Episode4
廃墟と化した建物内部にいる兵士姿の男が一人、
他のチームと何か交信をしている。
「こちらB地区、<ルーフ>が1体いる」
<ルーフ>と呼ばれる生物…人とは異型のそれは、何かを見つけようとしていた。
赤き眼が、暗闇を照らす。
それに見つからぬよう、兵士姿の男は物陰に隠れた。
「<ルーフ>だと?今すぐそこから離れろ!<ウォール>もいる!」
「りょ、了解した…」
と、男がそこから抜け出そうとした時、足元にあった石に足がぶつかってしまい、音を立ててしまう。
「通信、アウト!これより、戦闘に入る!」
<ルーフ>が男を見た。
<ルーフ>の赤き眼が男を照らし、<ルーフ>は叫んだ。
その声は廃墟に共鳴し、大きく響く。
人の声でもなく、獣の声でもない…形容し難い声に、耳を痛めた。
「これでも食らえ!」
男は、腰につけた手榴弾のピンを抜き、<ルーフ>へと投げつける。
投げた手榴弾は、<ルーフ>の足元で転がり、光を放って爆発した。
男は急いで窓から飛び出し、地面まで落ちていく。
窓から先ほどの手榴弾の爆風が回ってきて、男を押す。
「あぢっ!」
男は背中を叩きながら落下地点が近くなると、両足の靴を軽く3回叩く。
すると、靴が変形し、落下地点で大きく広がって、男をバウンドさせた。
靴がクッションとなったのだ。
耳にある通信装置に人差し指と中指をあてて、スイッチを押し、
よく聞こえるように押さえる。
「<ルーフ>に手榴弾を使用した、今よりここから撤退する!地図を端末に送ってくれ!」
「ジジジ...」
だが、その通信は届かない。
ノイズだけが彼の耳の奥へと響いていく。
「くそっ!<ノイズ>か!さっき、<ルーフ>が呼んだのは、こっちのタイプだったか…なら!」
男は、靴が元のサイズに戻ると、すぐに走り始めた。
<ノイズ>は、電波障害を引き起こす事ができる化け物だ。
特徴として、周囲1km内にしかその影響を出せない。
だから、離れてしまえばそれだけでなんら問題はない。
「<ルーフ>が他の奴も引き寄せてないといいが…まあ、無理だろうな」
男はひたすらに走り続ける。
そして、曲がり角を曲がった所で男の前に赤い光が現れた。
「ちっ…さっき言ってた<ウォール>がこっちだったとは…運ねぇな…」
「グゥォォアアアア!」
<ウォール>と呼ばれるそいつは、巨大な肉体を持ち、
体中を硬い鎧で守られている。
倒すのは近代重火器では無理だ。
だったら、どうするのが得策か、
「グォォォオオ!」
<ウォール>は走る。
男に目標を決め、その巨体の速さは想像するよりも速く、
男の懐へとタックルをかます。
が
「ふぅ…んっ!」
「グァァォォォ!」
男は、<ウォール>をその両腕を使って、<ウォール>の左肩と、右膝を捕まえる。
そして、<ウォール>のタックルの勢いを殺し、とめた。
「いくぞ、旧人類!これが新人類の力だ!」
男は<ウォール>をそのまま押し始める。
<ウォール>は戸惑いながらも、必死に抵抗したが、
男の力によって壁に押し倒されてしまう。
「よぅし、これでしばらく動けないだろう」
男は、壁に押し付けた<ウォール>に捕縛用のネットをかける。
ネットには、強力な粘液が練りこまれており、<ウォール>ではちぎる事ができない。
男は、<ウォール>が抜け出せない事を確認してから、振り向く。
「はっ…はは…こりゃあ…手に負えないぜ…」
そこには、数十体の<ウォール>が、男を囲んでいた。