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171匹目 ゛白銀゛VS運チート勢

どうも~。どう考えてもゼ○ダよりもル○族の子の方が可愛いと思うテトメトです。合法ロリだしね。仕方ないね。


今回は要望があったので白銀ちゃん視点をちょっと書いてみました。

ちょっと・・・(文字数を見つつ)うん!普段の3倍はいってないからちょっとだな!(白目)


※注意※

今回はいつかのオークと同じく外伝的なif世界っぽい何かです。

この作品に出てくるモンスター達はこんなに色々考えて戦ったりはしていないので悪しからず。

 

 グーテンモルゲン。

 本日はお日柄も良く視界良好。最高のフライト日和ですね。

 こんな日にはお仕事も忘れてぷかぷかとお空のお散歩でもしていたい気分です。


「未確認の魔力反応多数!交戦中のようです!」

「っ!味方反応ロスト!このままでは……」


 なのに、なんだこれは!

 何故わざわざ哨戒飛行中の我々の付近に敵が転がり込んでくる!?

 今まで敵が出てきたことなど一度も無かったのだぞ?

 それもなかなかの手練と来たものだ。全くもって運がない。


「隊長。いかがいたしますか?」

「……はぁ。見つけたからには行かねばなるまい。”仲間を見捨てた裏切り者め”と背中を撃たれたくないのならな」


 眉をしかめながら先頭を飛ぶ私に確認をしてきた副隊長にそう言うと、副隊長のみならず私達のやりとりを聞いていた隊員全員が途端に口の端を歪めて「了解」と嬉しそうに返答を返してきた。

 この戦闘狂共め。何が楽しくて殺し合いなどをせねばならぬのか私にはさっぱり理解できん。


 ……はぁ。とはいえ、隊員の士気を保つのも班長の仕事の内か。仕方あるまい。


「隊員諸君!聞いての通りだ。急で悪いがお空の散歩は終了だ!我々はこれより新しいお友達とのピクニックに入る!

 あぁ、もしかしたらお友達が照れてお断りしてくるかもしれんが問題ない。

 私が読んだことのある文献では友達を得るためにはこぶしで語り合うものらしい。だが、残念ながら我々の拳ではお友達に届きそうにない。そのためライフルを使って友好を深めようと思う」


 それならば貴様らも得意だろう?と水を向けると手を叩いて喜ばれた。

 やれやれ、早く帰って後方でコーヒーでも飲みたい気分だ。とはいえ給料分の仕事はせねばなるまい。すでに友軍に被害が出ている以上成果なしで帰れば私のキャリアに傷が付く。まったく、サラリーマンは辛いな。


「敵影視認!数6!魔法使い3!」

「まもなく交戦領域に入ります!」


「隠密飛行を維持!魔力隠匿状態で爆炎弾を装填しておけ!一斉射撃で後衛を刈り取るぞ!」

「「「「了解!」」」」


 敵数はこちらを1名上回る6。初手の不意打ちで最低2名は刈り取っておきたいところだが、はてさて。


「交戦領域に入りました!」

「爆炎弾装填完了!いつでもいけます!」


「よろしい。カウント5で発砲する。私に続け」


「ははっ、歓迎の花束の代わりという訳ですな」

「精々綺麗な花を咲かせて見せるとしましょうか」


 空中で静止し射撃体勢に入る。隊員共も訓練通りに所定の位置に付き、軽口を叩ける程度の余裕はあるようだ。

 戦場の高揚に飲まれて突撃をかましたり、訓練の内容を無視するようならばブン殴って止めてそれを口実に後ろに下がろうとも考えていたのだが、全員優秀なようで何よりだ糞ったれ。

