133匹目 君の名は・・・
お久しぶりです。テトメトです。
名前を考えるのって難しいね。そして今日から夜間作業です。
眠い・・・
「およ……?ユウなのじゃ!おかえりなのじゃ!」
「「「~~~!!」」」
「ああ、ただいま……なのかな?まだ住んでないけど」
「~~~~!!」
ミヤヒナにミスリルを預けて、レン君から船と家を買い、イベントのドロップアイテムで温かくなった懐に一気に寒風が吹き込んだ後。常にいい笑顔で微笑んでいて何故かボーパルに頭を下げているスキンヘッドの人から魔人ちゃんを引き取って、遡上の宝珠を使ってフェアリーガーデンに転移した。
イベントのドロップは殆ど売りはらったが、レア度4以上のワイバーンの逆鱗とか、クラーケンの触腕とか、何故かストレージに入っていた岩龍の素材とかは売らずに取っておいた。何かに使うかもしれないし、使わなかったとしても、今売るよりもちょっと時間を置いた方がプレミアがついて高く売れそうだしな!
……まぁ、高くなったらなったで売るのが惜しくなりそうな気もするけどな。金が欲しいならキツネちゃん狩りをすればいいだけだしな!
「コン?」
「いや、なんでもないぞ~。気にせずフェアリー達と遊んでおいで~」
「コン!」
「「「~~~!」」」
イナリはもふもふのしっぽに顔から突っ込んでじゃれてくるフェアリー達をやさしく振り払っている。
セーフエリア内だから適当にあしらってもダメージは喰らわないんだが、イナリは丁寧にフェアリー達の相手をしているな。
イナリも楽しそうだし、小さい物が好きなのかな?イナリとは趣味が合いそうだ。
「~~~~♪」
イナリへと突撃しているフェアリーの中に1匹だけ天使が交ざってるな。
イナリのもふもふしっぽにひしっと抱きつくどころか、もふっと埋もれている羨ましいティーニャの頭には、昨日までは無かった新しい装備が増えている。
【防具:頭】夏色帽子 レア度4
防御力+10 重量0 耐久値200
夏の日差しをたっぷり浴びて育った麦で編まれた麦藁帽子。
暑さをやわらげることができ、装備者はヒマワリ畑や砂浜を意味も無く走り回りたくなる。夏の香りがする。
【効果】
耐暑:中
体力上昇:中
敏捷上昇:小
これでティーニャも立派な海賊の仲間だな!まぁ、麦藁帽子だからって海賊にならなきゃダメってわけじゃないんだけどね。
装備した新品の麦わら帽子の縁を両手で掴んで嬉しそうにスカートをヒラヒラさせながら回転するティーニャを見て、夏の香りってどんな香りなんだろうと思って捕まえて頭の匂いを嗅ごうとしたら頭突きされた。流石にデリカシーが無かったかな?それともくすぐったかったのかな?
ちなみにティーニャの頭はいい匂いがしたけど、どこら辺が夏の匂いなのかは分からなかった。
ティーニャが被っている麦わら帽子以外のドロップした装備はキツネ装備より弱かったから売り払ったな。魔人ちゃん装備ならキツネ装備よりも優秀なのかも知れんが、魔人ちゃんは倒してないからドロップは無いんだよな。ちょっと惜しかったかなぁ……。
チラッチラッ
「……ボーパル姉さま助けてください。ユウお姉ちゃんが私の服を剥いで裸にしようとしています。見知らぬ土地にいきなり連れ去れた上に貞操のピンチです」
「きゅい?」
「……うん。あながち間違って無いのがなんとも……」
貞操なんたらは間違いだけどね。
「うむ?そやつはあの時の魔人ではないか?服を脱がせて……ああ。食べるんじゃな?直ぐに火を用意させるのじゃ!」
「「……え?」」
「……え?」
まさかの食べる(物理)!?思わず魔人ちゃんと顔を見合わせた後、精霊ちゃんの顔を見てから魔人ちゃんの顔を二度見してしまった。二回目の魔人ちゃんは青い顔でガタガタ震えていた。
プレイヤーはHP0になったら街で復活するけど魔人ちゃんはどうなんだろうか。
そもそも料理された場合ってどうなるんだ?死んだら消えるから料理にはならないよな?つまり死なない様に回復魔法をかけ続けつつ料理をするのか?部位欠損も消えるから、生きていて感覚があるままで踊り食いをすると?
