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2匹目 鑑定

 甘かった。

 正直サービス開始直後の大規模VRMMOの混雑具合ってやつをなめていた。

 前を見ても横を見ても人、ひと、ヒト。しかもほとんどが初期装備の同じ服なのでほぼ見分けはつかないし上を見ればプレイヤーマーカーで緑に染まった景色が見える。


 これがまた人混みもリアルに再現してあり息ぐるしいったらありゃしない。

 人混みの皆もどうやら行き先は町の中心方面らしく人波に流されるようにあっちへフラフラこっちへフラフラしつつも遠めに見えていた待ち合わせ場所の噴水がやっとこさ近づいてきた。


「祐!手を伸ばせ!」

「っ!?」


 ここからさらにタクを探す必要があるのかと絶望感に飲み込まれそうになった瞬間耳に滑り込んできた声。

 とっさに声がした上へと伸ばした手が、がっちりとつかまれそのまま一本釣りの様に人混みの上へとぽーんと引っこ抜かれそのまま人混みの頭の上を一気に飛び越え人がまばらな路地の隅へと着地した。てか落とされた。


「イッテテテ……もっと優しく助けれなかったのかよ」

「ホバーブーツは10秒しか滞空時間がねーんだよ。あれが最善だ」


 《プレイヤー名:タクからフレンド申請がされました受理しますかY/N》

 《プレイヤー名:タクからパーティ申請がされました受理しますかY/N》


 誰か半ば確信しつつも顔を上げた俺の視界に入ったのはいつものにやけ面……よりは大分マシだがやはり気持ち悪いにやけ面だった。

 タクのやつめゲーム補正で若干イケメンにしたな、髪は黒いままだから印象はあんまり変わってないけどな。俺もしてるから人の事言えないけどもな!


 とりあえずタクからの申請は受けつつ尻を軽く払い起き上がる。

 改めてタクをというかタクの装備を眺めた。

 雑多に溢れかえる安っぽい初期服とは一線を画すタクの鎧は銀色に鈍く輝くいかにもな鉄っぽい鎧。さらに特徴的なのは足装備だ。赤を貴重としたその靴は両くるぶしの少ししたぐらいからデフォルメされた翼が生えており大変可愛らしい。

 何あれ超欲しいんですけど。てかそれ以外鎧装備のタクにはファンシーなその靴は致命的に似合ってない。ぶっちゃけださい。



 プレイヤー タク

 ヒューマン ファイターLv1


【防具:鎧】マジックアイアンアーマー レア度2

 防御力+30 重量5 耐久値300

 魔鉄を使って作られた一般的な鎧

 素材に魔鉄を使用しており魔法抵抗がある

【効果】

 魔法抵抗:?


【防具:手】マジックアイアンガントレット レア度2

 防御力+20 重量2 耐久値200

 魔鉄を使って作られた一般的な小手

 素材に魔鉄を使用しており魔法抵抗がある

【効果】

 魔法抵抗:?


【防具:足】ホバーブーツレア度?

 防御力+? 重量? 耐久値?

 天馬の羽を使って作られた靴

 装備者に空を駆ける力を与えるといわれている

【効果】

 空中移動最大?秒

 再使用時間?時間

 再使用可能まで:?時間?分


【アクセサリー:指】耐痺の指輪 レア度2

 防御力+1 重量0 耐久値30

 耐麻痺の術式が組み込まれた指輪

 装備者を麻痺から守る事がある

【効果】

 マヒ抵抗:?


 《スキル:鑑定がレベルアップしました》


 おおう。何か大量にウィンドウが出てきたんですけど。

 あとなんかレベルアップした。


 思うにタクの装備を観賞してたらシステムが勝手に鑑定とかってスキルを発動してこれまた勝手にレベルアップしたと。


 システムさんナイスです。


 でも残念ながら俺じゃあこの装備が強いのかどうかすら分からん。

 でもホバーブーツはレア度が他のより高いし性能もほぼ見えないしやっぱりレアなんだろう。いいなー。欲しいなー。


「なあ、タクなんかお前の装備の詳細見たいのが見えて鑑定がレベルアップしたって出たんだがこれって……」

「……」


「?」


 なんかポカーンとした顔で俺の顔を見つめてくるんですけど。キモイんですけど。


「おい、タクどうしたんだ……」

「おーーい!タクさーん!お兄ちゃん見つかりましたかーーー?」


 とそこに割り込んでくる少女の声。やけに良く通るその声は俺にとってずいぶんと馴染みのあるもので、


「おっ、その声は翼か?」

「へっ?お兄ちゃん?」


 こちらに駆け寄ってきた少女はやはり俺の良く知る妹の姿によく似ていた。


「おう。どうやって見つけようかと思ってたんだがそっちから見つけてくれたようで手間が省けたな」

「お兄ちゃん?ホントにお兄ちゃんなの?え、いや、なんで……」

「お、おま、ちょ、なんで……」


「「なんで女の子になってるの!!?」」


「失敬な!!」


 FWOでは性別が選択できないのは二人とも知っているだろうに、何を言っているのかこのバカ2人は。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんになっちゃったの!?」

「なっとらんわ!」


「いやいやどこからどう見ても女性型アバターにしか見えないって!こっち来てから一度でも鏡みたか!?」

「むしろ鏡見ながら(アバター)作ったわ」


 はぁ、やれやれと力なく首を振る俺にイヤおかしいのはお前だと抗議を止めない2人。いやどうしろと?