 これ以上ごねて敢闘精神を疑われるのもまずいか……仕方ない。やるからには全力を尽くすとしよう。


「『主よ、我に敵を撃ち滅ぼす力を与えたまえ』『爆炎弾』!」

「「「「『爆炎弾』!!」」」」


 銃口が煌めき一度に込められる最大の魔力を凝縮した弾丸が空間を切り裂きながら完全に油断している敵へと吸い込まれる様に突き進む。


 が、


「上ッ!!なのッ!」

「『風刃』!」


 爆炎弾は標的を貫く前に中空で爆発。誘爆し全ての弾丸が花火を散らした。


「全弾迎撃されました。敵に損耗は確認されず」

「チッ、少し高度を取りすぎたか……」


 とはいえこれ以上高度を下げればそれだけ敵に見つかる可能性も増え、逆に不意打ちをもらうことすすらあり得ただろう事を考えれば、こちらが主導権と制空権を握った状態で開戦出来たことは僥倖か。


「各員散開!対空攻撃手段のある相手を優先して撃破せよ!」

「「「「了解!!」」」」


 敵側に咄嗟に放てる遠距離攻撃持ちが最低2名いる事が判明しているのだ。狙いを分散させる意味でも誘爆を避ける意味でもここは散開すべし。

 私の指示を受けた隊員が遅滞なく広がり、物量でもって圧殺しようとする。

 後衛を狙うのは変わらないが、戦端が開かれた以上敵を自由にさせない様に牽制も必要か。

 ツーマンセルで敵前衛の拘束をし、その間に残りの3人で後衛を蒸発させられればあとはカモ撃ちと変わらんのだが、はてさて……


「アイギス!」

「私はここだぞノーコン!『挑発』!!」


「「「「「っ!」」」」」


 なんだ……これは……

 ふつふつと、どこからともなく怒りが湧いてくる。

 敵の一体のヤギに自然と目が吸い寄せられ、釣られるように銃口も……


「っぁぁ!!」


 視野が狭まり、銃口が震えた瞬間に先ほどとは別種の怒りが私の内側を埋め尽くす。


 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!

 私の精神は、心は全て私の物だ!

 それが例え何者であろうと、それこそ神であろうと犯すことは赦さない!


「くっ、はぁ……」


「あの野郎……バカにしやがって!ぶっ飛ばしてやる!」

「俺らをコケにしたこと、地獄の底で後悔しな!」

「野郎オブクラッシャー!!」


 胸の裡を私の(・・)怒りで埋めなおし、植え付けられた怒りを全て押し潰した私の目の前では部下が悉く狂っていた。

 私ですら一瞬飲み込まれかけた怒りだ。仕方ないのかも知れないが、そんな彼らであろうと使わなければ勝てないのだからしょうがない。


「傾注」


「爆炎弾装填完了!」

「目標!我らをコケにしてくれたヤギ畜生!」

「ハッハー!愉快なジンギスカンにしてやるぜ!」

「隊長!いつでも撃てます!」


 ぽつりと呟く様に漏らした私の言葉に、いつもは小気味良い返事を返してくる隊員共だが、源泉の不明瞭な憤怒と、憎い標的を蜂の巣にする高揚感で瞳を濁らせている奴らは気づく事すらなく私に発砲の指揮を取れと抜かす始末。


 こんな醜態を晒している彼らですら私の選抜を勝ち残った精鋭だと言うのだから情けなさで小さなこの胸が張り裂けそうになる。

 はぁ、後方に帰ったら実践経験の重要性を説いたレポートでも書くことにしよう。


「傾注!」


「た、隊長殿!?」


 今まで下へと向けていた銃を水平に構えると、流石のバカ共も私を無視出来なかったようで怒り一色だった顔色をぎょっと変えるも、未だに冷静さを失ったままで、敵の前でおろおろと狼狽える始末。不甲斐ない隊員共への怒りと共に再訓練の必要性を脳裏に刻みつつ、表面上は冷静沈着にバカ共の頭を一人ずつ照準し、引き金を絞りきるギリギリで銃口を上空に向け、極至近で爆炎弾を炸裂させる。


「けぇえちゅぅぅ!!!」


 ドォオオン!


