111匹目 西門防衛戦
そうだ。戦闘しよう!
という事で戦おうとは思うんだが、近場の敵は避雷針が掻っ攫ってるし、召喚術のレベル上昇に応じて範囲が広がっているとはいえ召喚モンスターからあんまり離れられない関係上、戦える相手が少ないんだよなぁ……
アイギスのところに行ったら諸共に消し飛ばされるし、他のプレイヤーも戦ってるしなぁ……
あ、あそこに一匹フリーのアリがいる。あれ倒そうかイナリ。
「コーン!」
1つ鳴いて俺に返事をしたイナリがスゥーっと薄れるように消えていき……一拍遅れて俺も消えた。消えた筈。ステータスには隠行と出てるし消えただろう。
そしてそのままダッシュでノコノコと自軍へ入ってきたアリの背後を取り、左手の武器を閉じ、右手の武器を開いてアリへ向ける。
「”狐火”!」
「コーン!」
「ギィイ……」
完全なる不意打ちで狐火を胴体に叩き込まれたアリは断末魔の悲鳴もそこそこに体を溶かしながら消えていった。
あ、今のクリティカル出てたんじゃね?俺が出したのかイナリが出したのかは分からんけど……
「コーン!」
「おぉ。よしよし。よくやったぞー。攻撃のタイミングもばっちりだったしなー。もふもふ」
「コン!」
アリが光に還った事を確認したイナリが、えらい?ほめて?と言わんばかりに俺の真正面にお座りして大質量のしっぽを、ばっふんばっふん振りながら俺の顔を見つめてくるのでついつい顔を抱きしめて撫で回してしまった。
イナリはキツネなのに反応が犬っぽいんだよなぁ……なにかあれば顔舐めようとしてくるし。
いや、いいんだけどね?ゲーム内なら顔がべとべとにもならないし。でも今はまだ戦闘中だからやめようねー、って我慢できずにイナリを抱きしめながら撫で回している俺が言っても説得力ないか。
あとは撫で回していると、興奮して圧し掛かってくるのもちょっとやめて欲しいかも。お前でかいんだから!ボーパル達とは違って飛び掛られたら潰れるから!まぁ、かわいいんだけどね!!
「ふぅ……満足した……」
「コン!」
たっぷりとイナリを撫で回しもふもふ成分を補給しまくってから、イナリから離れる。
イナリは体から小麦の匂いがしていて、ぎゅっとすると、ほんわかするんだよなぁ……
でも何で小麦の匂い?体が小麦色だからか?んー、きっと、きつね揚げの匂いだとおなかが空くからだな。これ以上食いしん坊キャラは要らんし。
「コフ……」ぽふぽふ
「ん?おお!わざわざ拾ってきてくれたのか。ありがとな」
「コン!」ばっふばっふ!
俺がイナリの抜け毛で羽毛布団みたいなイナリ布団を作ったら安眠間違い無しなんじゃないかとか、取り留めの無い事を考えている間に、イナリを抱きしめるために取り落としていた2つの新武器を咥えたイナリが俺が受け取りやすいようにズィッと差し出してくれた。
イナリは賢くてえぇ子やなぁ……よしよし。なでなで。
「コン!!」ばふばふばふばふ!!
4本のしっぽが高速左右運動をして、イナリの後ろに砂煙が巻き起こっている……
これ続けてたら風魔法覚えたりしないかな?流石に無理か。
さて。左手に纏めて持っていた2本の武器を両手に正しく装備し直して、バッと両方同時に開く。
やっぱりバッと一発で開くのがかっこいいよな~。それに何度見ても絵柄が超かわいいしな!まぁかわいいのはこのきつねさん装備一式もなんだけどな!!