あ、いや、それ以前にセーフエリア内だとダメージを喰らわないから死なないか。
火で炙られようが、鍋で煮られようが、3枚におろされようが。食べられようが死ぬことは無いんだよな。
……あれ?おかしいぞ?魔人ちゃんの瞳に映る俺も青い顔で体が勝手に震えてるぞ……?女体盛りとか言ってふざける余裕も無いぐらい怖い。セーフエリア内だとダメージを喰らわないから3枚におろすことは出来ないって事に思い至らないぐらい怖い。
「ふむ?焼くよりも煮物の方がよかったのじゃ?……なに?違う?うーむ、生はオススメしないのじゃが……え?”食べる。違う”?なんで片言なのじゃ?食べるために連れて来たのじゃ無いなら……ペットにするんじゃな!そうじゃろう!?」
「……もう。それでいいや……この子は俺のだから食べないでくれよ?」
「うむ!友のペットを食べるような不義理なマネはせんから安心するのじゃ!」
「精霊怖い精霊怖い精霊怖い―――」
家畜orペットってどういう事だよ……
そもそもこのゲームじゃ、食事は娯楽でしか無いだろうに。そのためだけに敵のトップを生け捕りになんかせんわ。
そして魔人ちゃんに新たなトラウマが出来てしまった……ウサギと人間と精霊がNGだとこのゲームでは生きていけないぞ?
まぁ、ウサギに関しては恐怖がひっくり返って尊敬とか崇拝になっているみたいだけどな。
もしかしたら人間に対してツンツンな態度をとるのも恐怖の裏返しなのかもな。チワワがしっぽを丸めながらも必至に吠えている感じだな。かわいい。
「よしよし。怖くないぞ~。精霊ちゃんには俺からしっかり言っておくからな~」なでなで
「……くぅ……よろしく、お願いします……」
俺の服の裾を小さく摘まんで、カタカタとチワワみたいに震えていた魔人ちゃんの頭をなでなでしていると、珍しく素直にお礼を言われた。ギャップ萌えカワユス。そんなに精霊ちゃんが怖かったのか……たしかにあれは怖かったな……
「これから一緒にいる時間も増えるだろうし、改めて自己紹介をしておこうか。この子は街に攻めてきた魔物軍の元トップで、借金奴隷で、ボーパルの手下で、俺の捕虜兼ペットの”ウィアナ”だな。通称魔人ちゃんだ。
はい、挨拶して」
「……初めまして。このたびめでたく名持ちになったウィアナです。私は食べてもおいしくないです」
「何故自己紹介で自分の味を説明するのか……」
まぁ気持ちは分かるけどね
ちなみにウィアナちゃんの名前の由来は『夜に願いを(ウィッシュ ア ナイト)』の頭文字を取った名前だな。
シルフが魔人ちゃんへのセクハラで逮捕されたので残ったメンバーで考えたんだが、一番女の子の名前っぽかったのがこれだった。後はもう、厨二臭が酷かったので没になった。流石にかわいそう。魔人ちゃん涙目になってたしね。
「んで、こっちが精霊ちゃん。魔人ちゃん戦では応援しかしてないけど、ボーパルよりも強いから絶対に喧嘩を売ったらダメだからな?……って、精霊ちゃん?どうしたんだ?」
「……るいのじゃ……」
「え?」
「そやつばっかりズルイのじゃ!わらわも名前が欲しいのじゃ!」
お、おう。精霊ちゃんがのじゃー!のじゃー!って、”のじゃー”一回毎に手を振り上げながら俺と魔人ちゃんの周りをグルグル歩いてる。ついでにフェアリー達も何かの遊びだと思ったのか精霊ちゃんの後ろについて、手をふりふりしながら行進している。かわいい。
フェアリーの後ろにフェアリーがくっ付きまくった結果、俺と魔人ちゃんを囲んで躍ってる感じだ。ちみっこサークルだな!ここは天国か!
……ふぅ。っと、ヘブン状態になっている場合じゃない。服の裾を摘まむどころか完全に抱きついてきて、囲まれた!食べられる!とガタガタ震えている魔人ちゃんの頭をなでなでしつつ精霊ちゃんの名前を考える。
ティーニャは妖精女王から名前を取ったから、精霊ちゃんは精霊女王とか?英語にしたらスピリッツ クイーンかな?じゃあ……
「……”リーン”とか?」
なんか高貴そう。
「リーン。リーン……いい名前なのじゃ!わらわは今日からリーンなのじゃ!わーいなのじゃ!」
「「「~~~!」」」
クルクル回っていて精霊ちゃんがピタっと行進を止めたかと思うと、口の中で呟くようにリーン、リーンと呟いた後、ピョンと飛び跳ねて喜びを顕わにして、背中にぶつかって止まったフェアリーと手を繋いで、精霊ちゃんと手を繋いだフェアリーが隣のフェアリーと手を繋いで……と再びフェアリーサークルの中に閉じ込められた。かわいい。
魔人ちゃんはまた、完全に囲まれた!もうダメだ!とガタガタ震えている。
……これから家を建てて、魔人ちゃんはそこに住んでもらおうと思ってるんだけど……大丈夫か?ストレスで死んじゃうんじゃ……。
ま、まぁ。セーフエリア内だから死ぬことは無いしな。死ななきゃやすい。死ななきゃやすい。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
家を建てるところまでいけなかった・・・なんでや。自己紹介しかしてないはずなのに・・・




