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123匹目 VS魔人ちゃん 1

魔人ちゃん回!

 

「し、死ぬかと思った……」

「きゅい!!」

「……んにゃあ……」


 不安にしかならない前振りだったのに奇跡的に敵軍ど真ん中に無事に到着できた俺達はパラシュートを開いてゆらゆら落ちるタルの中でやっと人心地付いていた。


 ……ちょっと待とうか。モンスターの軍勢のど真ん中にパラシュートの付いたタルでフラフラと落ちている状況って人心地付いていい状況じゃないよね!?


 あっ!待ってボーパル!飛び出さないで!召喚!先に他のみんなも召喚しないと!てか揺れる!揺れてる!怖い怖い!


「ホー!」

「~~!」


 んで、えーとまず空を飛べるミズキとティーニャを召喚して。イナリは……体の大きさ的にタルに召喚するのは無理があるからアイギスを……重量的に大丈夫かな?アイギス金属鎧装備してるんだけど……このタル2人乗りだよな?

 いや、二人乗りのタルって何を言っているのか分からんけど……


 ま、大丈夫だろう。たぶん。仮に落ちても死にはしないだろうし、敵陣のど真ん中で盾役(アイギス)無しの方が死ぬな。


 というわけでアイギスを召喚!


「メェエ」

「んにゃ!にゃぁあああ!」


 ……うん。落下速度は一気に上がったけど墜落っするて程じゃあないな。

 だからアイギスをタルから押し出そうとするんじゃないよノゾミ。まぁアイギスならここから落ちても無傷で生還できそうだけども。


 というかノゾミはネコなのに高い所が怖いのかな?まぁ、ネコにだって高い所が嫌いな子もいるよな。

 いや、それ以前にタルロケットでぶっ飛ばされたばかりだしな。俺だって今下を見るのは怖いな。


 ……若干1名タルロケット中も楽しそうにはしゃいでいて、今も下のモンスター軍に飛び込もうとウズウズしているウサギさんがいるけど気にしない方向で。


 さて、そろそろ地面が近づいてきたわけだが。どうも門の耐久値がゴリゴリ削れているみたいなんだよな。せっかく敵陣のど真ん中に落ちたけど、まずは始まりの街方面へ侵攻して門の前にいるプレイヤーと挟み撃ちにするかなぁ……


 という訳でミズキとアイギスとティーニャで敵後方部隊の足止め頼んだ。

 俺とボーパルとノゾミで門の周りの露払いしてくるからね!

 ……まぁ、戦うのは主にボーパルだろうけど。


 んじゃ、ミズキ!先制攻撃頼んだ!


「ホー!」


「「「グギャアアア!?」」」


 うし。今回は魔法で攻撃もして欲しいから魔眼は一回でOK。

 ほらほら。ノゾミも歌って、歌って。

 んじゃ、俺は隠行で隠れてるから後適当で!


「……んにゃ」


 ……あ、ちょ、ノゾミ触らないで!触られたら隠行解けちゃうから!

 まったく……「~~!」って、また!今度はティーニャか!ティーニャは着地の安全を確保するために魔力圧縮してて!

 ホントにもう……「……んにゃっ!」って、ノ~ゾ~ミ~!俺が死んだら全員消えるんだからね!分かってる!?遊んでる場合じゃないんだよ!


 もう……二人ともモンスター軍に囲まれているのに余裕すぎだろう……この調子で戦闘も頼むな!


「きゅい!」

「ホー!」

「メェエエ!」

「~~!」

「にゃぁあ~ん♪」


 それじゃあいっちょ張り切って行ってみようか!!


 ……あ、俺は隠れてますんで戦闘はよろしくお願いします。


 ……ちょっとノゾミさん?歌いながらニヤニヤするなんていうネコとは思えない器用な顔をしてこっちに近づかないでくれますか?もう戦場に降りてるんだからね?今隠行解かれたらかけ直せないんだからね!?


 た、助けて保護者(ミズキ)さーんーーーーー!!


  -------------------------------------


「アーハッハッハッハッハッハ!!人間共よ!絶望しろ!魔と闇を司る魔人である我が直々にお前らを潰してくれよう!!ワーハッハッハッハッハ!!」


 あ、魔人ちゃんがやっとでてきた。

 既に北門のタク&変態&愉快なプレイヤー達と東門のシルフ&精霊ちゃん&フェアリーズも合流してモンスター軍はほぼ壊滅している。ただ、精霊ちゃんとフェアリーたちはあんまり暴れられるとプレイヤーが貰える貢献度が減っちゃうから主ににぎやかし要員になっている。

 フェアリー達はお祭り騒ぎが楽しめればなんでもいいらしく、空に火魔法を花火したり、後衛のプレイヤーの頭に乗っかってはしゃいだりしてる。

 精霊ちゃんは戦闘職が来て出番の無くなった生産職の誰かが作ったらしいチアガールっぽいミニスカへそだしルックでぼんぼんを両手に装備して一生懸命応援してる。かわいい。

 精霊ちゃんの応援がかわいすぎて俺含むプレイヤー達がチラチラと精霊ちゃんに視線を送るせいで被弾率が上がっている気がするが誰も指摘はしない。かわいいは正義なのだ。


「きゅぃいいいいいいい!!」

「え?ちょっ、まっ!!」


 ドカドカバキバキドカンドカン!


