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冒険者達の集い  作者: イトー
俺達は仲間になりたい
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絶壁巨乳の戦士達

 

 俺達は森の道を進んだ。

 奥にある村の生活道路としても使われている為、

獣道というわけではない。


 歩いているとせせらぎが聞こえてくる。

 森の中には最大で10メートル程の高低差が

あり、木製の橋を渡って、何メートルも下に

流れる沢を越える場面もあった。


 モンスターの強さがそれほどでもないので、

俺は警戒を解いて進む事にした。

 辺りを確認する姿を野良犬と呼ばれた事が

地味にショックだったのもある。


 クエストに加わる2人との合流ポイントへ

向かい、俺達は歩みを進める。

 2人組らしいのだが、俺はその2人をまだ

見た事がないのだ。


 俺がアリシアの代わりに依頼を引き受けると

申し出たのとほぼ同時に、隣の街で2人が

依頼をやると申し込んだのだ。


 近隣の町同士でアドベンチャーズギルドは

クエストの情報を共有している。


 そのギルドの手違いで、1つのパーティー

として4人が登録された為、途中で合流して

村へ向かう事になったというわけだ。


 初級神官と軽剣士ライトソードだという

から、4人が組めば能力的にバランスの取れた

パーティーになるだろう。


 アリシアはこの事についてどう思っているの

だろうか。

 俺は確認してみようと、後ろを歩く彼女へと

振り返った。


(もぐもぐ)


 えっやだ、ちょっと、何この子。

 俺は驚いた。

 衝撃のあまり、頭の中でオネエみたいな表現を

してしまうほどに。


 彼女はパンを食べていた。

 ペッパービーフ、フレッシュチーズ、レタスを

たっぷりサンドしたパニーニだ。


 味のしっかり付いた牛肉に、コクがありながら

さっぱりとしたチーズが絡み、そこに瑞々しい

レタスのジューシーさが加わり、それらの旨味が

口の中で渾然一体となって──。


 思わず味を想像してしまった。

 いや、そんな事はどうでもいいのだ。

 何で唐突にパンを食べてるんだ?

 今11時だから早めの昼食なのかもしれないが。


 アリシアは動じない様子で咀嚼を終えた。

「……何?」

「何って。いや、いきなりパン食べてたから」


「万全の状態を保つために、食事を取ってたの。

空腹で動けなくなる前に適度に食べて、喉が渇く

前に適宜に水分を摂るのは大切でしょ」


 正論だ、間違ってない。

 でもそれは、食いたい時に食い、飲みたい時に

飲むのと同じじゃないか。


 彼女は雲のように生きているのか?

