連なり
「『冒険者達の集い』ギルドの扱いですが、
『みんなの会』と同盟ギルドという形で
どうでしょうか」
議題は変わり、ミナが言った。
傘下ギルドでも発言権などは変わらないが、
同盟は相応の力を持っていると判断した場合に
使われる。
「僕等は、弱小ギルドになってしまった。
それでも、同盟という形で関係を維持して
もらえるんだね」
ヨシュアが言った。
弱小の表現は決して謙遜ではない。
少数精鋭と言えば聞こえは良いが、人数は
中堅レベルのギルドを下回っている。
「ヨシュアさんとユウキちゃんが、共同で
率いれば、また再興は可能なはずですから」
「すまない。元はと言えば、僕の積極性が
足らなかったのも形骸化の一因だ」
ヨシュアはリーダーの座であぐらをかいて
いた訳ではない。
ギルド復活の為にアクションは起こしたが、
思うように効果が出なかったのだ。
それでも自分を責めてしまうのは、彼の
真面目すぎる人間性ゆえだろう。
「そんな事言わずに。冒険者達の集いには、
プレイヤーの精神的支柱になってもらおうと
思っています」
ミナはヨシュアの志を酌んだ。
ギルドの名を掲げ、魔族に寝返った者達に
挑もうという心意気を。
「ギルドの運営はこちら、みんなの会が。
冒険者達の集いはプレイヤー達が集う旗印
として。いざこざで離れてはみたものの、
戻りにくかった者もいるでしょうから」
ユウキと同じような境遇にいるプレイヤーは
少なくない。
ギルドを日々憩いの場として愛していたが、
騒動でよそに厄介になって、そこに居ついて
しまった者が多数いた。
「……ミナ、ありがとう」
「おねえちゃん、俺からも。ありがとう」
「良いのよ。皆で手と手を取り合ってこそ、
みんなの会なんだから」
協力して楽しい時間を作る。
2つのギルド、その袂は違えど、ギルドの運営
理念に大差はない。
「みんなの会がより高みに上る為に、やはり
国王との謁見で公認を得なくては」
マキシが話を戻した。
今は中心に据えなくてはならない議題だろう。
「ちょっと良いかな」
ユウキが小さく挙手し、
「公認と言うのは、何を以って公認なんだ?
特別扱いしろとか、そういう訳じゃないだろ?」
それにはミナが答える。
「越権行為を許して欲しい、なんて言わないの。
私は公認そのもの、つまり国王が私達のギルドの
存在を認めている、という誰にも揺るがせない
事実が得たいの」
彼女は続けた。
「一国の王が認めている。これは、大きいわ。
免許とは言わないけれど、この一言が周囲に
与える説得力は、控え目に言っても絶大よ」
「ん、つまりなんだ、水戸黄門が持ってる印籠が
欲しいってのか? 控えおろうってなやつ」
くろうがカブの漬け物をかじりながら言った。
ミナは時代劇が好きなだけに苦笑する。
「王様の権力を笠に着て、という訳じゃないの。
国王が認めれば王都民も、誰からも認められる。
そうなれば白い目で見られる事は無くなるし。
公認の2文字は他国でも通用するはずだから」
ユウキはミナの考えを咀嚼してみた。
公認を受ければたちまちギルドの加入者は増え、
プレイヤーが一般人から信頼されるようになる。
それは集まったプレイヤーの結束を固め、一部の
心ないプレイヤーがいる事実を踏まえた上で、世間と
良い意味で折り合いをつけていく、良案だ。
だが彼女から急進的な空気も感じる。
この案は恐らくミナとマキシで考えたのだろうが、
ラジカルさが無いとは言い切れない。
「おねえちゃん、言いたい事は凄くよく分かるよ。
文句は何1つない。賛成だ。けど、その先に何を
目指しているの?」
「その先?」
「ああ。俺、何となく思ったんだ。今後の何かを
見据えて、公認が欲しいのかなあって」
ミナはマキシに目をやり、何か決意したように、
頷いて見せた。
すぅと大きく息を吸い込むと、
「ユウキちゃん、それに皆さん。隠すような事では
ないのでここで私の構想をお話します」
彼女に、室内の全ての目が集まった。
そして。
「私は世界中のプレイヤーを集めて、1つの連合を
組織したいと考えています」
「連合?」
「ええ。魔族に対抗するための、プレイヤー達の
集合組織。みんなの会を母体とした大規模な連合を」