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163匹目 姉弟子

 

「……ではさっそくこの”超石化解除薬”を姉さんに使いましょう」

「落とすなよ?絶対に落とすなよ!!絶対だからね!」


「……落としませんし、落としたぐらいで壊れるビンじゃありません。不吉な事言わないでください」

「いや、お約束かなって。なぁ?」

「~~~!」


 俺が顔を向けると、ティーニャが元気良く両手を挙げて答えてくれた。

 ティーニャなら分かってくれると思っていたぜ。何にも考えずに返事だけしている可能性もあるけども。


「……はぁ。ユウさん達の相手をしていると話が進まないので姉さんの治療を優先します」

「言い方!本当の事でも言い方があると思うよ!」

「~~~!~~♪」


 ティーニャの万歳をしている手を握って抗議のダンスを躍らせながら文句を言ったのにフィアちゃんにさらっと無視された。寂しい。

 寂しいからティーニャに腹踊りさせて気を紛らわせよう。ポンポコポンポコ。


「……お願いします……」


 俺が順番待ちをしていたボーパルの両手をにぎにぎして、宙吊りにしたボーパルをプラプラ揺らして遊んでいる間に椅子に座って石化しているエルの背後にまわったフィアちゃんが、虹色に輝くビンの蓋を開けてエルの頭から垂らした。


 ……あれ石化から戻っても頭ベットベトだろうなぁ……すぐに乾くだろうけど嫌だなぁ……


「う~ん……はっ!死ぬかと思ったデス!きゃっ、頭がベトベトするデスよ!?」


「あ、復活した」

「きゅい!」


 異次元の色さ……もとい超石化解除薬を頭から滴らせるエルが石化が解除された途端に椅子から飛び跳ねてわたわたしてる。

 薬の効果はまったく心配していなかったけど、無事に戻れてよかったよかった。


「……姉さん……無事でよかったです」

「おぅ!フィアのおかげで助かったのデス!半年石像のまま放置されていたぐらい心細かったのデス!」

「ちょっと何言ってるか分からないですね……」


 エルが石化していたのは精々2日ぐらいだし、半年も時間は空いてないはず。やっぱ1人で石化した状態で放置されるのがそれだけしんどいって事かね?いや、そもそも石化中は意識はあるんだろうか……

 うーん。ゲーム的にはありそうな気もするけど、無さそうな気もするな。

 まぁどっちでもいいっちゃいいんだけどね。


「ユウも助かったのデス!ユウがユニコーンの角を取ってきてくれたのデスよね?ありがとうデス!」

「ふふん。ところがビックリ。なんとユニコーンとの戦いにはフィアちゃんも付いてきたんだよね。ね?フィアちゃん」

「……本当に付いて行っただけです。肝心のユニコーンとの戦いではフィアは何にもしていません……」


 それを言ったら俺も何もしてないんだが……


「フィア……エルの為にそこまで……!」


 エルが瞳をうるうるさせてフィアを見ているから空気を読んで黙っていよう。

 みんなも”しー”な。


「?きゅい?」

「~~♪」

「……んにゃ」

「ホー!」


 口の前に人差し指を立てて静かにしててのポーズをしたのに、ボーパルには伝わらず、テイーニャには立てた人差し指の先端を掴まれ、ノゾミには無視してお昼寝され、ミズキは了解の返事を大きな声でされた。

 なんだこのマイペースなパーティ。全く、一体誰に似たんだか……


「……べ、別に姉さんが心配でユウさんに付いていった訳じゃ無いです。ね、姉さんが石化してしまったのはフィアの責任でもあるわけで……その、義務感といいますか……」

「あー、もう!フィアかわいすぎデス!!」


「……ちょっ、抱きつかないでください。薬品臭いです」

「臭いのはエルの頭に二度も薬をかけたフィアの所為デス!責任持って大人しくスリスリされるデス!!」


 エルに抱きつかれて頬ずりされているフィアが嫌そうに眉根を寄せてエルの顔を両手で押し退けようとしながら俺に必死にアイコンタクトを送ってくる。


 ……うん。仲よき事は美しきかな。


「……ユウさんの裏切り者」

「いや、そんな嬉しそうな顔で言われてもねぇ」


 フィアちゃんは嫌そうに眉を顰めながらも頬はほんのり赤く染まり口元には笑みが浮かんでいる。

 フィアちゃんは何だかんだエルを心配していたからな~。エルの顔を押し退ける仕草をしつつも無理やり引き剥がしてもいないし。フィアちゃんの筋力なら余裕でしょ。エルがトゲトゲ鉄球よりも重いとは思えないしね。


「……むぅ」

「ふぇへへ~。フィアはかわいいデスね~。もっとお姉ちゃんに甘えてもいいんデスよ~。”リピート・アフター・エル”デス!『お姉ちゃん大好き』!」


「……ちょっと調子に乗りすぎです」

「ぷへっ!?」

「おぉ……」

「きゅい!」


 この期に乗じて自分の更なる欲望を満たそうとしたエルの顔をアイアンクローで掴んだフィアちゃんがそのまま右手一本でエルを宙吊りにして背負い投げしてる。

 あまりに鮮やかな手際に思わず歓声が洩れたぜ……ボーパルもポフポフと拍手してる。ボーパルにアイアンクローはできないからなぁ……顔面がもふもふするだけで終わっちゃう。なにそれ羨ましい。


 ……うん。現実逃避しようとしてたけど無理だわ。なんか冒険から帰ってきてからフィアちゃんの技がレベルアップしてるね?

