99匹目 落とし穴
あぁ^~チノちゃんがかわいいんじゃぁ^~!!
いや~、全編フルボイスっぽいし内容薄いのかと思ってたけどぜんぜんそんな事なかったね。とりあえず昨日はチノちゃんルートの第3章まで。でも、全コスプレイベントを回収しようと思ったらチノちゃんだけでも3、4周は必要そうだな~。あ、それと次回は100匹目記念の総集編モドキをやるつもりなので文量が多目です。
・・・後は分かるな?
カチッ
採取目標である聖なる石材らしきものを見つけたシルフが喜びの余り不用意に踏み出した足の下から聞こえた小さな音はやけにはっきりと洞窟中に響き渡った。
「「あっ……」」
パカッ
「お、おねえちゃあああああぁぁぁぁぁ~~~~~…………………… 」
ぎぃぃぃ、バタン
「「「「「……」」」」」
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!調子にのってスキップしながら駆け出したシルフが目の前でボッシュートされてしまった!!
というか、咄嗟に出た俺を呼ぶ声がお姉ちゃんなのかよ。お姉ちゃん呼びは演技じゃなくて素だったとか流石のお姉ちゃんもシルフとの付き合い方を考えちゃうよ?
「よし。じゃあ聖なる石材を採取するか」
「ホー!?」
なんかミズキが驚いてる。いやいや大丈夫だって。シルフならきっと1人でもやっていけるさ。というかどこに落ちていったかも分からないのに助けに行く手段がないし。
まぁ、同じ穴に落ちればシルフのところには行けるかもしれないけどミイラとりがミイラになるだけだしな。
なーに、最悪死んでも街に戻るだけなんだから探索を続けようぜ。そのうちひょっこり合流するかもしれないしな。シルフは命を張って俺達にトラップの場所を教えてくれたんだ。俺達はその犠牲を無駄にしない為にも前へ進まなきゃならないんだ!!
あ、でも一応みんな固まって移動しようね。サモナーが孤立とか本当に話にならないからね。
「きゅい!」
「ホ~」
「~~!~~?」
「……んにゃ」
よし、じゃあ、あそこに見える聖なる石材っぽいやつを採取に行くか。下がどうなっているのかは分からないから一応シルフの分の聖なる石材と沸き水も採取しておきたい所だしな。
はぁ、まったく。シルフはいったいなんのために俺達に付いてきたのやら……
カチッ
「「「「……」」」」
「~~♪」
……えーと、ティーニャさんや?何故キミはそんなに楽しそうに地面を両手で押しているのかね?そこはさっきシルフがトラップを踏んだ所辺りじゃなかったかね?まさか……まさかとは思うけどティーニャお前……
パカッ
「てぃ、ティーニャのバカぁあああああぁぁぁぁぁ~~~~~」
「きゅいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~!?」
「ホー!?」
「~~~~~~~♪」
「……」
空を飛んでいたミズキを残し俺とボーパルとノゾミ。地に降りてスイッチを”ポティッとな”しやがったティーニャが開いた落とし穴の中へと落ちていく。
ティーニャは後でおしおき確定だな。3日間おやつ抜きの刑だ。
ドボン!!
「ぶはっ!!死ぬかと思った!!」
「お、お姉ちゃん!?」
「きゅい!」
「~~♪」
「……んにゃ」
落とし穴の下はちょっとした地底湖の様になっていたらしく視界にキラっとしたものが映ったと思った途端俺の体は水中へと沈みこんでいた。
……そう。俺だけが。
もともと自由に空を飛べるティーニャはもちろん。空歩が空中機動に進化して自在に空を翔れるようになったボーパルと、濡れるのを嫌がり俺を踏み台に跳躍した裏切り者のノゾミはすぐそこの岸に着地しており、シルフと一緒に湖から浮かんできた俺を湖畔から見ていた。
いや、ちょっと違うな。シルフは確かに意識は俺の方へと向けているが体の向きは俺とは反対方向を。より正確にはうっすら輝く地底湖から唯一伸びている通路の暗闇の先や、辺りの岩陰辺りを睨んでいる。
非常に嫌な予感がする……どころか索敵でビンビン感じているんだが、そんなことより地底湖きれいだな~。底の見えない湖の側面からポツポツと生えている聖なる石材らしき物体が、真っ暗闇でないと分からない程に薄っすらと光を放っており俺が湖に立てた波を受け揺らめく湖面を幻想的に映し出している。
うん。この光景を見ただけで落とし穴に落ちただけの価値はあったな。精霊ちゃんの住処にある大きな噴水と精霊と木々のざわめきがセットの”動”の湖も好きだけど、こういう”静”の湖もいいな。大自然の神秘的なものを感じてるような気がする。
まぁ、ゲーム内なんだから全部人工物じゃねーかって言ったらそれまでだけど。
「「「「グギャギャギャギャ!」」」」
「ほらほらボサっとしない!出てきたよお姉ちゃん!」
「きゅい!」
「~~!」
「……にゃあん」
「へいへい。まったく。もうちょっと風景に見蕩れていたかったんだがなぁ……」
敵に背を向け、湖に足を浸けつつ現実逃避をしていた俺の背後から明らかに友好的ではない声が幾重にも反響して聞こえてくる。嫌々振り返ると、まぁ、出てくるわ出てくるわ。どこに隠れていたのかと聞きたくなるほど沢山の影がわらわらと……。
まぁどこに隠れていたのかは湖面から頭を出した瞬間には分かっていたけどもさ。
「「「「グギャギャギャギャ!」」」」
背後に湖を背負う形で半球型に俺達を囲っているのは上で何度か倒したゴブリンさん。今度は30近くの団体さんでのお出ましだ。
「落とし穴の下にモンスターハウスかー。まぁ、あるあるの組み合わせだよね」
「だな。自動生成のダンジョンなら確率的にはそんなに高く無い筈なのに何故かよく当たる鉄板の組み合わせだよな」
「いや、それは単にお姉ちゃんの運が悪いだけでしょ……」
「えー?95%当たるクジを三回連続で外した事を自慢してくる人には言われたくないんですけどー」
じりじりと距離を詰めてくるゴブリンの団体を前に油断無く構えつつもシルフと軽口を叩き合う。
だって……なぁ?軽く鑑定をかけてみたけど全員レベル10台だし、ゴブリンはこれといって特殊能力を持っている訳でもない。しいて言えば人型でこん棒を持っているぐらいの相手にどれだけ囲まれたところで……なぁ?