「「「「!?!?」」」」


 小さな兎のこの身に至近距離での爆風と爆音は些か強烈に過ぎるが、バカどもの目覚ましには丁度良い。


「傾注しろとこの゛白銀゛が告げているのだ!黙って拝聴したまえ!!」

「「「「は……はっ!!」」」」


 やっと正気に戻ったのか動きにキレが戻った隊員が一糸乱れぬ敬礼をしながら返事をする。

 全く世話のやける……私は戦場にお守りをしに来たつもりは無いのだがなぁ。


「各員散開!対空攻撃手段のある相手を優先して撃破せよ!

 三度は言わんぞ?命令無視と抗命で略式処刑されたくなければ直ちに持ち場に付け!」

「「「「了解!!」」」」


 しっかりとライフルを構えなおした隊員共が等間隔に広がり眼下を照準する。

 幸いにもこちらが立て直すまでの間に敵からの攻撃は無かったため容易に態勢を立て直すことができた。


 ……待て。幸いにも……だと?

 敵の精神攻撃をくらって隊列が乱れた隙を突かれなかったのを単なる幸運だと言うのか私は!?


「っ!!全周囲魔力防御全開!!」

「甘いですよ!」


「「「「「な!?」」」」」


 警戒の声が一歩遅く……いや、私のバリアを貫通してきたのを鑑みるに、魔法ではないのだろう。

 隠密系の飛行スキルで私達の背後を取った敵のフクロウの瞳が妖しく光り、直後に全身に言いしれない痺れが走る。


 ちっ、状態異常か。ライフルを落とす程ではないが確実に照準はぶれるし、身体を動かす行動の全てに阻害が効くだろうな。痺れた状態に慣れるまでは意識と肉体での差異に蝕まれるだろう。ここは一度距離を取るべきか。


「姉さま!後はお任せします!」

「任されたの!!」


 しかし、敵もさるもの。この千載一遇のチャンスに全てを決めるつもりのようでフクロウの背から二段ロケットの様に白い影が私達の上へと射出された。


 太陽に重なる様に飛翔したその影の形は私達と同じウサギ。

 故にこそ(・・・・)最大の警戒でもって迎え撃たねばなるまい。


「迎撃用意!絶対に近づかせるな!」

「はっ!……あの、どちらをでありましょうか……?」


「なんだとっ!?」


 このマヌケ共は一体何を言っている!?

 それは確かにマニュアルには内臓魔力の高い敵を優先して警戒するようにとは書かれているとも。

 だが、現状離脱態勢に入りつつあるフクロウと明らかにこちらを打ち落とす意図で宙を舞うウサギのどちらに警戒をするべきなのか一々口にしなければ分からないとでも言うのか!?


「落ちろぉぉぉ!なの!!」

「くっ!バリア全開!」


 ちぃッ!味方の頭の固さに驚愕している間に敵のウサギの接近を許してしまった!

 本当にコイツ等は余計な事しかしない!これが終われば絶対に配置換えをしてもらう事にしよう。

 空から降ってきたウサギは隊員の内の一人のバリアに張り付き、蹴り飛ばしている。どうやらバリアを一撃で破壊するだけの攻撃力は持ち合わせていないようだ。

 これならばまだ対抗する余地はある。


「爆炎弾排莢!通常弾を装填しだい招かれざるお客様にはお帰りいただけ!」

「「「了解!」」」


 蹴られている隊員にはそのまま囮になっていてもらうとしよう。なに、仮に誤射しても通常弾なら即死はすまい。たぶん。


「う……うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃりゃ!!なの!!」


 バリーン!


「なっ!?」


「たぁー!」

「ごふっ!」


 爆炎弾を排夾して通常弾を装填する僅かな間。

 ボルトアクション一回で済む様な刹那にあのウサギは目にも止まらぬ速度で拳と蹴りを乱打し、易々とバリアを粉砕すると当然反応できていない隊員の脳天を大上段から蹴り落とした。

 かろうじて飛行魔法を切って真下へ吹き飛ばされる事で衝撃の一部を逃がす事には成功したようだが、元々航空魔道兎は飛行とバリアに依存していて本体の防御力は無いに等しい。直ぐに回収して回復しなければ地面に叩きつけられた衝撃で死にかねん。