 いまだに空中に留まりちょっと無理している感じで高笑いを続けていた魔人ちゃんに宙を蹴り上がったボーパルが、魔法よりも槍よりも剣よりも拳よりも近い、ウサギ(ボーパル)の間合いまで一気に距離を詰めて連打を叩き込んでいく。


「ちょっと!私がまだ喋ってる途中でしょうが!この卑怯者!人でなし!」


 ウサギだしな。


 ちなみに魔人ちゃんはボーパルの攻撃を受けた瞬間から、両手に黒いバラの模様が付いた漆黒の手甲を装備しておりこの手甲でボーパルの連撃を全て受け流している。

 ほえー。やっぱりイベントのラスボスともなると強いな。ボーパルとあの距離でまともに対峙できたのって今のところ精霊ちゃんと魔人ちゃんだけじゃないか?NPCの幼女つよし。はっ!つまりフィアちゃんも……?

 ……思い出してみたらフィアちゃんって錬金術士とは思えないほどの筋力値があるみたいだしなぁ。もしかしたら俺達よりよっぽど強いんじゃ……。

 うん。フィアちゃんとはもっと仲良くしていよう。そうしよう。


「きゅい!!」

「ぐっ……ちょっと!なにこのウサギさん!こんなの居るなんて聞いてないんだけど!?」


 あ、フィアちゃんとの今後の付き合いかたを考えている間に上空の決戦に既に勝負がつきそうになってる。

 魔人ちゃんの攻撃範囲の内側にいるために殆どダメージを負っていないボーパルと防御の上からの削りダメージでHPが1割近く削れている魔人ちゃん。

 ボーパルを巻き込んじゃうから攻撃することが出来ずに、他のプレイヤーは下で応援することしか出来ないんだが、あれならボーパルに任せておけば大丈夫なんじゃね?まぁ削りきる前にMPが切れそうだからそう甘くは無いだろうけど。


 ……どうでもいいがシルフよ。何故お前は精霊ちゃんに踊りの指導をしているんだ……?お前だってチアの動きは闇の力を秘めし鍵でカードを封印するアニメでしか見た事無いだろうに。

 あ、どこからとも無く取り出したステッキのキャッチに失敗したが精霊ちゃんが頭で受け止めて涙目になってる。癒されるわー。


「ぐぐむ、こうなれば私も奥の手を使うしかないか……『テレポート』!『換装』!黒薔薇弓!」

「きゅい!?」


 ボーパルの猛攻に防戦一方だった魔人ちゃんの姿が突然歪んだかと思うとボーパルの上空5mぐらいの所に出現し、手甲が変化して作られた矢がつがえられていない黒い弓を思いっきり引いている。

 今のテレポートって魔法だよな?つまり無詠唱ってことか。すごいなー。さすが自分で魔を司るとか言っちゃうだけはあるなー。

 でもさ。今ボーパルから離れちゃったら……


「これでしまいだよッ!『ダークアロー』装填!!ッ!?」


「ホー!!」

「~~!!」

「「「『ファイヤージャベリン』!!」」」

「「「『ウィンドミキサー』!!」」」

「「「『ウォーターレーザー』!!」」」

「「「『ストーン……

「「『ライト……

「「『ダーク……

「「『フレイム……

「「『サンダー……

「「『アイス……

「「『ウッド……


 詠唱が完了している魔法が全部飛んでくるぜ?


「ッ!!」


 ズガアアアアアアアアアン!!


 おぉ~。派手に当たったな……きれいな花火だ……


 そして気付けばチア隊に100人のフェアリーが加わってる。そしてその横では生産職だと思われる男女入り混じった集団がぶったおれている。MP切れかなにかで倒れていると思われるが全員が満ち足りた表情をしているのがここからでもわかるな。うん。気持ちは分からんでも無いがラスボス戦の戦場でやるなよ。


 ……いや、待て。あれはMP切れで倒れているわけじゃない?空を舞うフェアリー達をローアングルから観賞するためにあえて地面に転がっているというのかッ!?なんたる策士!俺もこっそり混ざろうかな……


 ……シルフに睨まれたからやっぱりやめておこうか。うん。


「ぐっ……この私が人間如きにここまで手傷を負わされるなんて……」


 やっぱりテレポートで逃げだしていたらしい魔人ちゃんだが、流石に無傷とは行かなかったらしく更に2割ほどHPが減って残り7割だな。そしてこっちの陣営はほぼ無傷。あれ?これ以外とチョロイんじゃないか?