「鏡見ろって言われても鏡なんてもってないしな。むしろアイテムを何も持ってないまである」


「いやそれもそうだが……例えば水面とかさ、噴水……は使えないしシルフちゃん水魔法取ってない?」

「いやー、あたしは風魔法専門なんで」


「だよねー」


「あっじゃあ、あたしがスクショ撮ってお兄ちゃんに送りますよ」


「おお、その手があったか」


 俺を置き去りに進む会話。誰か状況の説明をプリーズ


 《プレイヤー名:シルフからフレンド申請がされました受理しますかY/N》


 まあこれは受理しときますか。

 フレンドになった途端むむぅとか唸りつつ大きく離れたり顔を寄せたりしてくる翼、改めシルフ。だから顔が近いって何で俺の周りの人は皆して顔を寄せたがるのか。


「よし撮れた」


 《フレンドからメールが届きました確認しますかY/N》


「ほら早く開いてみてみてよお兄ちゃん。どう見てもお姉ちゃんだから。むしろ妹だから」

「いや、意味わからんし」


 メールの添付写真を開くとそこには身長145cmと男にしてはかなり小柄で(前ならえで前にならったことが無い)ぱっちりとした二重瞼からこぼれそうなほど大きな黒曜石のような瞳と、反対に小さな鼻。不機嫌そうにちょっと口を尖らせている腰まで届かんばかりのツヤツヤした長い黒髪の人物が、というか今の俺の姿そのままだろうが。


「やっぱり男じゃないか」

「「いやいやご冗談を」」


 仲がよろしいようで何よりです。


「はぁ、そんな事はどうでもいいからこのゲームについて教えてくれよ戦い方とかさあ。2人ともベータ経験者だろ?ぶっちゃけ俺何も知らないし」


「いや、そんなことって、かなり重要なことだと思うんだが……まぁいいか。お前はそういう奴だったよ。ん~街中を探索してもいいんだが今は混んでるだろうから先に戦闘から行ってみるか」


「さっそくか!いいねー、しびれるねー」


「んじゃぁ、目指すは町の外だね。門はあっちだよ。お姉ぇちゃん♪ムフフフ」


「お姉ちゃん言うな」


 シルフは、ライトグリーンのどこぞの子供しかいけない島の妖精っぽい衣装の背中から伸びている半透明の羽を翻して俺の手をとり歩き出した。光を反射して煌く金髪の隙間からのぞく耳がちょっととがって見えるしエルフなんだろう。たぶん。


 プレイヤー シルフ

 エルフ ファイター Lv1


【防具:服】フェアリードレス レア度?

 防御力+? 重量? 耐久値?

 妖精が編んだとされるドレス

 身につけた者に風の様に舞う速さを与えると言われている

【効果】

 敏捷値補正:?

 スキル回避補正:?

 セット効果:?


【防具:頭】フェアリーハット レア度2

 防御力+20 重量1 耐久値150

 妖精が編んだとされる頭巾

 羽の様に軽く身につけた者の魔法発動をサポートするといわれている

【効果】

 詠唱速度補正:?

 セット効果:?


【防具:手】フェアリーグローブ レア度2

 防御力+20 重量0 耐久値150

 妖精が編んだとされる手袋

 羽の様に軽く繊細な作業に向くといわれている

【効果】

 器用値補正:?

 セット効果:?


【防具:足】フェアリーブーツ レア度2

 防御力+20 重量1 耐久値150

 妖精が編んだとされる布靴

 羽の様に軽く素早い動きをサポートするといわれている

【効果】

 敏捷補正:?

 セット効果:?


【アクセサリー:指】耐黙の指輪 レア度2

 防御力+1 重量0 耐久値30

 耐沈黙の術式が組み込まれた指輪

 装備者を沈黙から守る事がある

【効果】

 沈黙抵抗:?


 《スキル:鑑定がレベルアップしました》


「タクもそうだがお前達の装備強すぎじゃね?チートじゃね?むしろベーターじゃね?」


 いかにも妖精ですって感じの可愛らしい装備を身に纏っているシルフが恨めしい。いやうらやましい。


「ベータ特典だな。ベータテスト終了時の装備と所持金の半分がもらえるんだ。装備しているもの以外のアイテムはどんなレアアイテムでもなくなっちまうし、レベルも1に戻っちまうんだが……まぁ今日から始めるプレイヤーからすればずるく見えるかもなぁ」


「あたしがお姉ちゃんだったら『殺してでも奪い取る』ね!」


「ま、こればっかりはしゃあねぇよ諦めろ」


「むー」


「それと、あたし達は気にしないけど、他のプレイヤーの、特に女の人の装備を許可も無くじろじろ鑑定するのはマナー違反だから気をつけてねお姉ちゃん」

「はーい」


 なんか納得いかないがだだをこねても何かが変わるわけでもない。いつか2人を越える装備を身につけて自慢してやると心に誓いつつ他のプレイヤーの羨望と嫉妬の視線をやり過ごしながら町から出た。


 ってかお姉ちゃん言うな。


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