表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/263

130匹目 始まりの街防衛戦エピローグ

 

「ふぅ……やっと一息つけたな……」

「きゅい~」


 場所は変わってリアさんのお店。

 メンバーは俺達と魔人ちゃんとタクとシルフだな。

 リアさんとレン君とミヤヒナも誘ったんだが今回のイベントのドロップ報酬の売買合戦が始まっているらしく、生産職は今からが戦闘開始らしい。魔人ちゃんを匿う場所だけ提供して慌ててフリーマーケット化している噴水広場まで走っていった。

 まぁ、魔人ちゃんを匿っているって言っても街を攻撃した犯人として狙われているわけじゃなくて、アイドルの追っかけから匿っている感じだけどな。


 敵のトップだった魔人ちゃんがでっかいキツネの背中に乗せて運ばれていたらそりゃ目立つわけで……

 常に誰かに見られているから隠行もかけられなかったししゃーなしだよな。


「で?ユウよ。魔人ちゃんをどうするつもりなんだ?」

「このまま義妹としての英才教育をするつもりなのかな?かな?」

「義妹の英才教育ってなんだよ……」


 丸テーブルの対面と左隣に座ったタクとシルフがニヤニヤと笑いながら、お人形さんのように椅子に腰掛ける魔人ちゃんと俺の間で視線を往復させて言う。

 椅子の上に座らされている魔人ちゃんは、くすみ1つ無い綺麗な金髪に、日焼けの一切無い真っ白な肌。黒薔薇を所々にあしらった黒を基調としたゴスロリドレスも合わさってお人形さんにしか見えないな。


 例えるならば金髪の銀様だ。金髪だから金様かな?ネジ巻かなきゃ(使命感)


「私の体をジロジロと舐るように見つめるだなんてやっぱりユウお姉ちゃんは同性の幼子の妹しか愛せない特殊性癖……」

「違うからな?珍しい服だから気になっただけだからな?」


「なるほど。つまりは服をもっと詳しく見るために脱げという口実ですね。咄嗟にそんな切り替えしが出来るユウお姉ちゃんに驚愕を隠せません」

「一体何を納得したんだ……むしろ咄嗟にそんな解釈が出来る魔人ちゃんに驚愕だよ」


「つまりは本当に私の服が目当てだと?同性の幼子の妹が着ている衣服しか愛せない特殊性癖とはレベルが高い変態ですね。

 しかし、現在捕虜である私に拒否権は無いので吐き気を催すほどの嫌悪感に包まれながらも嫌々ドレスを生贄に……」

「捧げなくていいからね?そもそも激減したステータスにやっと体が慣れてきて1人でお茶が飲める様になったばっかりなのに1人じゃ服を脱げないだろうに」


「つまりはユウお姉ちゃんの手で直接脱がせたいと?やっぱりそういう趣味が……」

「無いからな?というか魔人ちゃんにセクハラしたら逮捕されるとメトに釘を刺されたばっかりだろうが」


「もちろん考慮済みですが何か?」

「うわぁ……かわいくねぇ……」


 俺が苦笑いでそう言ったら、ぶっちょう面+ジト目をしながら俺を性犯罪者に仕立て上げようとしていた魔人ちゃんが、んー、と悩む様に人差し指を下唇に当てて……


「……てへっ♪」ぺろっ♪

「「かわいい!」」


 はっ!急にニッコリ笑って小首を傾げた魔人ちゃんに思わず叫んでしまった……

 って、あれ?気のせいか今声が2重に……


「魔人ちゃんか~わいい♪」


「はにゃ!?」


 あ、あれ?いつの間にかシルフが魔人ちゃんの背後から抱きついているんだが……

 一瞬前まで俺の左隣の椅子に座っていたよな?右隣の魔人ちゃんの背後にいつの間に移動したんだ?魔人ちゃんの十八番を奪うテレポートかな?

 そんな非日常的な光景を目の当たりにした魔人ちゃんはSANチェックです♪


 恐るべきは茶番の引力か……


「やめ……離してください!んっ……」

「あ~ん。つれない態度もか・わ・い~!ハァハァ……」


 イスに座り込む魔人ちゃんの頭を後ろから抱え込む様に抱きしめたシルフが、クンカクンカ、ハスハス、スリスリしている。

 魔人ちゃんはよわよわしく首を振っていやいやしたり、力の入らない手でシルフの手を掴んだりしているが、そのいじらしい仕草がこれまたシルフのツボに入ったらしく、ちょっと女子中学生がしてはいけないような電波には乗せられない顔でprprしてる。

 って、おいやめろ!魔人ちゃんを食べる(意味深)んじゃない!!