 んで、後方では魔法戦主体のためやることの無くなったタクがこっそり倒れている生産職に混ざろうとしてシルフに蹴り転がされ、それを見た変態がさりげなくシルフの足元に転がって行って蹴り飛ばされて悦んでいた。シルフは割とガチな悲鳴を上げていたが。


「こうなれば少し早いけど私も本気を出すしかないか……」


 魔人ちゃんがそう呟いて自分の胸の前で両手を交差し、膝を引き寄せて体を丸めるような格好になると、魔人ちゃんの背に背負う様に漆黒の魔法陣が発生し、クルクルと回るごとに倍々にその大きさを増していきやがて目で見える空全体を覆ってしまった。この異常事態にさしものボーパルといえど迂闊に動くことが出来ず、何が起きるのかを俺にMP回復クリームをヌリヌリされながら見ていた。


 そしてこの異常事態に全く関知せず異常行動を続ける変態は、ぴょんぴょん跳ねて応援している精霊ちゃんの足元に持ち前の高い敏捷値を遺憾なく発揮し、ウゴウゴ動いて足の下に潜り込んだが、急に足の下に転がり込んできた異物に気付いた精霊ちゃんが浮遊して踏みつけを回避したため、ものすごく残念そうな顔をしながらNPCである精霊ちゃんのパンツを覗こうとした罪でハラスメントコードに引っかかり牢屋に転送されていった。

 たしか、街の外から転送されたら通常の倍のデスペナがかかるんだっけ?んで、送られた回数が増えるとペナルティも増えたはず。あの変態は……レベルが10個ぐらい下がればいいのに。俺の精霊ちゃんに手を出すとかお兄さん許しませんよ!

 ……いや、手を出すというか足を出されたかったんだろうけど似たようなものだろう。たぶん。


「私は魔と闇を司るもの……魔人!!ゆえに私の真の力は魔と闇が支配する世界でこそ発揮される!!奥義!『夜の帳(ナイトフォール)』!!」


 魔人ちゃんが奥義の名を叫んだ瞬間魔人ちゃんが背負っていた巨大な魔法陣から漆黒の闇があふれ出し世界が塗り変る(・・・・・・・)

 青く澄み渡る空が先の見えない漆黒に塗り変り、遥か上空から俺達を照らしていた太陽の日差しは消え去り代わりに巨大で真っ赤な満月が浮かぶ。

 ついさっきまで昼間だった始まりの街が、一瞬で赤い満月のみが地上を照らす星明りの一切無い不気味な夜へと変わってしまった。


「ここが私の世界!!魔と闇が支配するこの世界の私は何者にも負けはしない!!さあ人間共よ!狩りの時間だ!あんまり私を退屈させるなよ?」


 そして変わったのは空だけでは無い。世界の変化に合わせて魔人ちゃんの姿も変っていく。もともと魔人ちゃんはゴスロリっぽい服を着たコウモリの翼の生えた長い金髪の小さな女の子だったのだが、今は頭の横からアイギスみたいな悪魔の角っぽいのが生えていて、魔人ちゃんの体自体も大きく成長し大人の女性になっている。胸は無いが。


 ふっ、どうも魔人ちゃんは1つ大きな勘違いをしているみたいだな……それは世界が夜に変わることで強化されるのが自分だけだと思っていることだ。

 魔人ちゃんが魔と闇を司るように、うちのパーティには月の光を司る者が居る。


「きゅい!!」


 真っ赤な月の光を吸収したボーパルの体がどこまでも紅く紅く染まっていく……


















「戻してぇえええええええ!!」

「幼女!!俺達の幼女はどこ!?」

「劣化現象とか聞いてないんですけど!!ここはゲームだろ!!一生幼女でいいじゃん!!」

「戻せえええええええええ!!」

「運営はどこだ!?今すぐGMコールしてやる!!」

「やろう。ぶっ殺してやる!!」

「ダメだ!運営の連中着信拒否してやがる!!」

「GMコールが着信拒否ってどういうことだよ!!」

「待て!前回のイベントも締めは運営自らがログインして挨拶をしていた!つまりこのイベントを終わらせれば……」

「「「「「「OK理解した。一瞬で片付けてやる!!!」」」」」」


 プレイヤー達の運営と魔人ちゃんへの殺意もどこまでも紅く紅く染まっていく……


もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


魔人ちゃん回!

魔人ちゃん回?

魔人ちゃん・・・かい・・・?


なんか魔人ちゃんよりも精霊ちゃんの方が出番多かったような気もするけど、魔人ちゃん回です。

1って書いてあるけど、下手したら前後編で終わるかも。

幼女じゃなくなったしね。仕方ないね。

次回は今まで明かされてなかったボーパルの新スキル月光合成の説明かな。

それと、真の力を解き放った魔人VSアルティメットボーパル&怒り狂ったプレイヤー軍です。


・・・何文字もつかな・・・幼女だったらまだ書く気も起きるんだけどなぁ・・・

運営どこ行った!!出てきて謝罪しろ!!

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