148匹目 ユウ魅了中
今回はユウ以外の視点です。お気をつけください。
~~~フィア視点~~~
「・・・きゃっ!」
子ども扱いしないでくださいといつも言っているのに、ボーパルちゃん達にするようにフィアの頭を優しくなでなでしていたユウさんが、フィアのお尻を支えていた手を急に離したので、フィアは尻餅をついてしまいました。
痛くはなかったですが・・・フィアは、あのユウさんがフィアを落っことす程怒らせるような事をしてしまったのでしょうか。
ユウさんがフィアにかわいいと言ってくれるのをからかわれていると言ったからでしょうか。
それともフィアの謝罪がしつこかったからでしょうか。
もしかしたらフィアが重たかったのかもしれません。
でもユウさんは優しいから。
だからフィアには何も言わずに、限界まで頑張って。フィアを落としてしまったのかもしれません。
フィアはユウさんに無理をさせていたのでしょうか。なら謝らないと・・・いえ、違いますね。ごめんなさいは禁止されてるんでした。
フィアが言わなきゃいけないのは、
「・・・あ、ありが―――
「きゅいい!!」
「ホー!」
「メェエエエエ!!」
「~~~!!」
「―――!」
違います。これはそんな優しい理由じゃないです。
今起きているのは間違い無く戦闘です。
「・・・ユウさん?ユウさん!」
返事はありません。このクエスト中ずっと傍に居てくれたユウさんを感じられなくて、不意に目を開けそうになりますが、ぎゅっと堪えます。
戦闘中なら敵にアレがいるかもしれません。アレが居た場合、フィアは目を開けるわけにはいきません。もう、敵に捕らわれるのは嫌です。
でも、このままだとユウさんが・・・
「・・・フィアが・・・なんとかしないと・・・」
フィアが立ち上がると、フィアへとドングリが飛んでくる気配がします。
薄っすらと分かるその気配を手に持った杖で叩き落しますが、極近距離の様子しか探れないフィアの探知では全てを叩き落すことはできず、いくつかのドングリがフィアに当たり、フィアのHPをドンドン削っていきます。
「・・・ボーパルちゃんなら・・・ボーパルちゃんならもっと上手くやれます」
フィアのしている見よう見まねの擬似的な気配察知はボーパルちゃんの空間察知スキルを真似したものでしかありません。
目を瞑っていても周りの様子を探りたいと思っていたら、気付いたら習得できてました。
少しずつ魔力を消費するこのスキルに、フィアのありったけの魔力を注ぎ込みます。
ゆっくりと、ですが確実に、フィアの知覚範囲が広がっていきます。
はっきりと、見るまでもなく、フィアの魔力が無くなっていきます。
この状態で居られるのはほんの僅かでしょう。
その間にケリをつけます!
「・・・っ!」
魔力制御に集中していたせいで、フィアのHPも残り少なくなってきました。ボーパルちゃん達がどんどん倒してくれていますが、ボーパルちゃんが倒すのと同じぐらいのペースで新しいどんぐリスさんがやってくるのできりがありません。
ですが、どんぐリスさんが放つどんぐりは既にフィアに見えています。
「・・・っふ!」
フィアは左手に持ち替えた杖で飛んでくるドングリを全て打ち落とします。
見えていれば、この程度造作も無いです。
「・・・ユウさん!」
そして、右手に装備したトゲトゲ鉄球を横なぎに振り、ふらふらと何かに取り付かれたように歩く人型の魔力を鎖で絡めとって引き寄せます。ついでにアイギスちゃんも。
「ゴッホ!?」
「メェ!?」
うまく、2人ともを引き寄せることが出来ました。たまたま鎖の軌道上に障害物が無くてよかったです。
さぁ、ここからは耐久戦です。手に伝わる感覚を頼りにアイギスちゃんの鎖を解き、ユウさんは簀巻きのままフィアの足元に転がしておきます。
ボーパルちゃん達が敵を全て倒すまで、アイギスちゃんとフィアでユウさんを守り切れればフィア達の勝ち。ユウさんがやられたらボーパルちゃん達も全員やられちゃうのでフィア達の負けです。
フィアの魔力はもうすっからかんです。通常の魔力探知でさえも、あとどれだけ使えるか分かりません。
HPは残り僅かですが、薬を使う隙を与えてはくれないでしょう。
絶対絶命です。次の瞬間にはフィアはやられているかもしれません。
でも・・・フィアは負けません!
アトリエで姉さんが待ってるんです。フィアはここで倒れるわけにはいかないのです!
~~~ティーニャ視点~~~
大変大変!パパが敵の虜になっちゃった!
むむぅ。ボクやボーパルお姉ちゃんじゃ満足できずに、精霊様や、フィアちゃんにまで手を出したと思ったら今度は敵のちょうちょにまで!?
って、そういえば家にも敵だった魔人の子が居たっけ。今更かぁ。
とりあえず詠唱してよっと。
ん~、パパに貰った精霊の雫の効果で、ボクには魅了が効きにくいし、あのちょうちょをしめやかに爆発四散させるべきなのかな?
