10匹目 ウサギの肉
明日から来週末まで立山の登山に逝ってまいります!
皆々様様どうかお元気で・・・!!
翌日
正直FWO舐めてたわ。
まさか……まさか、タクを含めたクラスの3分の1が欠席ってなんだよ!皆どんだけゲームしたいんだよ!俺もしたいよ!
今日が金曜だから今日学校来たら明日明後日と休みなのに1日が耐えられなかったのか……。
まぁ、俺も授業に一切身が入らず、終わり次第全速力で爆走して帰ったから人の事は言えんけど。
ちなみに翼も休んでた。ちくせう。
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ログインすると夜だった。
おかしい、昨日と同じ時間にログインしたはずなのに、と思い確認してみるとFWO内では1日が20時間らしい。
昼が10時間で内1時間は夕暮れ。夜が10時間で内一時間が日の出。
で、リアル時間とは4時間ずつずれている。
つまり昨日は午後9時から夕暮れだったから今日は午後5時から夕暮れで6時からは夜時間。昼は午前6時からだ。3日で昼夜が完全に反転し6日で元に戻る。
面倒なことしてるとも思うけど昼夜で出現モンスターが変わる以上夜にしかログインできない社会人とかにも考慮した結果だろうな。
「……さて、そうなると予定が狂ってくるぞ……」
昨日考えていた予定を思い出してみる。
今日の予定1街の散策。
プレイヤーの店はまだまだこれからだろうけどNPCの店はもう閉まり始めるかもだしやっぱ散策は明るいほうがいいよな。
予定2アトリエに遊びに行く。
女の子の家に夜にアポ無しで遊びに行くとかないわ。
予定3ボーパルと一緒にラット狩り&封印。
ボーパルの復活まで残りは4時間半ほどあるし保留だな。ぶっちゃけラットがウサギと同じ強さなら1人でも狩れると思うけどボーパルのレベル上げもしたいし。
思うにカラス戦の経験値がボーパルに入らずに全部こっちにきてると思うんだよね。
ボーパルはまだレベル2だろうからレベ上げもしたい。
と言うわけでボーパルが復活するまでの暇つぶしはラット狩で決定だな。タクかシルフに引率してもらうのもありだけど2人のパーティメンバーに迷惑をかけたくもないしな。
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ぞくぞくとログインしてくるプレイヤーの流れに沿うように夜の街を進む。
……夜のってつくだけでなんかエロそうな気がする現象はとりあえず置いておき、屋台でリンゴを1つ買い食いしてみた時に重大なことに気がついた。
「金が無い……」
タクたちと狩ったウサギの毛皮代はリンゴを2つも買えば底をつくほどしかない。手元にある売れそうなものはカラスの羽が11枚のみ。サモナー以外なら倒したキャタピラーやらフクロウやらの素材もあるんだろうと思うとちょっとうらめしい。
いいもんねー!俺にはボーパルが居るからいいもんね!どうだ!うらやましいだろう?
……今は居ないけどさ……。はぁ、早く会いたい……
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「リアさん。こんばんわです」
「あらユウ君じゃない。いらっしゃい」
という訳でリアさんの屋台にちょっと寄り道。
今のところお金を使う予定も無いから必要ないっちゃ無いんだけどさ、手元にお金が全然無いとなると、ね?
さっきまでは全く意識していなかったのに突然不安になってきたんだよね。
風邪かな?と思って熱を測って熱があると分かった瞬間体調が悪くなってくるアレみたいなもんだ。違うか。
それにしても昨日と全く同じ所で全く同じように屋台をやっているリアさん。
ずっとここで店番していてレベル上げとかはどうしているのだろうか。
「ああ、それはね。他のプレイヤーとの売買でも経験値が入るのよ。あくまでもおまけみたいな物で、同じ人には一日に1回だけ。一度に入る量も少ないんだけど、塵も積もればなんとやらってね?」
「ほへー」
指を一本立てて、パチンとウィンクをするリアさんについ見とれて、気の抜けた返事をしてしまった。
ちなみに「それなら俺でも楽に経験値が稼げるんじゃ……」という甘い考えはリアさんに苦笑と共に否定されてしまった。
アイテムの売買及び交換で経験値が入るのは生産者専用スキルの”交易”が必要らしいのだ。
では、交易を使わずに売買をしたらどうなるのか?と、言うと商品にロスが発生するらしい。
品質が落ちたり、使用回数が減ったり、代金が減ったり……税金か!