【防具:頭】狐さん簪 レア度4
防御力+30 重量2 耐久値400
キツネの妖力が込められた簪
キツネを模した飾りがついており装備者に幻を見破る力を与える。
【効果】
幻惑耐性:中
精神系状態異常耐性:小
クリティカル時即死:極微小
セット効果:精神上昇:中
言わずと知れた狐さん簪。キツネちゃんの飾りがいっぱい付いた派手な簪なんだが、なんと装備すると頭にキツネ耳が生えてくるというステキ仕様もあるという事を着けてから始めて知った。
おかしいと思ってたんだよ。この服は絶対メトの監修だろうにキツネちゃんの素敵な三角おミミが無い筈がないんだよな。キツネミミが生えてきて逆に納得したわ。
あ、ちなみに今まで”精神補正”と書かれていたのが”精神上昇”になっているのはちょっと前にあったアップデートで変わったらしい。分かりにくかったしね。
【防具:手】狐さん手袋 レア度4
防御力+10 重量0 耐久値200
キツネの毛皮を使って作られた手袋
キツネの妖力が込められており装備者に炎を操る能力を与える。
【効果】
火魔法ダメージ軽減:中
精神上昇:小
セット効果:火魔法威力上昇:小
手袋……?果たしてこれは手袋と言えるのか……?
狐さん手袋の見た目は装備していない状態だと、一枚の三角形の布だな。それが、紅と蒼の二色ある。
この布は三角形の頂点の1つが指輪に繋がっており、その指輪を中指に嵌めて、三角の布が手の甲を覆うように被せ手の平の手首辺りで謎の接着方法で残った三角形の頂点をくっ付けたら装備完了だ。
……むしょうに、中指と人差し指だけを立てた状態でけつ!!って叫びたくなる手袋だな……
というか絶対手袋じゃ無いって!手の大部分が出てるもん!でも、三角の布地に書かれてるキツネちゃんがかわゆいから許しちゃう。かわいいは正義だからね。しょうがないね。
【防具:足】狐さん下駄 レア度4
防御力+20 重量1 耐久値200
慣れない人が長く履いても足が痛くならないように、キツネの妖力が込められた下駄
蹴り投げることで炎を纏わせて攻撃することも出来るが、威力は低い。
【効果】
敏捷上昇:中
地形による機動力の低下軽減:中
セット効果:敏捷低下耐性:中
うん。妖力込めるところ明らかに間違ってるよねこれ!?
たしかに、下駄はなれない人が履いたら足痛くなるとは聞くけどもゲーム内だから痛覚は無効に出来るでしょ!んで、なに?蹴り投げたら炎を纏って攻撃できる?燃えるわ!!木製!狐さん下駄は黒塗りしてあるけど恐らく木製だから!というか説明文にわざわざ威力が低いと書くぐらいなら、そんな効果付けるなよ……。俺は警官でも妖怪でも無いから下駄を武器に使う予定は無いぞ?
【防具:服】狐さん着物 レア度?
防御力+100 重量3 耐久値500
キツネの毛皮を使って作られ、キツネの妖力を使って色をつけた着物
スカートの内側が見えそうで絶対に見えない呪いがかかっている。
【効果】
精神系状態異常耐性:小
魔力上昇:中
精神上昇:中
セット効果:消費魔力減少:小
呪われてるぅーーーーーーー!?
と、最初に見たときに叫んだのは当然と言えば当然の事だろう。だがまぁ別に脱げなくなる訳でもないし、ただスカートの中が覗けなくなるだけだから、呪いっていうより呪いなんじゃないかと思っている。まぁ同じようなものだけど。
ちなみにこの呪いはかなり強力で、自分で摘まんで持ち上げようとしても中身が見えそうになるギリギリからは全く持ち上がらなくなるし、ティーニャを足の間に挟んで上を向かせてもティーニャが上を向くタイミングでギリギリ中が見えない様にスカートの前部分と後ろ部分がピッタリと閉じる。ティーニャが下を向くとスカートもふわりと自然に垂れ下がり上を向くとビタンッと閉じる……
うん。それはもう遊ばれましたわ。
フェイントに次ぐフェイント。ティーニャすらも騙すような高速空中全方向スピンにもキッチリ対応され、キレたティーニャがスカートの中に頭から突っ込もうとしてスカートに弾き飛ばされノックアウト。勝者スカート!