 心情的にはそれでも構わないんだが、不手際で隊員を殺したとなれば今後の出世に響くからな。


「ラビット3と4でラビット5の救助を!ラビット2は私と共ににあの化け物を抑え」

「ティーニャちゃん!お願いなの!」

「『ライトバーン』!ど~ん!」


 しかしそれも間に合わない。

 地上から流れた流星の様に空を駆け上がって来た光球が瞬いたと思った瞬間には爆発し、圧倒的な光量が視界の悉くを白で塗りつぶす。


「ら、ラビット5反応ロスト!」

「っ!反転!退避!高度を取れ!」

「逃がさないの!」

「うわ!やヤメロ!こっちに来るなぁ!!ぐぁぁぁぁ!!」

「ラビット4!?くそっ!目が……!」


 なんだ、なんだこれは……!

 どうして……どうしてここまで全て後手後手にまわらさせられる!?不意打ちをしたのは此方なのだぞ!?

 それが知覚外からの狙撃を的確に迎撃したばがりか、返す刀で防御不能の精神攻撃。

 更には此方が混乱から立て直すのにかかる時間を織り込んでいたとしか思えないタイミングで背後強襲。全般的な行動阻害の状態異常を付与し、その状態に慣れる前に0距離戦を仕掛ける。

 此方が遠距離爆撃様に爆炎弾を装填していたが為に援護に入れなかった僅かな間にラビット5を排除。更には撃墜したラビット5にトドメを差すのと同時に此方の目を潰す光の爆発。


 机上戦術ですら成功率が低すぎて不可能だと言われる程の戦闘芸術と表現しても良い連携と戦場操作を不意遭遇戦でやるなど狂っているとしか思えん。向こうの指揮官はどれだけ優秀なのだ!?


「た、隊長殿、どうしましょう……」

「……撤退しかあるまい。我々は既に負けたのだ」


 こちらも最低二名は落ちているのだ。撤退の判断に文句は言われまい。

 だが、味方の救援に来て、救助すべき対象は全滅。此方も約半数が落ち、成果無しとなると些か以上に私の評価に響くか……

 くっ、最低限敵の一体でも屠りたかったが……


「し、しかし視界が……この状態で飛行するのはあまりにも危険……」

「目が見えなくとも貴様らには耳と魔力探知があるだろうが!その頭に付いてるのは飾りだとでも言うのか!!」


 向こうの指揮官と、兵隊はあんなにも優秀だと言うのに何故私の下にはこんなのしかいないのか……


「戦闘領域から離脱する!各員魔力感知全開!私に続け!遅れた奴は容赦無く置いていくので死ぬ気で付いてこい!」

「「了解!」」


 帰ってきた返事は2つ。やはり半分は落ちたか。

 いや、あの化け物共相手に半分も残ったことを幸運と考えるとしよう。なにせ2枚も盾があれば敵の追撃は私の後ろを飛ぶどちらかに当たるだろうからな。


 とはいえ流れ弾がこちらに飛んでこないとも限らない。私も魔力感知を全開にして周囲の探知を……


「にゃ~~~ん♪」


「「「っ!?!?」」」


 瞬間。世界が裏返った。

 ホワイトアウトした世界で上下が入れ替わり左右が前後になったかと思うと四肢が散らばったかのように感覚が遠くなり、

 無理やり繋ぎ直される。脳内に入り込んだ小人がスプーンで脳みそをほじくりかえすかの様な圧倒的な不快感に体の中身をぶちまけながら意味もない慟哭をあげそうになる。


「こ、高濃度の魔力波多数感知!ジャミングされています!」

「魔力感知を切れぇぇぇ!」


 この為の……この為の目潰しかッッ!!

 視覚を潰すだけなら聴覚と魔力感知がある。空間中の魔力をかきみだすだけなら視覚情報があるからさほど混乱はしない。

 しかし、目を潰してから移動を開始した瞬間に魔力を乱せばどうだ?

