表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/263

199匹目 全ての道はもふもふに通ずる

今回もここまで書こうって決めてたら何故か1.5倍ぐらいの文量に・・・

ま、まぁ。よくあることさ。うん。あるある。

あ、今日のラフは姉の方デス。よろしく!


 

「しょうがないからあたしが直々(じきじき)にこの町を案内してあげるわ!感謝なさい!」

「えー……あー……ありがとう?」

「ホー!」


 左手を腰に当てて前かがみになりながら、突き出した右手の人差し指をピンと立てて感謝を要求されてしまった……

 別に俺は案内を頼んでないし、そもそもクレアが俺を案内するのは監視と言うか町の平和のため(自称)だった気がするんだが……ふりふり動いてるイヌしっぽがかわいいからいっか。


「ふ、ふんっ!この町であたしが知らない場所なんてないんだからね!どこへでも連れて行ってあげるわよ!」

「うん。お願い。頼りにしてるよ」

「きゅい~?」


 マップにある程度は書いてあるんだが、やっぱりそれだけじゃ見えてこないものとかもあるしね。

 俺が素直にお願いしたのが嬉しかったのかなんなのか、クレアは頬を染めて腕を組んでプイッとそっぽを向いてる。

 頭の天辺のイヌミミが落ち着きなくぴょこぴょこしてるのが実にキュートでいいね!

 って、ボーパルさん?クレアがそっぽ向いてるのは照れ隠しだからね?回り込んでも何もないと思うよ?だからって不思議そうな顔でクレアの顔を見ないであげて!そういう純粋な視線の方が心に刺さる事もあるから!やめたげて!


「え~っと。とりあえず噴水か湖があれば案内してほしいカナ?」

「?町の真ん中に噴水ならあるけど……そんな所に行きたいの?他にいい場所いっぱいあるわよ?」


 おお、噴水があるのか。噴水は始まりの街以来だな。まぁ、町の中に湖は無いよな普通。


「おう。とりあえず噴水に行かない事には落ち着かないからな。という訳で町の中心目指してレッツゴー!」

「にゃあ~」

「ちょ、ちょっと!またあたしを置いていくつもりでしょ!そうはさせないんだからね!」


 ノゾミのあんよを握って”えいえいおー”してると反対の手をクレアにぎゅっと握られた。何故か中指と人差し指の2本だけ。

 とっさに握ったらその2本だけになっちゃったのかな?かわいいけど俺はイヌしっぽの方が握りたいよ?もふもふ!


「しゃーないなぁ。クレアがそんなに俺と一緒に居たいって言うんなら一緒に行くか」

「にゃ!?にゃにバカな事言ってるのよっ!あ、あたしはあんたが子供達に手を出さないか監視するために仕方なく一緒にいるだけで……別にあんたと一緒に居たいわけじゃないんだからね!」


 はいはい。クレアが何と言おうが一緒に行くのはもう確定してるからね。全てはクレアの好感度を上げてもふもふイヌしっぽをも合法的にふもふする為に!そう。全ての道はもふもふへ通ずるのだ!


「と言うわけでイナリかもーん!」

「コーン!」

「え、きゃっ!」


 一度送還したイナリを召喚しなおして颯爽とその背に飛び乗り、クレアも引っ張りあげてイナリの背中に乗せる。もちろん俺の前にね!そしたら当然俺とクレアに挟まれたイヌしっぽに合法的に触ることが出来るというワケダ!

 ぐふふ。俺の顔をさわさわとくすぐるイヌしっぽがくすぐったいぜ……そのうちぎゅっと抱き締めて全力でもふもふしてやるからな!待ってろよ!


「……で?噛み殺される前に言い残す事は?」


 ……涎を垂らさんばかりの勢いでクレアのしっぽを見つめてえへえへしてたら肩越しにグリンと振り向いたクレアに絶対零度の瞳で見据えられてしまった。

 む、クレアは何か勘違いしてるな。ここは俺が正しいこの世の摂理を教えてあげねば。


「待て。誤解だ。俺は悪くない。いわゆる不可抗力ってやつでラッキーもふもふだからトラブルは発生せず何も問題はな「がぶぅー!」ィタタタタタタ!タイ!痛い!」


 ついに噛まれた!言い残す事を聞いておきながら言い終わる前に!”ガブ!”ってイッた”ガブゥ!”って!!やばい!手に穴空く!貫通する!入ってる入ってる!!

 無抵抗を示すために上げた左手を確保され、クレアにあむあむされてしまった。実際痛みは無いし安全エリアだからダメージも無いので大丈夫だが、自分の左手に深々と牙が突き立ってるのが怖すぎる。ぱっと見じゃれてる様にしか見えないのも確信犯だろ!コイツやりおる……!


