136匹目 超石化薬
ごちうさが無料配信中!運営よく分かってるじゃないか!
という訳で投稿が遅れたのはだいたい運営のおかげです。
「フィアちゃ~ん。遊びにきたよ~」
「きゅい!」
「ホー!」
「メェエ!」
「~~~!」
「……にゃあ」
月光草を採れる限り採取した俺達は噴水で水浴びをしてからアトリエへやって来た。
MP回復薬を作るのにも時間がかかるし早めに預けに来たかったんだが、リーンちゃん達に捕まって一緒に遊んでたら遅れちった。まぁいいか。誰かと約束してるわけでも無いし楽しんだもん勝ちだよね。
「ユウ!いらっしゃいデス!」
「……いらっしゃい」
「あ、エルが居る。珍しいな」
「きゅい!」
工房に入ると、笑顔で液体の入った小瓶をふりふりしているエルと、椅子に座ってうんざりした顔をしているフィアちゃんが居た。
あっ……(察し)
「……あ、俺は用事を思い出したからこれで」
「えー!?そんな事言わずにエルの話を聞いていくデスよ!むっふ~。ついに古の歴史書に書かれていたレシピの1つを作ることに成功したのデス!そもそもエルがこの古の歴史書を手に入れたのは―――」
「……お願いします。一緒に居てください。フィアを1人にしないでください……」
俺が踵を返して工房から出ようとしたらエルに左手を掴まれ、フィアに右手に縋り付かれた。
エルはキラッキラした目で小瓶を振り回して何か言ってるが、おずおずと俺の袖を引いて上目使いで申し訳無さそうに俺の顔を覗き込んでくるフィアちゃんにしか視線がいかない。
なにこの子かわいい。
「ん?、フィアは1人じゃないデスよ?昨日のお昼からエルとずっと一緒デス!」
「……そういう意味じゃ……ないです……」
「う、うわぁ……」
あのフィアちゃんが珍しく俺に頼ってきたのに、エルに轟沈させられてみるみる萎んでいく。
この前、ちょこっとエルの話に付き合っただけで疲れたのにフィアちゃんは昨日の昼からずっとつき合わされているのか……かわいそうに……
「お、おう。じゃあ俺もちょっとだけ付き合おうかな……あ、月光草を持ってきたからまたMPの回復薬を作ってもらってもいい?」
ここでフィアちゃんにアイコンタクトだ!チラっチラチラっ!
「……分かりました。お預かりします……?……!ね、姉さん。姉さんの石化薬も一緒に倉庫にしまっておきますね。転んで落としたらタイヘンです」
そう言ってエルの持っている小瓶を奪おうとするフィアちゃん。ナイスだ!
手元から薬が無くなればエルの暴走もある程度は収まるかもしれん。
「ん?心配しなくても大丈夫デス!エルは薬を落としたりはしないデスよ!」
「……分かりましたから薬をこっちへ渡してください。フィアがちゃんと管理して……あっ」
「「あっ」」
エルがブンブンと振っている薬が、取り上げようとしたフィアの手に当たって弾かれ宙を舞う。
真上に吹き飛んだ薬入りの小瓶がクルクルと回転し、突然の事態に落ちてくる薬を口を開けて見送るしかない俺達の上へと……
「わぷっ!ぺっぺっ!く、薬が!?デス!?」
「お姉ちゃん!」
「エル!?」
宙を舞った小瓶がひっくり返った状態でエルの頭の上に落下して、落下の衝撃で蓋が緩んだのか中の液体をエルの頭にぶちまけた。
え?あれ?これちょっとやばいんじゃ……
「わ!わわっ!ま、マズイデス!解除薬はまだ完成してないのデス!!」
「お姉ちゃん!て、手が……!」
「あ、あわわわわ」
エルの力作である石化薬はエルがあれだけ興奮して語るのも納得の即効性でエルの手足をドンドンと石化していく。
あ、あわわわわわわわ。どどどどどどどうすれば!?え?俺はどうすればいいの?あれ!?