こうして俺は最強の防御力(ノゾキ限定)を手に入れた……ぶっちゃけここまでするぐらいなら中にスパッツでも履けばいいような気がしないでもないが謎の運営の拘りだな……
【武器:扇(右手装備)】妖狐の紅扇 レア度?
攻撃力+10 魔法攻撃力+40 重量1 耐久値300
妖狐の妖力が込められた紅色の扇
妖狐の蒼扇とセットで装備することで始めて真価を発揮する
【効果】
火魔法威力上昇:小
魔力上昇:中
セット効果:セットスキル:狐火
【武器:扇(左手装備)】妖狐の蒼扇 レア度?
攻撃力+10 魔法攻撃力+40 重量1 耐久値300
妖狐の妖力が込められた蒼色の扇
妖狐の紅扇とセットで装備することで始めて真価を発揮する
【効果】
隠密性能上昇:小
精神上昇:中
セット効果:セットスキル:隠行
俺の新しい武器の2色の扇だな。この扇だが……じつは紅扇はストーレージに後10本ほど入ってる。
他の防具関係も2、3着ほど予備が入っている……
キツネちゃんのドロップはウサギと違って、一定数倒す毎の固定ドロップではなく、完全に運によるランダムドロップだったんだが……後は分かるな?
……蒼扇が出ねーんだよ!!
あ、扇出た!!紅扇か。まぁよし。……あ!また扇出た!紅扇、か。まぁそんな事もあるか。……よし!扇キタ!流石に今度は、あっ。……扇……色は……ハァ……
以下繰り返しだよ!!
何故蒼扇だけ出ない!!もう後半なんかRTAでもしてるのかと聞きたくなる程の最効率化された動きで、ただキツネちゃんを殺す為だけのマシーンみたいになってたからな……もう終盤とかみんな無言だったよ。最終的には解体ナイフをボーパルに持ってもらって刺したらあっさり出てきたしな。なんか納得いかない。
んで、この扇に付いている2つのスキルだが、イナリの戦闘の中核を成すスキルだけあってメチャクチャ強い代わりに消費が激しく、2つ同時には発動できない。まぁ、どのみち攻撃をしたら隠行は解けるから、攻撃が当たった瞬間に隠行が解けるか、攻撃しようとしたら隠行が解けるかの違いでしかないんだがな。
ちなみに、狐火はイナリと違って1つしか出せないし、全員隠密を使う事もできない。セットスキルにレベルは無いから成長する見込みも無いので、本家イナリに比べれば幾分か劣化はしているものの十分強い。
服にいくつか付いてる火魔法関連の上昇効果は狐火も対応らしくばっちり強化されてるのもいい。火魔法は使わないからな~。死に特性になるところだった。
っと、装備の確認はこんなもんかね?
それじゃあ戦線に復帰を……
「きゅい!!」ドゴンッ!!
「「「ギャ、ギャ~~ス!?」」
「メェエエエエ!!」
「~~~~~!!」ドカァアアアアアアアアン!!
「「「ギィイイイイイイ!?」」」
「にゃーにゃーにゃにゃにゃ~♪」
「コン?」ぶんぶん!
……うん。なんか戦場の熱気に当てられて俺も戦わないと!って気分になってたけど別に俺が戦う必要性は無いんじゃないかな?
というかワイバーンを全て打ち落とし終わったボーパルが地上戦に参戦した事で戦線をどんどん押し上げてる……というか敵モンスターが砂漠エリアの方へと逃げて行っているように見える。
自我が薄そうな虫型のモンスターが逃げ出すほど、この戦場は怖いのかね?怖いね。もし敵にうちのパーティみたいなのが居たら俺なら全力で逃げるわ。
う~ん。でもどうするよ。砂漠エリアに逃げ込まれたらうちのパーティじゃ追いかけれないぞ?いや、行けないことは無いけど無理して行くほどでも無いし……
《フレンドからメッセージが届きました》
え?メッセージ?誰だろ……
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
扇っていいよねぇ・・・
こう、バッ!と開くのがかっこいいんだけど、安物の扇子だと引っ掛かって上手く開かなかったりするんだよなぁ・・・いい扇ってどこに売ってるの?京都?でもお高いんでしょ?