 ま、まぁボス戦とかも経験したしレベルが上がって筋力が上がっていてもおかしくは……無いのかなぁ……?

 でも錬金術士なのにそんなに筋力を上げる必要性は……あ、姉のセクハラ回避の為か。納得。


「ふぁ~。流石に今日は疲れたな。んじゃ、無事にエルも戻ったから俺達はもう帰るね。お休み」

「きゅ~い~!」

「~~~!」


 安心したからか、一段落ついたからか急に眠気が。昨日から連続プレイ時間長いからなぁ……リアルタイムゲームで寝オチとか洒落にならんしそろそろ休憩しますあね。


「……あ、待ってください。これ持っていってください」


 アトリエを出たらすぐにログアウトしようかな~と考えていると俺の着物の背中の部分をちょんちょんとフィアちゃんに引っ張られて止められた。

 どうでもいいけどフィアちゃんその止め方好きだよね。かわいいからいいけど。


「この禍々しい虹色は……」

「……はい。超石化解除薬です。見た目は毒々しいですが効果はバツグンです」


【アイテム:回復アイテム】超石化解除薬 レア度7

 錬金術で作成されたアイテム

 使用すると状態異常”石化”及び”超石化”を即座に解除する


 普通の石化にも効くんだね。しかも”即座”に解除とな。毒消しとか麻痺消しにはこんな注釈は無かった気がするんだよなぁ……まぁ、もらえる物は貰っておこう。石化とか怖いし。


「ん~、エルも何かお礼をしたいデスが……エルの作ったアイテムで必要なのはユウに売ってるデスから、後エルがユウにあげれるものは……はっ!いいこと思いついたデス!」


 ……なんだろう。嫌な予感がする。


「……なんでしょう。嫌な予感がします」


 フィアちゃん。お前もか……


「ユウにも”錬金術”を教えてあげるデス!この町で錬金術のアトリエはエル達の所だけなのでレアなのデス!」


 《スキル:錬金術を取得しました》

 《Cクエスト『錬金少女と超石化薬』を達成しました》

 《クエスト『錬金少女にウサミミを』を達成しました》

 《スキルポイントを2点獲得しました。SP4→6》


 おお、SPも手に入った。やったぜ。


「……ちょ、ちょっと待ってください。つまりユウさんもフィアと一緒に錬金術の勉強をするって事ですか……?」

「そうデス!でも、ユウは忙しいかもデスから好きなときだけ来てくれればいいデス!」


「……でも、えっと、あの……」


 フィアちゃんは混乱している!

 俺は錬金術を習うって言ってないんだけどなぁ……ただでさえもあれもこれもやりたいし流石に生産までやってる暇はパラメーター的にも無いかなぁ……


「ユウがエルの弟子になったらフィアは姉弟子デス!フィアお姉ちゃんデス!」

「……フィア……おねえ……ちゃん……!?」


 あ、何かがフィアちゃんに刺さったエフェクトが見えた。

 なんかチラチラこっち見てる。あれは落ちたな。


「……しょ、しょうがないですね……ユウさんがどうしてもって言うならお姉ちゃんになってあげます」

「アッハイ。お願いします……」


 フィアちゃんの期待に満ちたキラキラの瞳には勝てなかったよ……フィアちゃんチョロ過ぎる……そして俺もチョロイ。改める気は無い!


「んじゃ、今度暇が出来たら教わりにくるね。今日は眠いから帰るけど。お休み2人共」

「分かったデス!お休みデス!」


 話しながら寝オチする程じゃないけど眠気を意識したら更に眠くなってきた。本格的に落ちる前に帰ろっと。


「……お姉ちゃん」


 しかし周りこまれた!

 何?フィアちゃんは俺がアトリエから出ようとしたら止めなきゃダメな使命でもあるの?寂しんぼなの?ういやつめ。


「えっと……フィアちゃん?俺帰りたいんだけど……」

「……お姉ちゃんです」


「……」

「……『お姉ちゃん』です」


「……お休み、フィアお姉ちゃん」

「……!はい。お休みです」


 ジト目上目使いの圧力に負けて、お姉ちゃんと呼んだら嬉しそうにニマニマ微笑みながら道を開けてくれた。

 そんなにお姉ちゃん呼びがいいのかねぇ……俺の方が年上だろうからお姉ちゃん呼びはなぁ……まぁ、いいっちゃいいんだけどさ。

 お姉ちゃん呼びをしてニマニマ嬉しそうなフィアちゃんを観察するか、あえてお姉ちゃん呼びをしないで物欲しそうな顔をしているフィアちゃんを観察するかの二択だな。

 どっちにしろ損しなさそうな気がしてきたからいっか。


 んじゃ、今日はここまでだな。明日は第四層の探検と闘技大会に向けてのレベル上げだな。がんばろー!


もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


ユウの方が年上と言っていますが、見た目年齢的には・・・


やっと石化イベントが一区切り付いたのでサクッとレベ上げして闘技大会へGOだ!

パーティ戦・・・召喚モンスターがフルパーティ・・・うわっ、勝てる気がしねーや。がんばれ掲示板民。いい対策が思いつくかはお前等の雑談にかかってる。

適当に書いてると意外といい案が出てきたりしますからね。という訳で次回は掲示板回です。やったね。


それではみなさま良いお年を!(あと2時間しかないけど)

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