20匹目 男嫌い
「いやはや、面目ないデス」
「……まったく。姉さんはもっと落ち着いて行動してください」
「これも全てフィアが可愛すぎるのが悪いのデース!可愛いものの前では理性なんか飛んでっちゃうのデース!」
「それは分かる」
「……飛ばさないように鎖でつないでおいてください。……それともフィアが繋いであげましょうか……?」
「「いえ、結構です(デース)」」
だからどこからともなく現れた、その鎖をしまってください。……フィアちゃんは具現化系能力者か何かなのか?
「……はぁ、もういいです。……ユウさん。この5つが今ある中ではオススメの組み合わせです」
「あ、うん。正直違いが良く分からないしフィアちゃんがオススメするのならそれを貰おうかな」
ビクッ!!
フィアちゃんが差し出す5つのヒールクリームを受け取ろうと手を伸ばしたら思いっきり手を引っ込められてしまった。
えー?差し出したからには受け取って欲しいんじゃないの?割と傷つく反応されたんだけど……。
「およよ?珍しいデスね。フィアが女の子を避けるなんて。男嫌いなのは知ってるデスけど女の子も嫌いとなると……はっ!つまり一生エルと一緒にいたいといようことデスね!そうならそうと早く言って欲しかったデスよ!」
ぐふっ、NPCのエルにすら女の子扱いされていた……一人称俺で男口調なのにどうしてみんな勘違いするのか小一時間ほど問いただしたいところではあるが。やっぱりアレか?見た目か?翼に、その容姿で男は詐欺。むしろ全世界の女性に謝罪すべき。とか意味分からんことまで言われたことあるし。人は見た目が9割ってのはときどき聞くけど……中身はこんなに男前なのに、理不尽だ。
「……違います。第一、フィアは別に男嫌いではありません。男の人が何を考えているのか分からないから怖いだけです。それに……
……ユウさんは男の人ですよ?」
ガシッ!
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
「ホワッ!?」
はっ!しまった!初対面で俺を男だと初めて気付いてくれたのが嬉しくてついフィアちゃんの手を掴んでしまった!
いやー、自分ではそんなに気にしていないつもりだったんだけど、やっぱり気にしてたのかね?理解した瞬間光の速さで机を回り込んでフィアちゃんの手を取っちゃったよ。ハハハ。
…………やっべ。どうしよう。エルが飛び込んできた時もちょっとイヤそうな顔するだけだったのにフィアちゃん、絶叫&顔真っ赤の涙目で俺を睨んでるし。あ、可愛い。
じゃなくて!、手を離せばいいんだろうけど思考だけがグルグル回って体がまったく動かない。ラグってんのかな?
本サービス開始から日もたってないしね。バグがあってもしょうがないよね。ハハハハハ。
「………………って」
「はっ?えっ?ごめん、なんて?」
「ッ!でてってーーーーーーーッッ!!」
ガチャッ ポイッ ドサ! バタン!!
……家の外に追い出されてしまった。まぁ今のは完全無欠に俺が悪いから文句は無いんだけどね……。
ガチャッ ポイポイポイッ キッ! バタン!
……叩き出すほど怒ってるのに律儀にヒールクリームを届けてくれるフィアちゃんマジ天使。最後睨まれたけど……
それにしても、フィアちゃんって見かけによらず力あるんだな。まさか技も何もなくただ力任せにブン投げられた上に襟首を掴んで引きずられて玄関の向こうまで投げ飛ばされるとは思いも寄らなかった。そういえば、エルにカウンターを当てた時も一切体が流されていなかったし。
もっともステータスの筋力の数値が上がったからといって筋肉が付くわけじゃないことを考えれば”見かけによらず”っていうのはFWO内では当たり前なのだろう。肝に銘じておこうか。
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さて、ヒールクリームを買うのに予想以上に時間が掛かりまくってしまい、そろそろ日の出が始まってしまう。日の出が始まると夜のモンスターは徐々に数を減らしていくので早いところ森まで行って新しい種類のモンスターを封印したいところだ。
昼の森で出るモンスターがキャタピラーと野犬と一応カラス。
夜の森で出るモンスターがフクロウだけってことはあるまい。夜に一匹。昼に野犬で10匹。次の召喚が出来る。楽しみだな、何を召喚しようか。
俺はいつかの様に上機嫌にスキップしながら街の外を目指し……門を出た瞬間うきうきとボーパルとミズキを召喚。即座にうさぎさんセットを着装して……追っ手から逃げた。
怖えぇよ!なんであいつら門の周辺で出待ちなんかしてんの!?って、ぎゃああああああ!?正面からも追っ手が!?っていうか右にも!左にも!どうなってんの!?この草原全体に追っ手が配置されてるってのか!?こんな夜中に、居るかどうかも分からない俺を捕まえる為に!?