「フィア!この解除薬の素材と調合方法は石化薬の素材と殆ど一緒デス!エルの話を聞いていたフィアにはきっと作れるはずデス!詳しい作り方も本に書いてあるデス!ユウ!解除薬の作成には素材が1つ足りないデス!月光草が採れる森よりも更に奥地に住むユニコーンの角を取って―――」
「お、姉ちゃん……?」
そしてエルだったものは完全に沈黙した……
《Cクエスト『錬金少女と超石化薬』を発見しました受理しますか? Y/N》
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《Cクエスト『錬金少女と超石化薬』を受理しました》
「ふぅ……一旦落ち着いた」
「……フィアも落ち着きました」
「きゅいきゅい!」
「ホー!」
あれから俺とフィアちゃんは石化したエルの周りをぐるぐる回りつつなにやらよく分からない事を叫び続けていたんだが、ボーパルの落ち着かせる(物理)で工房の壁まで吹き飛ばされて、ボーパルとミズキの2人がかりで説教された。かわいかった。
ちなみにアイギスとティーニャとノゾミの我が道を行くトリオはエルが石化しても一切気にしてないようだな。なんて薄情なやつらだ。ティーニャだけは面白そうにエルの頭に登ったりしてるけどな。
「……んで、フィアちゃん。エルの石化状態って時間経過で回復したりしないの?回復魔法のスキルは持ってるけど、まだ石化は回復できないんだよね」
「……普通の石化薬ならばもう効果は切れています。姉さんが作った超石化薬は世界に1つしかない特別製です。姉さんの話が本当なら効果は永続……解除薬が無いと姉さんはずっとこのままです……」
「なるほど。イベントアイテムなわけか……」
何回死んでも教会で蘇生できるゲームでも、イベントだったら薬1つで簡単に死んじゃうからな……イベント怖い。これがプレイヤーか召喚モンスターが対象なら、ログアウトしたり送還したりでどうにでもなりそうなんだけどなぁ……
てか、落ち着いたからかフィアちゃんのエルを呼ぶときの呼称がお姉ちゃんから姉さんに戻ってる。お姉ちゃんって言うのかわいかったのに……まぁ、流石にこの空気の中で茶化したりはしないけどさ。
「ま、でも状況はそんなに悲観するほどの事でもなさそうでよかったよ。要は俺達が森エリアの第四層に行って、ユニコーンの角とやらを取ってくる。んで、フィアちゃんがそのユニコーンの角を使って石化解除薬を作る。これでエルは元に戻るわけだ。解除薬が無ければずっとこのままって事は、これ以上悪化することも無いってことだろ?なら慌てる必要も無いってことだしな」
「……それは……そうですね」
「な~に、ちゃちゃっと行ってぱぱっと取ってくるからさ。フィアちゃんは薬を作る準備をして待っててよ。こう見えても俺達、結構強いんだぜ?」
「きゅい!」
「ホー!」
「~~~!」
フィアちゃんを安心させるためにニィッと不敵に笑ってサムズアップをする。
それにあわせてボーパルとミズキもフィアちゃんを安心させようとしたのか、フィアちゃんの胸に飛び込んでいき、面白そうな空気を感じたティーニャもフィアちゃんの胸元に突撃した。
おい、待てティーニャ。お前はなんて所に潜り込んでいるんだうらやまけしからん。後ですりすりしてやる。
んで、ユニコーンの角だが。ぶっちゃけ入手はそんなに難しくないと思うんだよな。どっちみち、そろそろ第四層へ向かう予定だったし。むしろこのイベントの発生が数日後ろにズレてたら既に手持ちにユニコーンの角があったかもしれん。
おつかいイベントを先回りして納品アイテムを揃えておくのってゲームだと割りとあるあるだけど、あのタイミングで既に持ってましたって、なんというかシリアスキラーっぷりがはんぱないな。
「んじゃ、さっそく出発するか。おい、起きろアイギス。ノゾミも。出発すんぞ~」
「メェエ~?」
「……んにゃう……」
完全に野生をどこかに置いてきたらしく高いびきをあげながら寝ていたアイギスを足でユサユサして起こし、窓際で丸くなっていたノゾミのおひげをツンツンして起こした。こそばかったのかピクピク動いているおひげがかわいい。
「んじゃ、フィアちゃん。行ってきます。第三層のボスはまだ倒してないから、ちと遅れるかもしれないけど、必ずユニコーンの角は取ってくるから待っててね」
「……」
あ、でもボス戦に行く前に一旦ログアウトして晩御飯だな。差し迫っての危機は無いって分かったら安心してお腹すいちゃった。よく考えたら朝から何も食べてないんだよね俺。
まぁ、フィアちゃんも心配だし、急いで食べて、半分徹夜する気で攻略しようか。
「……」
「きゅい~」
「ホー」
「~~♪~~!!」
「ん?フィアちゃん?どったの?」
晩御飯はカップの焼きそばにしようかな~と思いつつ、工房を出ようとしたんだが、フィアちゃんが胸に飛び込んできたボーパル達をぎゅぅ~と抱きしめたまま放さないのでボーパル達が困ってる。
フィアちゃんも不安なのかな……でもボーパル達は放してくれないと、ユニコーンの角が取りにいけないんだけど……
「……てください」
「え?なんだって?」
むぅ、ウサギさん装備を脱いだから小声で喋られたら聞き取れないんだよ……索敵スキル取ろうかな……でもSPがなぁ……
「……フィアも一緒に連れて行ってください!」
「……ふぇ?」
……どうやら俺は晩御飯も抜きで戦わなければいけないらしい……
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
ついに始まりましたフィアちゃんルート!
次回からはドキドキ森林デートですね~。フィアちゃんがどの程度デレるかはユウな頑張りにかかってるぞ!
ちなみに今のデレ度は20%ぐらいかな?だいぶ心を開いてくれて、これから一気に心の距離が縮まりそうな感じ。エイプリルフールのが100%だね。いや、あれは200%ぐらいあったような気もするけど。
作者的には60%から80%ぐらいの見ててついニヤニヤしちゃってベットの上で布団を抱えてゴロゴロ転がり回りたくなる感じのデレ度を押したい。伝わるかな~?伝わらないかな~?
まぁ、全てはユウの頑張りしだいですが。待て次回!