「ふんっ!今度あたしのしっぽに許可なく触ったらあんたのしっぽ噛み殺すわよ!覚悟なさい!」

「……はい。反省してます……」


 あ、でも次やってもしっぽあむあむされるだけで通報はされないのね。ふむふむ。


「……なんか嫌な予感がするからあんたは歩いて行きなさい!これはお願いじゃなくて命令よ!」

「えー?まぁいいけどさぁ……」


 なんで俺の召喚モンスターであるイナリに乗れる決定権がクレアにあるんですかねぇ……まぁ、俺達の中で一番足の遅いクレアをイナリが運ぶのはおかしな事ではないけども、イナリとクレアというダブルもふもふから遠ざけられるのには遺憾の意を表明したい……ってもう進んでるし!待って!置いてかないで!てか俺から離れたらイナリ消えちゃうから!なんで急に全力疾走!?ボーパルも追いかけっこしてないで止めて!俺まで全力で走ってたら周りのもふもふっ子を鑑賞できないじゃん!いや、本当に待っててぇー!!


 -------------------------------------


「……転移登録完了っと」

「コーン」


 唐突に始まったマラソン大会を駆けぬき、なんとか召喚解除範囲まで引き離される前に噴水までたどり着けた。

 転移先にもばっちり獣人の町が登録されたから、これでどこからでももふもふパラダイスに転移してこれるな。よしよし。


「用事は済んだ?それじゃあこの町のいい所をいっぱい紹介してあげるわね!」


 俺が必死にクレア達を走って追いかけるのをイナリの背中で見ていたクレアはすっかり機嫌を直してご満悦だ。

 ……なんとなく釈然としないけどクレアがいいならそれでいいや……


「なによ。あたしが何か悪いっていうの?」

「……あえて言うならたちが悪いな」


 噛みつきもマラソンも体罰に見えない辺りが特に。

 実際には手に穴が開きそうになり、死ぬ気で走らされたんだが……両方じゃれてる様にしか見えないっていうね。たち悪っ!


「まぁ、それはさておき。今めっちゃ気になってる事があるんだけどさぁ……」

「何よ。しっぽは触らせないわよ?あ、ミミもダメだからね!」


 なんか俺が口を開けばクレアのしっぽとミミを狙っているみたいに聞こえるんだけど、そんな事ないからね?半分ぐらいは違う話もしてるよ?ホントだよ?


「クレアのミミとしっぽはまた今度もふらせてもらうとして……あ、いや。別に今すぐもふらせてくれても全然いいんだけど!むしろバッチ来いなんだけども今は置いておいて……あのめっちゃ存在感ある掲示板っぽいのなに?」

「え?あー。あれは依頼板(クエストボード)よ。何か困った事やお願いしたいことを紙に書いて貼っておくと、暇な人が助けてくれるのよ……まぁ、報酬しだいだけど」


 ふーん。なんかそんな感じはしてたけどやっぱりそうか。いかにもゲームらしいな。もしかしたら始まりの街にも似たようなのがあったのかな?完全に無視してたけど。

 ……そしてもふもふに関する話はまるっと無視されたな。だが俺は諦めないぞ!もしかしたら何かの間違いで「ちょっとぐらいなら……いいわよ」とか言ってくれるかもしれないしね!


「興味があるなら簡単なのを1つ受けてみる?あたしは今日1日は暇だし……ちょっとぐらいならいいわよ?」

「おしい!セリフは合ってるけどそうじゃない!今じゃないんだ!」


 ……あれ?なんかクレアに可哀そうなモノを見るような目で見られてる気がするけど……気のせいかな?うん。路傍の石コロを眺める様な目にも見えるけど気のせい気のせい。


「で、えーと。クエストだっけ?俺あんまりクエストとか受けないからな……」


 知人に頼まれたり遭遇したり報酬が欲しかったらやるけど……本格的にクエストに取り組み始めたら全部達成するまで町から出られなくなりそうでなぁ……攻略が詰まるまでは攻略優先でいきたいよね。レベルが上がればクエストの達成も簡単になりそうだしね!


「へぇ?意外ね。あんたなら真っ先に依頼に飛びつくかと思ったのに」

「いや、逆になんでそう思われているかの方が疑問なんだけど?俺そんなにお金なさそうに見える?」


 貧乏くさい感じは出てないと思うんだけどなぁ……それにクエスト受ける時間があればもふもふっ子と仲良くなりたいしね!