 今私は前に進んでいるのか、制止しているのか、上を向いているのか、下を向いているのか、私が正しいと思った事が本当に正しいのか、それすらまやかしなのか。


「はは、ははははは」

「た、隊長?」


「どこまでも……どこまでもやってくれる!!」


 精神的余裕を奪い、体の自由を奪い、目を奪った次は感知能力と平衡感覚。あぁ後は聴覚もか。二重にダブって聞こえる不可思議な歌声は自然と耳に滑り込んできて他の音を拾うのを阻害してくる。

 敵は本気だ。どこまでも本気で私達を詰めにかかっている。

 実際に今の我々はほぼ死に体だ。衝撃力そのものは無くなってはいないが、前後不覚の現状では振り上げた槌を降り下ろす事ができない。


 ……待てよ。降り下ろす先さえ分かればまだ衝撃力を発揮することは出来る……か。


「撤退するぞ」

「はっ!……ご武運を」

「生きて帰ったら隊長の秘蔵のボトルを奢ってくださいね」


 なにやら勘違いした隊員共は分散撤退をするつもりらしいが悪いが私はそのような勝ち目の薄いギャンブルをするつもりは無い。


「ふんっ。撤退とは言ったが……私は逃げるとは一言も言っていないぞ」

「はっ?」

「それはどういう……」


「各員魔道刃構え!……前方へ(・・・)撤退するぞ!」


 白に染まり前後の境の無くなった世界だが、耳に届く忌ま忌ましい歌声の発信源は1つだ。

 そこを叩けば、最低限歌い続けられなく出来れば魔力感知が使えるようになる。そして、状態異常では無い目潰しの効果はそろそろ薄れてきた。突撃が成功にしろ失敗にしろ視界は戻るだろう。それならばまだ逃走確率は上がる。

 時間にすれば10秒にも満たないであろう攻防で全てが決まる。


 完敗か、敗北か。どのみち負けるのならば一糸報いた方がマシだろう。部下の心情的にも私の評価的にも、な。


「突撃ぃ!!」

「「ypaaaaaaaaaa!」」


 神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬る。

 三千世界の鳥を落としても私だけは生き残って見せよう!


「行かせません!」

「なの!」


「ぐはっ!」

「たい、ちょ……」


 背後で聞こえる断末魔も無視して直進する。

 空の敵2名はこれで封じた。残りは……


「『ライトバーン』!」

「ッ!」


 その声が耳に届いた瞬間、慣性も何もかもを無視して無理やり直角に曲がる。

 無茶苦茶な回避軌道を取った代償に全身がバラバラになりそうな程の衝撃がかかるが、実際にバラバラになるのに比べれば何も問題は無い。


「捉……えた!!」


 ここに来てやっと神も私の味方をする気になったらしい。

 今までホワイトアウトするばかりで何も映さなかった私の瞳に色が戻り始め、草原の一角に固まっている人間と妖精とネコと風に揺れる黄金色のしっぽが見えた。


「もらった!」


 もう一度無茶な軌道変更を行い、錐揉みしながらも前へ前へと突き進み驚愕に目を見開く人間の傍に座っているネコへと最大加速した運動エネルギーの全てを乗せた刃が吸い込まれる。

 後はこのまま草原を突っ切って離脱すれば終わり……!?


「なっ……!?」


 予想通りの軌道を描いてネコの首へと叩き込まれた魔道刃は予想外の抵抗の無さでするりとネコの首をすり抜け、両断されたネコは……いや、その場にいた3つの影全てがふわりと空気に溶けるように消えていった。

 と、同時に私が切り裂いた場所からほんの数歩離れた場所がゆらりと揺らめき、今掻き消えた3名の姿が浮かび上がった。


 まったく……どこまでも、どこまでもが手のひらの上か……

 もし魔力感知が使えていれば、あるいは完全に目が見えていれば幻影を見破ることも出来たかも知れない。それ以前に目が見えないままならば幻影を見ることすら無かったはずだ。