「んー、でも正直助かったよ。お姉ちゃん達が助けに来てくれて。あたし1人じゃ、ちょっちやばかったからね」
「お、おう」
……見捨てる気マンマンだったことは黙っておくか……
って、そこ!ニヤけながらドヤ顔するなんて器用な顔してんじゃねえぞティーニャ!かわいいじゃねーかちくしょう!そのほっぺたをこねくり回してやろうか!
……まぁ、結果論だがシルフを助ける事は出来たしおやつ抜きは勘弁しておいてやろう。
「「「「グギャア!」」」」
「行くよボーパルちゃん!」
「きゅい!」
ある程度まで距離を詰めたゴブリンの団体さんは一斉に叫ぶと同時にこん棒を振り上げつつ俺達へと突撃してきた。
それに合わせる様にシルフが真正面のゴブリンへと突撃していき、2、3体のゴブリン相手に大立ち回りを開始。シルフにつられて飛び出したボーパルもシルフとは別方向へと突撃し、眼前のゴブリンを塵に変えつつ走り抜ける……ってちょっと待った!俺とノゾミとティーニャだけを残して突撃すんな!今はアイギスが居ないんだぞ!?
「グギャ!」
「っ!『ウォーターカッター』!」
「んにゃ!!」
あぶな!シルフもボーパルも居ない方向から接近してきたゴブリンの一体のこん棒が俺の目の前を通過していったんだけど!?咄嗟にウォーターカッターを一体相手に使っちゃったじゃねーか。もったいない。
しかも俺の肩の上から動く気の一切なさそうなノゾミ様にしっかりしなさい!とお叱りの言葉まで耳元で頂戴しちゃったし。
ノゾミ様は叫ばなくていいので歌っていてください。
いや~まぁ、冷静に考えればゴブリンの攻撃は当たっても痛くはないし、そんなにダメージも入らないんだけどさ、だからといって好き好んで当たりたいとは思えないから!
くっ、ボーパルが戦闘に入った以上1分あれば駆逐できるとは思うけどゴブリンなんぞに殴られるのは癪だな。
こうなれば最後の手段。ミズキの魔眼で俺ごと撃てぇ!!!!って、そのミズキも居ないんだったぁ!まったく!必要な時に居ないんだから!!
「~~~!!」
地上で戦う3人の中で俺が一番倒しやすいと思ったからか、もしくは1跳ねごとに死を振りまく死神や、高笑いしつつ嬲るようにチクチクとレイピアを突きまくる狂人から全力で視線を逸らしたいからか、一番後方に居るのに、一番大量に押し寄せてきたゴブリンに対し、ノーダメージは無理かなー。嫌だなー。と思っていた俺の真上から1つの光球がヨロヨロと落ちてきた。
あの光球はあっさりと上空の安全地帯へと逃げ込んだ裏切り者のティーニャの援護魔法だな。今日の探検で何度かみたやつだ。ふよふよと飛んでいった後フラッシュグレネードみたいに光って目潰しが出来るやつ。
それがふよふよ、ふよふよと背後に地底湖を背負おって立つ俺の眼前に……あ、え、ちょっま。
カッ!!!
「「「「グ、グギャアァアアアアアアア!」」」」
「目が!目がぁあああああああああああ!」
ぎゅっと瞑った瞼の裏から突き刺す光に思わず両目を押さえて地面をゴロゴロと転がる。いや分かるよ!ゴブリンが俺に注目しているんだからその視線を遮るように光球を置けば効果的なのは良く分かる。でもちょっと酷くない!?
結局俺の視界が回復したころには、元より視覚に一切頼っていなかったボーパルが全てのゴブリンを殲滅した後だった。
うん。とりあえずティーニャは当初の予定通り3日間おやつ抜きな。
「~~!?」
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。
一番最初のキャラ紹介のところで
ココア(私の妹です!)
チノ 「妹じゃないです」
ココア「チノちゃん私の心を読んだ!?」
チノ 「ココアさんがわかりやすいだけです」
みたいな会話があって、あれ~?どっかで見たことあるようなやり取りだぞ~?
と、1人にやにやしていた今日この頃。
あ~早く続きをやりたい!




