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○○もどきな西宮さん

作者: ヰ藤涼太

宜しければ感想を頂きたく存じます。

「私は幸せです」

「最近世の中物騒だけど、あたしは元気に毎日学校に来れてるし。ご飯も食べてるし! お友達もいてー、すっごい幸せ!」

「でもあたし達の町もそんなに平和でもないかな、こないだ学校の先生どっか行っちゃったし? ね?」

「あいつ気持ち悪かったから本当良かった…ごめんごめん今の聞かなかったことに」

「話ずれちゃった…まあ色々あるけど、あたしは毎日楽しくて幸せです」


お題、今の貴方をどう思いますか。


確かそんな作文もどきの発表だったはず。これは発表というより大きな独り言、もしくは会話に近い気もするけど。

せめてもの証拠なのか、いかにもテンプレというような言葉で締めくくられた弁論が目の前で語られ終わった。


話長い。

ちゃんと発表するならしろ。

発表者の目も見ずに耳だけを傾けて青空と睨めっこしていた私が言える台詞ではないけれど、これは酷い。


「はい拍手ー」


周りからはパチパチと疎らな拍手が聞こえ、少しはにかみながら発表者が教壇から降りてくる。光の加減もあって少し偉そう。


教壇に立つだけでまるで自分達より格上の存在に思えてくるのが不思議。


「次は西宮さんお願いします」

「原稿を忘れました」


本当は持ってきていたのだけれど。


「えっと、じゃあその…」


先程まで順調に進んでいた為もあって、突然の叛逆者に驚いているご様子。進行役は目をキョロキョロさせながらクラス中を見渡し、困った顔で笑みを浮かべた。

なぜ彼女は笑っているのだろう。

私ならニコリともせずに何らかの処置を即座に下している。


「じゃあ即興でお願いします」


笑顔の進行役は中々の難題を私に告げた。鬼か。

原稿はないと言ってしまった今、原稿を見ながら発表するわけにもいかないし。絶体絶命大ピンチな西宮さん。

良いとは言えない脳味噌をフル活用して出した答えはやっぱり無理。

となると、私に取れるのは逃げの一択なわけで。


「具合が悪いので保健室に……」


最後の方は声も掠れ掠れ。

私は咎められない内にそそくさと教室を出て行く。最もわざわざ私を引き止めるほど皆様方も暇はしていないので追って来たりはしない。


無関心西宮。

提出物はほぼ出さない、授業はちゃんと受けているけれど優等生ではない。

ちょっと手を焼く迷惑がられ屋。


そんな私はクラス中の批判の目線を背中に刺されながら教室を出て行く。

保健室で寝るのも良いけれど、そう言えば窓から見ていた青空が心地よかった。そんな事を思い出した私西宮は保健室から屋上へと方向転換した。




では私の発表を始めます。


幸せの反対は不幸せ。

誰かが幸せであれば、その分誰かが不幸せというのが私の持論。

そのバランスは誰が取っているのだろう?神様?私達?

答えは後者。

私達が知らぬ間に或いは意識的に自分自身でバランスを取っているのだ。


私が叛逆者を気取っているのもその一環。だって誰が非優等生にならなきゃバランスも何も無いでしょう?


「私は幸せを作っています」


私は告げる。


貴方達の幸せは私が作っているのだと。


貴方達が他人の不幸をオカズにして毎日ご飯食べて、他人の不幸をネタにして毎日お友達と楽しくお喋りが出来ているのも私のおかげだと。


神様っぽい。私は神様じゃないけど。


さしずめ私は神様もどきAだ。西村だから神様もどきNかも。


「皆幸せそうで良かったですネ」


青空に向かって私はニコリと笑う。

気持ち悪い先生ーー名前は忘れた、背の低くて小太りの何とかさん。

女子高生とイイコトしたくて郊外まで車を飛ばすお馬鹿さん。


女子高生リクエストの場所が山の中だろうがイイコトしたくて頭がパッパラパでどうしようもない阿呆だったなあ、そう言えば。


山の中でイイコト終わった所でちょっと薬飲ませたら死んじゃった何とか先生を私は早くも忘れかけてる。


だけど幸せでしょうねその先生。だって今でも彼の求めた女子高生に覚えていて貰ってるんだから…まあ気持ち悪いと言われて散々だとは思うけれど。


私は誰かの幸せを願ってる。

私が不幸せになろうとも。


だってそれが神様もどきの西宮なのだから。


「皆の幸せ願ってカンパーイ」


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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっとダークな作品で、西宮さんの意図も分かりやすく、何よりもテンポがすごくよかったです。応援します。
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