 ソロ期間が長いからか、随分と自由な発想だ。

 ぐぬぬ、ちょっとかっこいいじゃねえか。


 何故か俺に対抗心が芽生えた。

「その通りだ。戦士は休める時に休むのも仕事

だってよく言うしな。俺も食える時に食って、

寝られる時に寝るようにしている」


「それは食っちゃ寝してるだけでしょ」

「なんで俺だと自堕落みたいな扱いなんだよ」

「パッと見の雰囲気」

「視野を狭めた偏見は良くない!」


 悔しくて腹が減ってきたからバッグを漁ったが、

こんな時に限って携行食を切らしていた。

 これは飯テロと言う名のプレイヤーキルだ。



 そうこうしながら沢沿いの道を歩いていると、

合流ポイントである立て看板が見えてきた。

 看板の裏側に、恐らく俺等を待っているであろう

2人の人影を見かけ、そこまで急ぐ。


「はじめまして!」

 1人が元気良く手を挙げて挨拶し、もう1人は

無言で立っている。


 どんな屈強な男達が待っているのかと思ったが、

2人とも女性だった。

 それも俺と年齢は大差ない。


「こんにちは! 初級神官のモモです!」

「はじめまして、モモさん。タツキです」

 完璧なタイミングで俺は挨拶を返す。


 モモは一目で神官だと分かる格好をしていた。

 修道服と見習いのベールという、神官になると

貰える防具セットだ。

 色は数種類から選べ、彼女の服は桃色だった。


 外見は13、4歳くらいで、華奢で小柄。

 髪の色は明るい栗色で、ベールの膨らみから

して頭の上に耳がある。種族は獣人のようだ。


 くりくりしたあどけない円らな瞳をしていて、

小動物的な可愛らしさを醸し出している。

 しかしそのボディラインは壮絶な絶壁であった。


 きっと木に生まれていたら、伐採されてから

上等なまな板になった事だろう。


 彼女がもし山だったら、登頂に挑んだ多くの

登山家の命を、その絶壁で奪っていたはずだ。

 そんな想像が(はかど)るほどの平たさであった。


 一方、もう1人はグラマラスである。

 こちらにも初対面の挨拶をせねばなるまい。

「はじめまして、タツキです」

「……」


「あ、トオコさんはあまり喋れないんです!」

「喋れない?」

「トオコさん、BOTボットなんです」

「BOT? ああ、徘徊BOTってやつか」


 BOTとはプログラムで動くキャラクターだ。

 オンラインRPGで、ドロップで入手可能な

レアアイテムを手に入れるには、それを落とす

敵を延々狩り続けなければならない。


 当然、撃破数は狩り時間に比例して増えるが、

全く休まずに毎日プレイする事など不可能。

 そこで、自動で敵を倒し続けられるBOTが

狩り場へと投入される。


 だがBOTは違法行為だ。

 そんな風に無制限にアイテムを集められたら、

ゲームバランスは崩れ、相場も混乱する。


 何度も取り除かれたBOTだが、この世界に

プレイヤーが来た時、同じように来てしまった

らしいのだ。


 BOTは外見こそ人間とそっくりだが、まるで

命令を忘れたアンドロイドのように、うろうろと

狩り場だった場所をさ迷っている。


 モンスターとは戦うが、人には危害を加えない

らしく、希にだが親鳥を見つけたヒナのように

プレイヤーについて来る個体もいると言う。


「この世界に来たばかりの頃、草原で見つけて、

それから一緒にいるんです。名前が数字の10

だったんで、トオコって名付けたんですよ!」

「なるほど」


 外見はキャラ作成した者の趣味なのだろう。

 年齢は16、7。目は無機的で曇っている。

 髪は明るい赤色で、頭にはカチューシャ。

 リボンで結わえられた豊かなツインテールが

腰の下まで伸びていた。


 過剰なほどフリルがあしらわれ、腰に大きな

リボンが付けられた、肩にパフスリーブのある

ミニスカメイド服、足はニーソに覆われている。

 そして隠しようのない爆乳である。


 大きく開かれたデザインの胸元からは、胸の

上半分が露出していて、布をあと3センチも

下げれば、見えちゃいけない見えると嬉しい

部分が見えてしまう。


 腰はコルセットで絞ったようにキュッと細く、

対照的にお尻は肉付きが良さそうで、太ももは

絶妙なムチムチ加減と言える。


 某頭痛薬は半分が優しさで出来ていると言うが、

彼女は大部分が『けしからん』で出来ている。

 素直な感想を言うなら、大変エロい格好だ。



 そんな風変わりな2人にアリシアは、ぼそりと、

よろしくと言った。

 メンバー増員にまだ抵抗があるのかもしれない。


「モモさんにトオコさんか」

「モモでいいです」

「分かったよ。今日はよろしく。隣の街では、

どんなクエストや冒険をやっていたんだ?」


「私は今レベル17で、1人で冒険する以外は

ずっと荷物運びばかりやってました!」

「荷物運び?」


 荷物運びは最初期に、初心者が回復アイテムを

買う程度の路銀を稼ぐためにやる、クエストと

言うよりミニゲームみたいなものだ。


「なんで? 神官なら回復役としてお呼びが

かかるんじゃないか?」


「私は、あまり仲間として連れて行ってもらえ

なくて。だから経験は少ないですけど、今日の

依頼は頑張ろうと思っています!」


 連れて行ってもらえない?

 パーティーでマナーが悪そうな感じはしないし、

神官ならどんな局面でも居てほしいものなのに。


 疑問に思ったが、会ったばかりで根掘り葉掘り

聞くのもあれだし。

 俺達は隊列を組み、村へ向かって出発した。


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