討伐訓練
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・今の都市の在り方は、平野の中心部に都市を作り周囲を波状の様に駐屯地で囲むようになっている。
今現在、竜樹達が暮らして居る都市の名前は「荒木山都市」
エンジンの振動音が小さくなり、装甲車が次第に遠のいて行くのが分かる。
桜木特殊化高校から4時間かけてやって来たのは、荒木山都市の最周辺にある7年前から無人の一つの街だ。
「うっひゃぁぁ〜!外は気持ちいねぇ!!」
葵が背伸びをしながら言う。
もちろん機械装甲に身を包んで。
「予想以上に緑が濃いな。植物って7年でここまで成長するのか?」
周りを見渡しながら羽堂が呟く。
それを聞いていた俺も周りを見渡す。
多くの、ビルやマンション、施設は崩壊しているが、その残骸の隙間などから背の高い草や花、大きな巨木まで育っている。
「草や花ならまだしも、流石にこの木はデカすぎだろ?」
側にあった木を指差しながら俺は皆に問う。
「確実に30年物だよなぁ〜」
羽堂はいつの間に近寄っていたのか幹を触っている。
どうやら感心しているようだ。
「授業で習ったでしょ。アンダーが破壊の限りを尽くした場所は未だに解明されていない奇怪な植物が育つって。」
そう言って葵は腰に装着していた大型ナイフを使って近くにある花を切り取って見せた。
すると、切り取った花の方は断面から光の粒子と化し跡形も無く消えていき、土に残っていた方の断面は光の粒子が収縮し、切り取ったはずの花が瞬く間に再生する。
習ってはいたが初めて見る光景に葵以外は声が出ない。
「でもね。これを根元から抜くと。」
しゃがみ込んで根っこに近い場所を掴んだ葵は躊躇無く引っこ抜く。
「ほら、消滅もしないし元あった場所からも新しく生えることはないの。
まぁ、根っこを潰せば跡形もなく消えるんだけどね。」
またもや躊躇無く地面に花を置き、踏み潰す。
案の定花は跡形も無く消えていた。
しかし、今葵以外の全員は花に対しての驚きより、葵に対しての驚きの方が大きい。
いくら奇怪な花とは言え、完全に見た目は花。
それを躊躇無く切って、踏み潰し、消滅させると言うのは、正直俺にでも少し抵抗はある。
さすがは葵と言うべきか。
葵以外にもこの場には2人女子が居るが、2人とも根っこから抜いた花を大切そうに腰のサイドポーチに差し込んでいる。
良かったこの2人は健全な女の子のようだ。
そうこうしていると、ディスプレイにテレビメッセージが届いた。
閲覧してみると映っているのは女性だった。
背はあまり高くなく、胸もそこまで大きくない、目は若干だがつり目、そして何よりの特徴は透き通る様な白い髪。
彼女の名前は海咲三葉。2年の学年長であり、俺のクラス2ー5の担任でもある。
見た目は怖いが割と冗談の通じる先生だ。
2ー5には三葉ちゃんと呼ぶ生徒もいる。
確か今年で28歳になるらしい。
「生徒の諸君。
今日は待ちに待った討伐訓練だ
危険ではあるが訓練を受けてきた君達なら難なくこなせるだろう。
各班の物資の投下ポイントと討伐場所に着いてはこの後転送する。
幸運を祈ってる。それでは」
桜木特殊化高校は各クラス40名、一学年5クラスの学年200名、全校600名の高校だ。
今回の2年生対象の討伐訓練は40名クラスの中で8人グループを5班作り各班でアンダーの討伐をすると言うものだ。
国からの支援も直接的に出される為、武器や弾薬などの物資は各班の指定された位置にパラシュート投下される。
なんともお金のかかる事だ。
三葉先生のテレビメッセージを見終えて5分後、ようやく物資の投下ポイントと討伐場所の通達が届いた。
物資の投下ポイントはここからすぐ近くにある小学校のグランド。
討伐場所は2km程離れた住宅街の一角だ。
「それじゃあ、行きますか。」
怠そうな声を上げ羽堂は歩き出す。
それに続くように1人1人歩き出す。
緊張感など無いに等しいだろう。
所詮相手はFランクだ。
大きな失敗をしない限り、怪我さえしないと言われている。
気楽に行こう。
そう心に決めた。
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