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153匹目 違和感

本日2話目です。

ちょっと短いです。ゆるちて。

 

「変だな……」

「……?何か気づいたんですか?」

「コーン?」


 落葉を避け、リンゴだけを狙い撃ちする作業にも慣れてきた頃。俺は1つの違和感に気づいていた。

 あれからエルダートレントの攻撃手段が増えていないからこそ、迎撃に慣れて周りを見渡す余裕が出てきたんだが、明らかにおかしな所がある。それは……


「ボーパルが何処にいるか分からない」

「それは……ボーパルちゃんがやられてしまったって事でしょうか……」


「いや、それは無いだろう。多分だけど」


 俺ごときが目で見て、迎撃が間に合う程度の攻撃でボーパルがやられるとはとても思えないんだよな。

 ボーパルなら自由落下してくるぶつかったら爆発するリンゴを足でそっと受け止めてボスに蹴り返したり、蹴りの風圧で落葉を全て無効化したり出来そうだしな。

 そしてボーパルがやられていないとするならば、ボーパルが何処で戦っているのか索敵持ち(フィアちゃん)にも分からないのはおかしい。

 だってボーパルは主武器が足なのに攻撃すると派手な音がするからな。


 つまり纏めると、ボーパルは生きているのに、攻撃をせずに俺達の所に来てもいないという事になる。根っこで不意打ちをされかけただけで、心配で引っ付き虫になるボーパルが、だ。

 これは明らかに変だ。

 攻撃しないだけならまだ分かる。ボーパルもボスのHPが減ると攻撃手段が増えるのに気づいていて、俺たちが物量に押し潰されないようにするためだろう。

 でも、どのみちどこにいても攻撃が当たるんだから、余力があるうちにボスのHPを削りきった方が……


 ……いや、待て。こと戦闘に置いて俺とボーパルの意見ならどっちを信じる?ボーパルだろう?俺の考えが間違いであるという前提で考え、発想を逆転させろ!


 ボーパルが、俺達が物量に押し潰されるのを危惧して攻撃をしていないという事は、物量に(・・・)押し潰されない(・・・・・・・)方法(・・)あるいは(・・・・)場所がある(・・・・・)と言う事だ。


 そして今ボーパルの姿が見えないということはボーパルはもう、その安全地帯のような場所に居るという事。


「どこだ……?」

「……ユウさん?」


 ボーパルが行けるところで考えてたら埒が明かない。

 ボーパルは地上も空中も駆ける事ができるからな。その移動範囲はボスエリアのほぼ全域だろう。

 となると、やはり消去法で消していくのが確実か。あり得ない可能性を消去していけば、最後に残るのは、ひとつ。あり得たかもしれない可能性だけだからな。


 まず、地上より下はダメだ。根の攻撃範囲だ。なにも足場が無い空中もダメ。その場に留まる事は出来ない。

 となれば、残るはエルダートレント自身だ。洞とかに居るのか……?なんか消化されそうで嫌だな。


 というか、さっきから大樹を見上げてボーパルを探しているんだが、それっぽい物は見つからないしなぁ……

 まぁ、エルダートレントがかなりデカイから全体を確実に見えているとは言えないが、光合成の効率の問題からか葉の付いた大きな枝は最上部に密集していて、幹の途中から生えてるのは攻撃用の細いムチか触手のような枝だけだから見通しはそんなに悪くない。

 というか、洞に隠れていてもあの細い枝には襲われるんじゃないか?あの枝は切っても直ぐに元通りになるからなぁ。

 落下するだけの葉っぱや、リンゴ。地面から数メートルの射程しかない根と違い、ある程度自在に動く細い枝から逃げるならば、枝が届かない距離まで離れるしかない。エルダートレントにしがみ付きながら枝全てから逃れられるところなんて……


「あ、……」


 あるじゃないか。1つだけ。

 俺の意識がそこへ向いた瞬間。まるで俺の考えを肯定するかのように、ヒラヒラと舞い落ちる落葉の隙間から、バチバチと輝く光が見えた。

 電気……いや、雷だな。ミズキもちゃっかり生きてるみたいで何よりだ。


 場所が分かれば後は手段だが……これは心当たりがある。だが、ぶっつけ本番の1発勝負になるのは避けられないな。

 まぁ、このまま逃げ回っていてもいずれエルダートレントの攻撃が当たっておしまいだ。


 一か八か。大いに結構!可能性があるなら、それに賭けるのも悪くは無い。


 ……ちょっと極限状態でテンションがハイになっている自覚はある。だが、これしか手が無い以上悲観するよりは楽観しているぐらいで丁度いいのかもな。


「フィアちゃん!イナリ!作戦を思いついた!俺が詠唱する時間を稼いでくれ!」

「……良く分かりませんが分かりました。機動力が落ちないように鉄球は使えないので、そんなに長くは持ちませんよ」

「コーーン!!」


 いつやられてもおかしくない状況だ。直ぐにでも詠唱に入りたかった俺の雑なお願いに、だが、応じてくれた声は暖かく、力強い。

 フィアちゃんは全方位への警戒とイナリの誘導を続けながら、両手に消耗品である爆弾を次々取り出しポイポイと上空へ放り投げて俺の変わりに弾幕の相殺を。

 イナリも、エルダートレントの攻撃を的確に避けつつ、防御に使っていた狐火の一部を迎撃に回してくれた。


 数が限られる爆弾での迎撃も、神経を磨り減らす回避と平行での攻撃もどちらも長くは持たないだろう。

 だが、問題ない。俺の考えが正しければこの詠唱で全てが決まる。


 俺たちが勝つか、お前が勝つか。最後の勝負といこうや、エルダートレントさんよ!!






 ―――― エルダートレントのHP 残り3割 ――――






もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


次回も早めに上げたいなぁ・・・次でエルダートレント倒せそうだし。多分。きっと。全ては最終兵器ボーパルにかかっている・・・

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