他にも交易スキルを使えばその商品の適正価格が分かったりするらしいが、レベルが低いうちは結構ズレるらしくてなかなか当てにならないとかなんとか……
それはさておき、お楽しみの買取タイム。
カラスの羽の値段は……まぁ、毛皮2枚分くらいか?。
そもそも使い捨ての矢の材料になる羽がそんなに高値で買い取られる訳がないし。今はフィールドに対するプレイヤーの比率が高い。
ドロップ品の種類も多くは無いだろうし、弓使いにしか需要が無い矢の材料であるカラスの羽は在庫がダブついているらしくさらに買取価格が落ち込んでいるそうだ。
コスパが悪い弓使いの絶対数がそもそも少ない事もあり、カラスの羽の買取をしないか二束三文で買い叩くところもあるそうなのでキチンと買い取って貰えた分俺はツイていたらしい。リアさんには感謝、感謝です。
少し懐が温かくなったところで、リアさんの屋台からはお暇して本来の予定であるラット狩りに行こうか……
「ねぇ、ユウ君。ウサギの肉って持ってないかしら?」
「ウサギの……肉?」
リアさんに呼び止められてしまった。
にしてもウサギの肉か、ウサギのドロップって毛皮じゃなかったっけ?
「本サービスからドロップの内容が変わったみたいなのよ。ウサギのドロップが追加されたのも本サービスからね」
よほど変な顔をしていたのかリアさんが説明してくれた。
まぁ確かにタク達が持っているベータの情報が本サービスでもまったく同じとは限らんわな。
「それでそのウサギの肉なのだけれども、その肉で作ったシチューが絶品で、しかも料理のスキルの上昇率も高いみたいなのよ。これは一度作ってみるしかないでしょう?」
「へー料理スキルですか。リアさんは料理スキルを?」
「え、ええ。まぁどうしてもお客さんが居ない時間はあるからね。レベル上げも兼ねて少し、ね」
珍しくリアさんが照れたような顔をしている。
というのもこのFWOにおいて料理スキルは完全にネタスキルであるからなんだが。
そもそもFWOには空腹度のパラメーターは存在しない。ゲーム中におなかが空いたりトイレに行きたくなったらそれはリアルの体がそうであるということでありFWO内で食事をしてもおなかは膨れない。食事は完全な嗜好品になっているのだ。そんな訳でよりおいしい料理を作れるようになる料理スキルをそうと知っていてSPを消費して取得する人はそうは居ない。といっても召喚魔法に比べれば取得している人もたくさんいるしSPに余裕が出てくれば取得する人も増えそうだが。
「そのウサギの肉だけど、ドロップ率はそんなに低くも無いらしいのよね。でもウサギ自体がレベル3を超えた辺りからさっぱりエンカウントしなくなるし。見つけてもすごい速さで逃げられるのよね……でも初期販売組みの知り合いはもう大半はレベル3を超えちゃったから新しく仕入れるのも難しくて……もし持っていたら譲って欲しかったんだけど……」
「あー、残念ながらウサギの肉は持ってないですしレベルも3は超えてますけど……ボーパルがレベル2ですし、近い内にもう1体召喚モンスターを増やす予定もありますからその2体に頼めばなんとかなるんじゃないかと」
「ホント!?もし手に入ったら相場よりも少し高めで買い取るわ。それにできたシチューもおすそ分けしちゃう」
「ハハッ。それは頑張らないとですね。まぁ頑張るのは俺じゃなくて召喚モンスターたちですけど」
「そうねぇ。今一緒に居ない事にも何か意味があるんでしょ?ボーパルちゃんにもあとでよろしく言っておいてもらえるかしら。今度来た時は何かサービスするから」
「ええ、必ず伝えておきますよ」
ボーパルの再召喚まで残り3時間ちょい。
それじゃあいっちょ、ラットの封印といきますか。
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