152匹目 物量攻撃
本日1話目です。
・・・こう書いておけば今日中にもう1話上げれそうな気がする・・・
「ふぉおおおお!来てる来てる来てるーーー!!」
「……くっ、イナリちゃん右です……!」
「コーン!!」
フィアちゃんと一緒にイナリに跨り優雅にお散歩……なんてしてる余裕は一切無く、降り注ぐ弾幕に狐火をぶつけて相殺する作業をひたすらに続けている。
枝によるムチ攻撃に、根による地中からの串刺し攻撃が加わったものの、フィアちゃんのナビを元にイナリが駆け続ければまず当たらないので余裕を持ってボーパル達の応援をしていたところ、空から突然俺の倍ほどの大きさがあるリンゴが降ってきて、地面に当たった瞬間に爆発した。
直撃したらペチャンコになるし、爆風に煽られて足を止めたら串刺しになるしで大袈裟な回避を要求されるが、大袈裟に回避するか、打ち落とせば問題は無いのでMPを節約しつつ迎撃していたんだが、次は落葉が剣の様に尖って振ってきた。
リンゴに比べれば落下速度は遅いものの、それ故にリンゴの落下を邪魔することなく。落葉の一枚一枚がリンゴと同じく見上げるほど大きく、先端から地面に刺さってそのまま残り続けるので邪魔でしょうがない。
葉っぱの横のギザギザしたところ以外は攻撃判定は無いみたいなので、前か後ろから押せば簡単に倒れるんだが、足を止めると根っこが刺さりに来るし、枝のムチも健在だ。
枝に対処しようとすると上からリンゴが降ってくるし、リンゴに対処しようとすると根っこが突き刺しにくるし、根っこに対処しようとすると、落葉が道を塞いでくる。
今は俺がリンゴの爆発を利用して落ち葉を吹き飛ばして、フィアちゃんが根っこの攻撃や地面に突き刺さる巨大な落ち葉の所為で死角になっている所から来る攻撃を察知、迎撃。イナリが狐火を体の近くに纏わせて防御と、走行って感じに役割分担して何とか凌いでいるが、敵の物量が多すぎてこのままじゃジリ貧だな。
どうもこのボスは段階的に攻撃手段が増えていくみたいなんだよな。
攻撃手段が増える条件が一定ダメージなのか、それとも時間経過なのか、あるいはそれ以外の何かなのかは分からんが、更に攻撃手段が増える可能性が高いとか絶望しか無いんだけど。
このボスの攻略には安全地帯への退避が必須だと思うんだがどうしたもんか……遥か上空に見える青々と茂ったボスの枝葉はボスエリア全体を覆う様に展開しているからエリア内の何処に居ても葉っぱとリンゴは振ってくるし、ドームみたいな防壁を作っても木の根は地面を貫いて生えてくるから意味無し。
……うん。これ詰んでね?一旦逃げようかな……大樹と反対へ走ればボスエリアから抜ける事事態は簡単だと思うんだよね。
一応まだ無傷だし、今撤退したらボーパルとミズキとアイギスを置いて行く事になるから最後の手段にしたいんだが……というか3匹ともまだ生きてるよね?
アイギスは……何故か落葉とかの攻撃が集中している一角があるからあそこらへんのどっかに埋まってるんだろう。
ボーパルはボーパルだから生きてそうだけど、ミズキはどうかな……落葉とリンゴと枝の3重攻撃に晒されてやられてなきゃいいけど……
「よし、決めた。逃げよう。無理。やってらんない。コイツを倒す仕込みをするにしても攻撃が少ない最初の頃にやらなきゃダメだろ」
「……そうですね。一旦仕切りなおした方が良いとフィアも思います」
「コーン!」
問題はアイギスを救出に行くかどうかなんだよな……
死んだら24時間は召喚できないし、ボス戦にしろザコ戦にしろアイギスが居ないのはキツイから出来れば回収していきたいんだが……攻撃が集中している所に突っ込んでやられたら元も子も無いしな……でも、俺達は死んでも金が減るだけで復活できるけど、フィアちゃんを危険に晒す訳には……あ、そっか。
「イナリ!一旦エリアの境界へ向かってくれ!そこでフィアちゃんを先に外に出してからアイギスを拾いに行くぞ!」
「コーン!!」
「……!ユウさん!」
フィアちゃんが目をまん丸に見開いて俺を振り返った。確かに根っこの攻撃の回避はフィアちゃん任せだったしな。ここでフィアちゃんだけ降ろすのは愚策なのかもな。
でもなぁ……自己満足だってことは分かってるけど、フィアちゃんを激戦区には連れて行きたくないんだよなぁ……
「大丈夫。ただアイギスを拾ってくるだけなんだ。直ぐに帰ってくるさ。仮に帰って来れなくても町からダッシュで向かうから、いい子で待っててね?」
挑戦する前から失敗したときの事を語るとか、失敗フラグにしか聞こえないんだが大丈夫だよね?
というか、仮に俺が死んだ場合ボーパル達のペナルティはどうなるんだろうか……単に召喚が解除されるだけなら直ぐに召喚しなおせばいいだけだけど、24時間の制限も付くんだったらティーニャとノゾミを抱えてダッシュしなきゃだな。
「……むぅ。約束です。絶対すぐに迎えに来てください」
「おぅ。約束だ」
「コーン!」
俺とフィアちゃんが互いに小指を絡め、ゆびきりをしたのと殆ど同時にボスエリアの境界線についた。ボスエリアから一歩出れば樹海になってるから判断しやすいな。
「さぁ、フィアちゃん早く!」
「……はい。ユウさん達もどうかご無事で」
「コン!」
境界線に沿うように走りながら少しだけ減速したイナリからヒラリとフィアちゃんが飛び降りる。
多少速度を落としたとはいえ、着地に失敗したら軽く骨折できそうな速度ではあるのだが、そこは器用値特化のおかげで怪我する筈が無いと信じているからか、勢い良くイナリから飛び降りたフィアちゃんは……ゴスッ!!といい音を立てて見えない壁にぶつかり、跳ね返って俺の腕の中に戻ってきた。
「……」
「……」
「……ユウさん」
「……はい」
「……出られませんでした」
「……そ、そうみたいだね」
……今更だが、俺が最初にラースベアーと戦った時も逃げようとして見えない壁にぶつかってた気がする……
今の今まで完全に忘れてたけど。
「……痛かった、です」
「……う、うん。いい音してたもん」
ゴスッ!っていってたからね。ゴスッッ!!って。しかも完全不意打ちだったから痛み倍増だよね。俺だったらのたうち回ってるかも……
「……知って、ました、ね?」
「さぁ!逃げられない以上あのボスを倒すか、俺達が全滅するかしかここから出られる方法がないぞ!デッド・オア・アライブ!オール・オア・ナッシング!いやぁ~ドキドキするな!!なぁ!イナリ!!」
「こ、コ~ン……」
さぁ、急いでボスの攻略法を考えるぞ!他の事を一切考えられないぐらい頭を絞るぞ!!俺の腕の中で瞳を怪しく光らせるフィアちゃんなんて全く見えないぞ!!
「……はぁ、全く。困ったユウさんです……」
言葉とは裏腹にどこか優しい表情と声音で呟かれたその言葉は、自らのゆとりを搾り取るように、リンゴの迎撃と攻略法の模索に専念するユウの耳へは届かずに爆風に煽られて消えていった。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
いやぁ今回は稀に見るシリアスだったなぁ~
あ、次回は日付が変わる頃に上げます。・・・上げるよ?本当だよ?(震え声)