「は、はは……お前ら兄妹はホント可愛い物には目が無いからな……」

「いや、流石の俺もアレと同列に語られるの嫌なんだが……」


 魔人ちゃんが抵抗する気力も無くして死んだ魚の様な目になってるしな。

 魔人ちゃんを仲間にするのに暴力(ボーパル)は必要ない愛情(シルフ)があればよかったんや……


「ずいぶん一方通行な愛だな……」

「相手がロリータだからね。一方通行なのは仕方ないね。いろんな意味で」


「ぶーぶー、人の事をセロリみたいに言うけどさ、流石のあたしも人目がある所だったら自重するよ?」


 魔人ちゃんを愛で尽くしたのか。ふぅ~っと一仕事やりきった顔で額の汗を拭う仕草をしながらシルフが席に戻ってくる。魔人ちゃんは口からエクトプラズムを出して放心してるな。流石に可哀そうだから特別にボーパルを貸してやろう。アニマルセラピーだな。

 ……うん。なんか逆効果の様な気もするが気のせいだろう。


「おい、タク。お前シルフに人間扱いされてないぞ」

「いや、それはユウも同じだろうが……」


「はいはい。雑談はそれぐらいにして、魔人ちゃんをどうするか決めるよ。差し当たっては家かな?FWO内だったら衣と食は必須じゃないからね」


 最初にボケ出したシルフが音頭を取るのはなんか納得がいかないが、言ってることは正論だし従っておくか。


「ん~、確かにこのままリアさんにずっと頼りっぱなしってわけにもいかないしな」

「客引きパンダ……もとい看板娘としては活躍出来そうだけどね。

 リアさんがログアウトしているときに魔人ちゃんの相手を誰がするのかと、魔人ちゃんを見たいだけの野次馬が集まってきそうなのが問題かなぁ……」

「客引き失敗してんじゃねーか。ていうかシルフみたいな客が大勢来たら魔人ちゃん人間恐怖症になるんじゃないか?」


 シルフと同レベルのプレイヤーが沢山いるとは思いたくないが……否定しきれないのがなんとも。


「ログアウトする必要の無いNPCに面倒を見てもらうのがいいんだろうけど、一応街を襲った犯人だしな。この街の住人に任せるのはちょっとな……」

「付け加えるなら人の目に付きにくいところがいいよねー。魔人ちゃん目立つから……」


「協力的なNPCが住んでいて、人目に付きにくいところ、か……うん。すごく心当たりがあるな」


 というか、そこの土地もってるな。

 あの子達も暇してるみたいだし、たぶん面倒見てくれるだろう。魔人ちゃんも人間に囲まれているよりは暮らしやすいかもな。うるさいけど。


「へ~。そんな所があるんだ?」

「おう。ただ、土地はあるんだがまだ家が無いんだよなぁ……」

「え?NPCが住んでるって言ってなかったか?」


「お、おう。野宿でもしてるんじゃないかな?半分野生児みたいなものだし……」

「……なんか、急に心配になったんだけど本当に大丈夫?」

「……ゴスロリ着て野生児はちょっとどうかと思うぞ……?」


「だから家建てるって言ってんだろ。木材はかなりあるからレン君に頼んでログハウスを作って貰おうと思ってるんだけど、レン君忙しそうだからなぁ……ボーパル号を引き取る時に頼むことにするか」

「うん。とりあえず何とかなりそうなのは分かったよ。完成したらあたし達も呼んでよね!」

「レン君なら簡単なログハウスぐらい1日あれば作れそうだしな。1日ぐらいなら魔人ちゃんにはプレイヤーの相手をしていて貰おうぜ。

 双方の監視は……教祖様に頼むか。ボーパルのためって言えば信者を動かしてくれるだろう」


 教祖様って誰だよ……なんか嫌な予感がするから聞かないけども。


「さて、とりあえずの目的が決まった所で次に決めることは1つだね!」


「ん?あと何か決める事あったっけ?」

「さぁ……?」


 バンッ!!