 問題は初対面のもふもふっ子とどうやって知り合うかなんだよなぁ……ここはクレアの人脈を使って誰か紹介してもらうしかないかな……


「なんでって、そりゃあ……お願いを聞いてあげれば依頼主とちょっとは仲良くなれるじゃない?あんたはちょっとでもこの町の住人と仲良くなりたいのかと思ってたから……あ、でも許可なくミミとしっぽに触るのはダメだからね!あたしの目が赤い内は絶対に許さないわよっ!」


「……」


 ……


「クレアお前天才かッッ!!??」

「はにゃっ!?ちょ、ちょっと……急におっきい声出さないでよ……ビックリするじゃにゃぃ……」


 クレアが何か赤い顔でボソボソ言ってるがそれどころじゃない!

 そうだよ!クエストだ!確かにクエストを達成して得られるのは報酬だけじゃない!依頼主の信頼もちょっとは得られるはずだ!そして人とのコミュニケーションで一番難しいのは最初の接点を作るところ!それをクエストで得られるのならば……クエストを受けまくればこの町中のもふもふと知り合いになるのも不可能ではない!?そしてそれだけのもふもふが居れば1人ぐらいはもふらせてくれるかも……


「よし受けよう!すぐ受けよう!誰かに取られる前にクエストを受けるぞ!今!すぐに!」

「え。う、うん。急にやる気になったわね……で、どれを受けるの?」


 クレアを半分引きずる形で掲示板の前へとやってきた。掲示板いっぱいに紙が貼ってあるが、手元のウィンドウでもクエストを受けられるみたいだな。

 で?どれを受けるのかって?はっ。愚問だな。


「全発全中!もってけ全部だッッ!」

「え!?全部!?ちょっと大丈夫なの!?」


 さらっと流し読みしたが、ここに貼ってあるクエストは大抵がおつかいや肉体労働などのこの第五層内だけで完結できるものばっかりだ。外との交流が無いからかな?素材を取ってこいやモンスターを倒してこいなんていう依頼が無いから効率良く回る事が出来れば早く終わらせられるだろう……


 バッと右手を払い獣人の町のマップを開く。左手で受けたクエストの一覧をスクロールしながら右手でマップにピンを打ちまくる。


 クレアは言っていた。今日1日は暇だと。クエストを受けるのにこの町の住人である必要は無いのかもしれないが、俺は余所者だ。その点クレアはこの町では良い意味で有名人みたいだからな。クレアが隣にいるだけで俺への警戒心も多少は下がるだろう。となればクエストクリアでの好感度の上昇を最大限にするにはクレアが時間を取れる今日中に終わらせる必要がある。

 ”今日1日”の定義が正確には何時までなのかは後でクレアに確認しなきゃならないが……日暮れまでだと仮定して残り……3時間。

 クエストにも個別に締め切りの時間があるからそれも考慮して最速で最短で全てを回れるルートの構築をッ!!


「ははっ。楽しくなってきたぁ!」

「ちょ、ちょっとあんたほんとに大丈夫?いや、最初からあんまり大丈夫じゃなかったけど、今のあんたは特に変よ、きゃっ!」


 本当に心配そうな顔をしているクレアには悪いが、今は問答をしている時間さえ惜しい。ステータスの差にものを言わせてクレアをさっと抱き寄せて近くで控えていたイナリに飛び乗り、駆け出させる。

 勝利条件は依頼の完遂。敗北条件は依頼の失敗とタイムアップ。攻略の鍵は獣人の町を周るルート構築。報酬はもふもふっ子との伝手がいっぱいッ!!


「さぁゲームを始めようッッ!」


 くっくっく。これでもふもふゲットだぜ!


「あんたやっぱり絶対変よー!!」


 俺の腕に抱かれて身を縮ませるクレアの獣人の町を引き裂く様な悲鳴は、スイッチが入りデータとタイムテーブルしか見えていない俺の耳には全く入っておらず、虚しくコダマするのみであった……


もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。


ピク〇ンとかストラテジーゲームとかって楽しいよね。どうすれば最善かを常に考えて、実行しながら修正して・・・そういうの大好き。一度嵌りだすと周りの声が何にも聞こえないほど没頭しちゃうのが難点なんだけどね。一回ネコリセットならぬ幼女リセットされた事があった時にうっかり怒鳴りかけるほど没頭しちゃうんだよ・・・このテトメトがッ!何たる失態ッッ!!


と、自責の念でテトメトが潰れている間にみなさんはラフの確認をどうぞ・・・


挿絵(By みてみん)


あら、かわいい。てか足長っ!スカート短っ!これ数センチ捲れたらパンツ見えちゃうじゃ・・・まぁ、エルだし気にしなさそうだな。シルフとタメを張るほどのおバカキャラだし。

というかこの服で森を彷徨ってたのか・・・そりゃカラスさんにも襲われますわ。ユウもポカンとしますわ。テトメトもこんな格好の人がうろついてたら思わず二度見するね。

・・・当然か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