だって、パパは浮気してるし、アイギスもなんか見当違いの方向向いてるし、ミズキお姉ちゃんはちょうちょが見れないし、ボーパルお姉ちゃんはフィアちゃんを助けるためにどんぐリスを倒してるんだもん。たぶん。
たぶんっていうのは、ボーパルお姉ちゃんの動きが速すぎてボクの目じゃなんか白と赤っぽい影にしか見えないんだよね。もうちょっと敏捷を上げれば見えるようになるかな?今度パパにお願いしてみよっと。
それで、最後はフィアちゃんなんだけど。なんか瞑想してるね。敵に囲まれた真ん中で。棒立ちしながら。もしかしたらお昼寝してるのかも。お昼寝きもち~よね~。
で、フィアちゃんは一応手に持った杖でドングリのいくつかを打ち落としてるけど、攻撃のほとんどはボーパルお姉ちゃんが打ち落としてるみたいで、空中でいきなり砕け散ってる。ついでにちょこちょこと回復もしてるみたい。
攻撃と防御と回復を一手に担うだなんて流石ボーパルお姉ちゃん!ガンバ!
それに比べて本職の壁役は・・・
これはおしおきが必要だよね!次にアイギスがお昼寝してた時に耳にドングリいれてやろ~っと。にししっ。
っと、詠唱が終わったね。もういつでも攻撃できるんだけど・・・
パパが邪魔!パパ退いて!そいつ殺せない!
くぅ。アイギスなら諸共に吹き飛ばすんだけど、パパを吹き飛ばしたら本当に吹き飛ぶからねぇ・・・
全力全開でぶっ飛ばしても大丈夫っていう信頼が無いと味方諸共には攻撃できないからね。そう!あれは愛のムチなんだよ!愛のムチなら仕方ないよね!
あ、フィアちゃんがジャラジャラでパパとアイギスを攫っていった。
じゃあドッカーン!
お~い。ミズキお姉ちゃ~ん。ちょうちょは全部倒したよ~!
「よくやりました。あとは私達に任せて、ティーニャは休んでなさい」
「なの!あたちはリスの残党を狩るの!フィアちゃんの守りはアイギスに任せるの!」
「・・・めんどい・・・けど、わかった・・・見えるなら通さない」
ちょうちょを倒して、周りが見えるようになったアイギスが全部のリスの攻撃を引き付けている間に、攻撃に回ったボーパルお姉ちゃんと、ミズキお姉ちゃんが一瞬でリスを全滅してくれた。
ボク達の勝ちだね!やったぁ!
「・・・フィアの・・・覚悟と・・・決意は・・・いったい・・・」
「モゴ!?フゴゥ!!」
フィアちゃんは両手で杖を構えて、何かブツブツ言ってるけど、とりあえず地面でピョンピョンしているじゃらじゃらで簀巻きにされて放置されてるパパを助けたほうがいいんじゃないかな?
・・・はっ!そうか!つまりは今の内にパパにイタズラをしろってことだね!
もぅ~。フィアちゃんにそこまで言われたら仕方ないなぁ~。嫌だけどぉ~。パパにイタズラしないとねぇ~。
ん~、簀巻きにされていない、パパの頭をくりくりヘアーにするのと、身動きの取れないパパの足の裏をこちょこちょするのと、どっちからやろっかなぁ~。にししっ。た~のしっ♪
~~~ノゾミ視点~~~
うにゅぅ。にゃむにゃむ。ごろにゃ~。
ひにゃたぼっこはきもちぃにゃぁ。新しいお家の屋根の上は最高のひにゃたぼっこスポットだにゃぁ。
ばっしゃぁあああああああん!!
「うっきゃぁ~~~~♪」
「~~~~~~~~!!」
・・・でも、やかましいのが玉に傷だにゃぁ。妖精達の親玉だけあって、リーン様は無尽蔵の体力があるんじゃないかと思うほど、騒がしいにゃぁ。
こんなにうるさいと、お昼寝もできないにゃぁ。仕方ないにゃぁ。ベストスポットは諦めて静かな窓際でお昼寝することにするにゃぁ。
「あ~そびましょ!なのじゃ!」
「~~~~!!」
「・・・」
ノゾミはクールに去るにゃ。
コンコンコン
「にゃぁ」
「ノゾミちゃん?どうしたの?」
「ノ~ゾ~ミ~ちゃん!あ~そ~び~ま~しょ~~!なのじゃ!」
「~~~~!!」
「あそぼー!!」
マズイにゃイナリが陥落したにゃ。しかも、ドスドスと階段を駆け上がってくる足音まで聞こえてくるにゃ。もう。猶予はないにゃ。
「あっ、ノゾミちゃん?」
ウィアナがちょっとだけ開けてくれた扉の隙間を通って部屋の中に入るにゃ。
お邪魔するにゃあ。
部屋の中に入ったらひょいと、飛んで、日の当たる窓辺に乗って丸くなるにゃ。
窓越しだから屋根の上に居るときよりも日差しが弱いけど、その分優しい日差しだにゃ。
この部屋はご主人様のおかげで外の音は聞こえないから、ゆっくりとお昼寝できるにゃ。
・・・むぅ・・・おやすみ・・・にゃあ・・・
暖かな日差しと、背中を撫でる優しい手の感覚を感じながら、ゆっくりと夢に落ちていったのにゃぁ・・・
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
という訳で、予定していたフィアちゃん視点と、要望のあったティーニャ視点とノゾミ視点でした。
ティーニャはともかくノゾミ視点はどこから出てきたし・・・




