま、気のせいだよな。あっちの方が強者だし、グリフォンなんて百獣の王どころか陸と空の帝王みたいなもんだもん。ここは一気呵成に攻め落とすしか勝ち目はあるまい!
「やるぞみんな!グリフォンはゲットしたいから倒さない程度に攻撃よろしく!」
「きゅい!」
「ホー!」
「コーン!」
「にゃぁ~ん♪」
「グ、グエェ……」
ボーパルが両手両足に鎌を装備し、床と言わず壁と言わず空中と言わず変幻自在に滑って移動し、グリフォンとすれ違う度にその身を切り裂き駆け抜けていく。
一撃一撃のダメージはそれほど大きくないのだが、ちょこまか動き回るボーパルを嫌がったグリフォンが俺から視線を外した瞬間。ミズキの魔眼がキラリと光ってグリフォンを麻痺状態にした上に、ミズキが飛ばした羽根がグリフォンの影に突き刺さり影縫いを行い、グリフォンの影を影魔法で操り、影から伸びた漆黒の触手の様な物がグリフォンの体を捕らえて抑え込んだ。
えっと……なにそのコンボ?超怖いんだけど。ミズキのMPがごっそりと消し飛びはしたけれども、レベルが8も上のネームドを1人で抑えられるって……やべぇな!
ミズキは一時的に戦闘不能になったが、ノゾミがMP回復の歌を歌っているので直に復帰するだろう。
ミズキの活躍で一時的に身動きを止められたグリフォンの頭部へとイナリが空中に待機させておいた狐火を爆発させずに押し付けて炎で継続ダメージを与え、背中に飛び乗ったボーパルが嵐の様な鎌の連撃を浴びせかけ……グリフォンの翼を片方消滅させた。
「グェェエエエ!!」
「きゅい!」
「ホー!」
部位欠損したグリフォンの翼の根元から闇色のオーラが吹き出し、ミズキの戒めが破壊されてグリフォンは空中へと飛び上った。
グリフォンさん左の翼が無いのに普通に空をとんではるんですけど……
まぁ、普通に考えて翼の羽ばたきであの巨体を飛ばすのは無理だよな。飛んでるのはスキルの力だろうから翼が欠けても問題ないと。
う~ん。グリフォンを捕まえるとは言ったものの、どうすればいいのかさっぱりなんだよなぁ。
普通に封印しても1%ぐらいしか封印率が上がらないだろうし、ティーニャや白銀ちゃんみたいに自分から仲間になってほしいんだが……どうすればいいんだろうね?
ティーニャは餌付けしたら仲間になったろ?白銀ちゃんは……戦闘後に命乞いをしてきて気づいたら封印完了してた感じ?
ん~。やっぱり死なない程度にダメージを与えて餌付けすればいいのかな?グリフォンって何食べるんだろう……鷹も獅子も肉食だしお肉かな?お肉持ってたっけ……あ、ストレージにウサギの肉がいっぱい入ってる。よし!イケルな!
「ないてる……」
「ん?クレア?何か言った?」
俺がストレージからウサギの肉を全て引っ張りだし、生の方がいいのか軽く火を通した方がいいのか、どうせなら塩コショウで味付けしてから焼いた方が、いや。焼き肉のタレも捨てがたいと悩んでいると、空中戦に移行したグリフォンとボーパル達の戦いをあんぐりしながら見上げていたクレアが何か呟いてた。リツイートしていいねしておけばいいのかな?
「グェエ!」
「あの子がないてる声が聞こえるのよ……」
「え?あ、うん。鳴いてるからね?」
クレアがグリフォンを指さしてよく分かんない事言ってる。
そうか……レベル50のグリフォンだもんね。ついにプレッシャーに耐えきれずに壊れちゃったのか……かわいそうに。
「違うわよ!鳴いてるじゃなくて泣いてるって言ってるのよ!噛み殺すわよ!」
「あ、良かった。いつものクレアだ」
噛み殺すわよ頂きましたー!やっぱりクレアと言えば噛み殺すわよだよな。噛み殺さないクレアなんてクレアじゃないもん。
「って、そんな事はどうでもいいのよ。さっきからずっとあの子が泣いてる声が頭に響いてるの……やっぱり、あんたにも聞こえてないの?」
「俺にはグエ~としか聞こえないが……」
たぶんそう言う事を言いたい訳じゃないんだろうな。グリフォンを見つめるクレアの瞳は真剣そうで深刻そうなだ。俺でも茶化すのを躊躇うぐらいには。
「ボーパル達にリンチされて泣いてるって事か?」
「ううん。そっちじゃないわ……あの子が泣いてるのは、体じゃなくて心の痛みみたい。闇に体を蝕まれて聖なるチカラを食べられてるのが辛い……らしいわ」
なるほどな。グリフォンの方も万全とは程遠かったってわけね。
どうりでミズキ1人で拘束できたり、空中戦で今まで致命傷を負わずにいられているわけだ。グリフォンだけボーパル達と戦いながら内側で闇と聖のせめぎ合いもしている訳ね。そういえばあの神父がそんな事言ってた気もするし。
「見た感じ今は闇の方が優勢だもんな……なんとかして聖の方が優勢にできればあのグリフォンを助けられるのか……?」
そして着せた恩のお返しに仲間になってもらうと。うん完璧な作戦だな!
「あんた……信じるの?こんな、あたしでも何が何んだが分かんないのに。あ、あたしが出鱈目を言ってるかもしれないのよ……?」
グリフォンから、う~んと頭を捻る俺へと視線を移したクレアは恐怖と不安とちょびっとの期待を宿した揺れる瞳で俺を見つめてくる。
えっと……?この子は一体何を言ってるのかな?戦闘のプレッシャーとアリスの危機とグリフォンの声が聞こえたののスリーパンチで情緒不安定になってるのかな?
「信じるさ。当たり前だろう?」
「―――――――――」
だってクレアが嘘つく意味無いし。むしろ、このヒントを言うためだけにクレアが付いてきた説あるしな。
さてさて、クレアがまたポカンとしてフリーズしちゃったからヒントはここまでなのかな?後は俺達でなんとかするしかないか。
達成目標は闇に捕らわれたグリフォンを殺さずに助ける事。難易度は高そうだがなんとかしてみせるとも。
全てはもふもふの為ゆえに!
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。
VRMMOでサモナー始めましたの1巻が・・・じきに発売予定!お楽しみに!
闇堕ちした聖獣のエルダーグリフォンを怯えさせる程度の邪悪・・・うん。いつもの主人公だな!(錯乱)
クレア騙されちゃダメだ!そいつカッコイイこと言ってるみたいに見えるけど内面結構黒いから!
ま、まぁ。ゲームだし。プレイヤー的には打算ありありだよな。
人助けとか報酬目的だし、今いい事が無くても後々プラスになる事が多いもん。仮に何もなくてもクエスト一覧は埋まるしな。
結果・・・困っている人は見過ごせない超いい人が出来るっていう・・・あなた騙されてますよ?ってめっちゃ言いたい。ま、まぁ行動だけ抜粋すればいい人で間違いないけどね。
それでは今回はこの辺で。今週は仕事が忙しいから更新は遅れるかも。まぁ、元々不定期だから遅れるも何も無いっちゃ無いんだけどね。
次回も読んでくれないと・・・噛み殺すわよ!
(あれ?これだとクレアに噛み殺して欲しい人は次回を読んでくれないんじゃ・・・よし。読んでくれた人も噛み殺してもらおう。そうしよう)




