表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

Episode3

「小川…杏…ふぅん」


その文書に描かれた文字、そこには興味深いものがあった。


”夢” という文字だ。


この子には、夢があるのだという。

この学校に…そんな子がいるなんて…。


守山高等学校は、ただの学校ではない。

この学校という概念だけがそこにあり、それ以外はない。


要するに、この世界そのものが 校舎 だけなのだ。


その 校舎 で、 夢 というのは本来存在しない。

校内で一生を過ごし、校内で一生を終える。

生まれ、育ち、学び、それが命尽きるまで続く。


その中で…その中でこの子は…小川 杏は、夢を持っている。


ここから…出るという夢を。


「面白いじゃないか…興味が湧いた…さて、私も準備をするとしよう…の!」


と、文書を書いた本を納める。


「信玄公、そろそろ行きやせんと」


「そうだな、では行くとしようの…!」


長身の赤髪に白の袴。

背中には 『風林火山』 と描かれた黒文字がある。


その目立った服装は、校舎でも有名である。

ちなみに、女だ。


(--- 1-05教室 ---)


X-XX教室。

最初のXが階層を表し、次の二つのXが教室の種類を現している。

僕らは、これらを総称して、1-05(いー・ぜろごう)教室と呼んでいたり、

4-01(しー・ぜろいち)教室と呼んでいる。


そして、この1-05教室もそうだが、各教室はやたら広い。

体育館…と呼んでも差し支えないだろう。

縦幅50mと横幅20mは、教室とは程遠い。

そこでただ筆記の勉学を行うのではなく、僕らは技能授業と呼ばれるものを受ける。


技能授業とは、自分の能力を向上させるために取られる授業の事で、

要は運動だ。


「あー…じゃあ、柴崎…前に出てこい」


「はい」


と、僕の隣にいたロンゲ茶髪の柴崎が担当教師の所へと向かう。

このクラスは平均的なクラスレベルを持つ生徒が集まっている。


と、柴崎が担当教師に講師されながら、それを僕らは眺めている。

これをしろと言っているのだろう。

ちなみに、内容は組み手だ。


ダンッダンッ


床を大きく蹴る音、


ドンッ


誰かが、床に投げられる音。

そんな音だけが、この教室を満たした。


僕も、またその一つ…。


「小川!腰が入ってないぞ!」


「ぐっ…」


僕のアビリティは、武器が無ければ発動しない。

加えて相手は、僕よりも徒手格闘に長けている。

こんなの…


「おい、小川!お前、真面目に勝負する気があんのか!」


「…こんなの…勝負でもなんでもない…」


僕はそう零す。

すると、担当教師が近づいてきて…


僕を思いっきり殴りつけてきた。


「ってぇ…何するんですか!」


「お前は、相手との正当な勝負を、自分の能力がないというだけで投げ捨てるのか?

 だったら、お前はこれからも負け犬だぞ」


「負け…犬…」


突きつけられたその言葉は、僕にはとてつもなく残酷だった。


「戦え、お前はそのためにここにいる」


「…」


そう、ここでは 戦うこと が 生きること に繋がる。

そのため、自己強化を怠らないようにするのが必要だ。


…ああ、早くここから抜け出したい。

この狂った世界から。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