「何言ってるの2人とも!まだ一番大事な事を決めてないでしょ!」

「ふぇ……?ここはだれ……?私はどこ……?」


 男2人が頭にハテナを浮かべているとシルフが突然テーブルを叩いて跳び上がりその衝撃で魔人ちゃんが意識を取り戻したみたいだな。

 いや、まだ寝ぼけてるっぽいが。寝ぼけてぽやっとしている魔人ちゃんカワユス。


「な!ま!え!”魔人”ちゃんって言うのは種族であって名前じゃ無いでしょ!魔人ちゃんにもかわいい名前を付けてあげなきゃかわいそうじゃない!!」


「「お、おう……」」


「という訳で今から魔人ちゃんの名づけ会議を開始します!!あたしが納得するかわいい名前が出るまで帰らせないからね!覚悟してよね!!」


「魔人ちゃんじゃなくてシルフが納得するかどうかが判断基準なのか……」(困惑)


「とーぜん魔人ちゃんの意見も参考にするからね!はいはい意見出す!!ほら、魔人ちゃんも遠慮しないで!!」


「え?……あの、え?私今気がついたばっかりでなにがなにやら……」


「ほーら!あたしに遠慮なんていらないんだよ!お姉ちゃんの妹ならあたしの妹みたいなものなんだしね!!シルフお姉ちゃん♪って呼んでもいいんだよ!むしろ呼んで!!」

「お前それ呼ばせたいだけだろ……」


「え?……え?シルフ……お姉ちゃん?って、この人間はさっきから何を……」


「キャー!!魔人ちゃんかわいい~~~!!」

「え?ふゎ、むきゅぅ!」


 おい、シルフ。テーブルの上をヘッドスライディングして対面の魔人ちゃんに抱きつくんじゃない。はしたない。


「ちょ、助け……ボーパル姉さま!ユウお姉ちゃん!この人間をなんとか……ひゃっ!」

「も~、”この人間”じゃないでしょ?”シルフおね~ちゃん♪”でしょ♪スリスリスリスリ」


 諦めろ魔人ちゃん。魔王からは逃げられない……


「ほら!2人は魔人ちゃんの可愛い名前を考える!決定するまで眠らせないからね!!くんかくんか」


「「ひ、ひぃ~!」」


 最終的にフリマで大勝利を収めて帰ってきた生産職4人組みすらも巻き込んで騒がしい打ち上げはいつまでも続いていく……

 魔人ちゃんもなんだかんだ悪態つきつつも楽しそうだったし、これからもっと人間と仲良くなれたらいいんだけどな……


 -------------------------------------


「ちょっとみんな!ちゃんと聞いてる!?やっぱり魔人ちゃんの名前は真ん中に☆とかがいいと思うんだけど!!」

「あっ、すまんシルフ。聞いたフリするの忘れてた」

「人間怖い人間怖い人間怖い―――」

「あらあら。お菓子がなくなりそうね。新しいの出すわね~」

「ユウ君の新築にはやっぱり変形ロボ機構を付けるべきだと思うんだよ!!変形時に家の中がぐちゃぐちゃになるけど必要経費だよね!」

「どうせならボーパル号との変形合体機構にするの!!」「ボーパル号の中もぐちゃぐちゃになるけど必要経費なの!!」


 なにこのカオス……

 とりあえず生産バカ3人を止めないと新造の家と船が巨大化した怪人と戦う事になってしてしまう!


「ちょ!レン君!ログハウスは早さ重視で作ってって言ったよね!?変な機能はいらないから!」

「分かった!ターボジェットを付けるよ!」

「ジェットエンジンも付けるよ!」「スラスターも付けるよ!」


「”速さ”は求めてねーよ!!”早さ”を求めてるんだよ!!」

「「「はっはっはー」」」


「おい、こら。各種ブースターが冗談だと言えよ」

「「「はっはっはー!」」」


「笑ってごまかすな!」

「「「はっはっはー!!」」」


 まったく。退屈しないメンバーだよ……


 -------------------------------------


「ちょっとお姉ちゃん聞いてる!?やっぱり魔人ちゃんの語尾は”にゃ”がいいと思うんだけど!!」


「お前当初の目的完全に見失ってるぞ!!」


 締めようとするたびに邪魔しやがって!もういい!ここで切る!

 それでは皆さん、さよなら。さよなら。さよなら。

もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


魔王さんの出番が後回しになったのはこの1ヶ月で鍛えられられたプレイヤーと新人プレイヤーのやりとり(掲示板)を書きたかったからという理由だったりする。

大丈夫。魔王さんならワックでバイトしてるから。


PS.

魔人ちゃんの名前どうしよう・・・。かわいい名前じゃないとダメだよね?

間に☆とか?

これは掲示板を挟んで時間稼ぎをするしか・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