 この幻影はこのタイミングでのみ最大の効果を発揮する。つまりは私の行動全てが敵の想定通りだと言うこと。


 敵の指揮官は知謀だとは思っていたが、これではもはや未来予知の類いではないか。


「いらっしゃ~い」

「っ!」


 そしてそんな優れた指揮官が甘い餌の先に罠を用意していない訳がない。

 幻影の向こうで私を待ち構えていたのは最初の精神攻撃以降気配を消していたヤギ。

 私が来るのが分かっていた様に……いや実際分かっていたのだろう。振り上げたられたその蹄はこのまま進めば私の真上に振り落とされる事は間違いない。

 回避しようにも2度の無理な進路変更のせいで錐揉み回転をしている身では難しく、仮に試みたとしてもこの距離では無駄だろう。

 迎撃しようにも、私の全霊を込めた渾身の一撃を振り切った直後だ。振り切ったライフルを引き戻すには余りにも時間が足りない。

 まんまと策にかかった時点で罠を避けられるはずも無いのだ。


 故に


「バリア全開!!」


 勝機は罠を食い破った先にしかない!


「ぶち抜け!!」


 事ここに至っては重しでしかないライフルは捨て、捨てたライフルを蹴って僅かに加速。降り下ろされた蹄の下を潜り、立ちふさがるヤギ事ぶち抜いて空へと退避する。

 幸いにもネコへ叩きつける筈だった運動エネルギーが空振った事でまるまる余っている。倒すことは出来なくとも吹き飛ばすぐらいは出来る。


 ……出来る、筈だった。


「『金剛』!」


 しかし、ヤギは揺るがない。


 まるで世界から動くなと定められているかのように不退転の意思をその体で示すヤギは微塵も揺らぐこと無く私を受け止め続ける。

 速力を、衝撃力を。私に残った最後の力を。このヤギは完全に殺しきって見せた。


「は、ははは」


 ここまでくるともはや笑うしかない。

 負けた。完敗だ。この身に傷1つ付いてなく、魔力も半分程残っているのがなんの慰めにもならない。

 仲間を喪い、武器を失ったこの身でいったい何が出来るというのか。

 いや、仮に出来ることがあったとしても行動に起こす前に先手を打って潰される事だろう。もしくは私の行動そのものを利用されるか。

 どちらにせよ武力での戦闘は私の完全敗北である。

 相手は私に未来予知にすら匹敵しうる知恵と立てた戦略を成せるだけの力を見せた。ならばそれに膝を折った私は恭順の意思を示すべきだろう。


 ……正直、このまま逃げ帰っても私に明るい未来があるとは思えないしな。それならばここで寝返った方が百倍マシだ。


「みんなお疲れ~。いやぁ強敵だったなぁ」


 さぁ、私の未来をかけた第二ラウンド(命乞い)を始めよう。


 なるべく高く買い取って貰わねばな。

もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


どもども。この前幼女をストーキングしつつローアングルから写真を撮りまくり寝室にまで押し入ったら寝言で「もふもふ」って言ってるのを発見して同士だったのか!?と驚いたテトメトです。

あ、もちろんゲームの話だよ?ゲ○ド族の女王はモフラーでした。


いやぁ、それにしてもテトメトは知らなかったけどユウは知謀だったらしいね?今回の戦闘「アイギス!」しか指示出してなかった気がするけど、未来予知にすら匹敵しうる知恵を持っているらしいからきっとテトメトにも分からないような策を複数練ってたんだねー(某)


ここで業務連絡。ちょっと3月30日に向けてSSを書きたいので本編はちと遅れるかも。かもかも。

すまんな。でも、内容は一切決まってないしもしかしたら普通に本編書くかもだけどね。(つまりはいつも通り、と)


では、次回予告!


ユウ達に自分を雇ってくれる様に必死にアピールする白銀ちゃん!

何て言ってるのか分からなくて困惑するも何となく仲間になりたそうな目をしている事には気づいて悩むユウ!

それはともかく草原で遊び始めたボーパル達!

果たして白銀ちゃんの命乞いは叶うのか!?


次回!「ウサギを2匹は要らないかなぁ」


お楽しみに!











(いやぁ、今回は文句の付けようも無い完璧な後書きだったわ~。


挨拶➡本編に対するコメント➡業務連絡➡次回予告


完璧か!?これはもう後書きをマスターしたと言っても過言ではあるまい)

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