139匹目 フィアニウム
逆裁を買ったのでしばらく更新が遅れると思います。
まぁ、次の1話は書き終わってるからあげるけどね。
「よしよし。こわ~いクマさんはボーパルがやっつけてくれたからね~。もう大丈夫だよ~」
クマが、出現と同時に放った咆哮の影響を唯一受けたフィアちゃんが、一番近くに居た俺に飛びついてきてプルプルと震えてる。なにこのかわいい小動物。癒されるわ~
でも、役得だし戦力差が余裕だったから良かったけど。近くの味方に縋り付いて行動を阻害するって、なにげに嫌な状態異常だよな。状況によっては全力で逃亡されるよりも厄介かもしれん。これは恐怖耐性も取っておくべきか?
つまりはクマループですね。分かります。まっ、今はSPに余裕がないからまた今度ね。
「……ほんとぅ?……こわいのいなぃ?……だいじょぅぶ?」
俺の服の胸元を両手で握って縋り付きながらの涙目上目遣い。か・ら・の。舌ったらずな発音攻撃!効果は抜群だ!あざとい!あざとすぎる!だがそれがいい!
「ほんとうだよ~。なんかもう、ミンチよりひでぇやって感じになってるよ~。仮にもう一匹居てもボーパルとアイギスが居るかぎり、フィアちゃんには指一本触らせないからね~」
「……よかったぁ。怖かったよぅ……
……ハッ!あ、あれ?え、え~とですね……い、今のは恐怖状態になっていたからであって近くに居る人なら誰でも良かったんです!……べ、別に。あなたが特別ってわけじゃないですからね!勘違いしないでください!」
俺がフィアちゃんの頭をなでなでして宥めてると、恐怖の効果が切れたのかフィアちゃんの瞳から怯えの色が消えて、次の瞬間には羞恥が宿った。
白い頬をピンクに染めたフィアちゃんが、わたわたと取り乱して唐突にツンデレ発言をしたり、あぅあぅと言葉にならない単語を呟いたりしているのをニヤニヤ見つめつつも、なでなでは止めない。今日もフィアちゃんはかわえぇな~。特に照れて頬を染めてる姿がグッド!
……どうしよう。フィアちゃんを照れるさせるのが楽しすぎる。俺は自分でも気づかなかったけどSなのかも。いやいや、これは同じ立場になったら全員が感じるはずだ!断じて俺はSでは無い!はず!フィアちゃんに「……いぢめる?」って聞かれたらダメかも知れんけど。
「そうだね~。クマさん怖かったもんね~」
「……あぅぅ~……ハッ!も、もう!子ども扱いしないでください!!」
照れるフィアちゃんを猫かわいがりして、さらに照れさせて遊んでいたら、突き飛ばす様にして距離を取られてしまった。残念。
まぁ、ティーニャ(遊びたがり)とか、ボーパル(くっつき虫)とか、イナリ(かまってちゃん)とかが、仲間になりたそうにこちらを見つめていたので、どのみち照れフィアタイムは長くは続かなかっただろうからいいんだけどね。
んじゃ、折角だし、みんなと触れ合っておこうかな。お前も、もふもふしてやろうか!うりゃああ!
「~~~♪」
「きゅい~!」
「コ~~ン♪」
「メェエ……」
「……え?なんでフィアまで……あぅう……」
約1匹お昼寝を邪魔されて不機嫌そうな子もいるけど、気にせずもしゃもしゃ!
両手と両足と顔が幸せ!五体満足!あれ?なんか意味が違う気も……まぁいっか!今の気分が最高にハイってやつだって事が伝わればそれでよし!
……あれ?なにか忘れているような?
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「気力も回復したし、クマのドロップも回収した。それじゃあ第二層へ行こうか!」
「きゅい!!」
「~~!!」
「メェ~」
「……フィアは逆に”何か”を吸われた気がします……」
もふもふ成分とフィアニウムを思う存分に摂取して、お肌ツヤツヤになった俺と愉快な仲間達はすっかり存在を忘却していたクマから毛皮を剥ぎ取り、第二層へと足を進めた。
第二層の昼に出現するモンスターはイノシシとトレントだな。
猪突猛進。俺達を見つけた瞬間。雄たけびを上げながら突撃してくるイノシシは、アイギスの防御を貫くことが出来ないからなんの脅威も無いが、問題はトレントだな。
ボーパルの索敵すらも掻い潜り、攻撃する瞬間まで存在を気づかせない隠密性の高さは、フィアちゃんを守りながら移動しなきゃならない俺達との相性が最悪だ。トレントは移動不可に加え、攻撃範囲が枝の届く範囲まで。という制約の代わりに一撃の威力が凄く高いからな。万が一にもフィアちゃんを殴らせるわけには行かないから、注意しないと!
「きゅい!!」
バギャン!!
……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
「……ボーパルちゃん。すごいです。かっこいいです。ステキです」
「きゅい~」てれてれ
攻撃の瞬間まで、存在に気づけない?なら相手が攻撃する瞬間に、索敵と移動と攻撃をすればいいじゃない!
とでも言うように、近くを通った俺達へと枝を振り下ろしたトレントの枝が当たる前に、跳躍したボーパルが枝を蹴り折って回っている。当然一蹴必殺で。
レベル差が倍以上ある上に、ボーパルは敏捷と筋力に振りまくってるからね。仕方ないね。
……ねぇ知ってる?この子、月光兎なんだぜ……?昼間は全力じゃ無いんだぜ……?
夜になったら全力全壊で暴れるんですね。知ってます。
「~~?~~~!~~!」
「ん?ティーニャ?どうした?」
「……ティーニャちゃん?」
テクテク。ピョンピョン。バギャンバギャン!と森を進んでいると、突然ティーニャがわたわたとボディランゲージで俺達を止めて、俺の髪飾りを引っ張って森の中へと誘導してくる。
奥になにかあるのか?ん~、個人的には行ってみたいんだが、ティーニャが引っ張る方向に進んだら遠回りになるんだよなぁ……チラッ
「……行ってみてもいいと思います。フィアもティーニャちゃんが何を伝えたいのか気になります」
「んじゃ、レッツゴー!」
「~~~!」
依頼人の了承も得られたので、いつも第三層へと向かう時に通っていた道を外れてティーニャの先導で森を進む。
なんかデジャブを感じる行動だけど、先頭のティーニャが時々後ろを振り返って、俺やフィアちゃんがちゃんと付いてきているかを確認している姿に、確かな成長を感じるな。
ティーニャが人を気遣う事が出来るようになっただなんて俺は嬉しいよ。森へと引っ張る時もちゃんと前髪じゃなくて髪飾りを引っ張ってたしな。
おかげでどっちを向いて欲しいのか分かりにくかったけど。
フィアちゃんが少しだけどにこにこしてたから、きっと微笑ましい光景だったんだろうって事は分かった。
「お、着いたのか?」
「~~~!」
ティーニャが呼ぶ先。薄暗い森の中にあって、淡い光を放つ小さな広間。そこには……
「「「「~~~~~♪」」」」
沢山のフェアリー達が、輪になって踊っていた。かわいい。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
今回の逆裁難しくない?既に1回有罪になってしまった・・・
姫巫女様め・・・可愛い顔しやがって!もふるぞ!
あ、次話は12時にあげま~す。