んなバカな!こいつは捕まったら何されるか分かったもんじゃない!
うおおおおおおおおおおお!俺はやるぞ!なんとしても逃げ切るんだ!行くぞボーパル!ミズキ!あの朝日に向かって走r、逃げるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
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結論からいうと逃走はあっさり成功した。
俺の走る先に日の出を見た追っ手達は急に俺達を追うのを止めて散開。周りをキョロキョロしながら走り去っていった。
「はぁ……はぁ……なんだったんだ、いったい……?」
「きゅい♪きゅい♪」
「ホー!」
西の空が明るくなってきたのを感じた瞬間逃げるとか、追っ手らはアンテッドかなんかだったのか?
……あの執念を見た後だと完全に否定しきれないのが何とも……
それとボーパル達は完全に鬼ごっこかなんかのつもりだったろ。テンション上がり過ぎて二人して俺の周りをぐるぐる回り続けてるし。嬉しそうにはしゃぐ姿は見ていて可愛いからいつもなら大歓迎なんだけど身動きが取りづらい!今は時間が無いからしゃーなし!ふたりとも抱えて走る!
「きゅいーーーーーーーーーー~~~~~」
「ホーーーーーーーーーーーー~~~~~」
俺に抱えられたまま後ろ足をプランプランさせてはしゃぐボーパルとタシタシと後頭部で俺の胸を打って興奮を伝えるミズキはそれはもう大層可愛らしいが。走る速度は緩めずにそのまま森へと突入した。
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「ホー」
ちなみにこれはミズキの鳴き声。
「「「ホー」」」
これはミズキ以外のフクロウの鳴き声。
「だぁーーーー!お前達はもう封印したの!新種持ってこーい!」
「「「ホーーーー」」」
元々1対1でも狩れた相手だ。あの頃よりもレベルが上がっている今3対3で負ける訳がない。
サクッと片付けたあとようやく一息つく。
「ふぅ……勢いで突撃してきたけど前に夜の森に来たときもフクロウとしか戦わなかったよな?まさか夜の森に出てくる敵ってフクロウだけとかそういう落ちはないよな……?」
「きゅいー?」
「ホー?」
「いや、何。2人の索敵能力には今回も期待している―――――」
「――――――――――――――――――――――――――――――――にゃ~ん」
「ニャンコ!?」
「きゅい!!?」
「ホゥ!!?」
言葉の途中に突然叫んだ俺にボーパルとミズキが驚いているがそれどころじゃない。俺の強化された聴覚はたしかにその鳴き声を捕らえていた。
昼に犬が出てきたんだ夜にニャンコがでてきても確かに何もおかしくない。
となればやることは1つ。
「ボーパル、ミズキ……ニャンコ狩りじゃぁ!!」
「きゅい!!」
「ホー!!」
ボーパルが前足で、ミズキが翼で敬礼の真似事をするとサッと別れておのおの索敵に入る。ウサギ狩りとは違い危険も伴うのでなんであれ敵を見つけたら召集することだけ叫んで俺も出る。
首を……いや、猫だから顔を洗って待ってろ!今直ぐに迎えにいってやるからな!!
あっ、やっぱり顔を洗っているところも見たいので俺が着いてから洗ってください。お願いします。
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