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冒険者達の集い  作者: イトー
始まり
6/173

仲間

 

 7、80メートル先の、道から少し横に入った所。

 低い茂みにしゃがみこんで何やら手を動かしている者がいた。


「あれ、アキノじゃないか」

「ん……そのようだな」


 おーい、と声を掛けながら歩いていくと、気付いたのかその場で立ち上がった。


 腰まである茶色の長髪に白いローブ姿で、その上から短いケープを付けている。


 スマートだが、出るべき所はしっかり主張しているプロポーション。


 ローブの上半身はゆったりとしていて、下はミニスカート状になっている。


 足元は羊毛のブーツ、脚はニーハイソックスに包まれ、腰のベルト部分にはポシェットが付いていた。


 アキノは手を振って2人を出迎えた。

「ああ、やっぱりアキノだ」

「久しぶりって言えば良いのかな、ユウキ。こっちで会うのは初めてだけど」


 アキノはユウキがゲーム内で組んでいたパーティーのメンバーで、リュウドとも冒険を共にしている。


 半月ほど前、アキノが別のパーティーに助っ人として呼ばれてから、一時的にメンバーから外れていた。

 ユウキが遠くからでも分かったのは、ゲームで面識があった為だろう。


「久しぶりだな、アキノ」

「リュウド久しぶり。リザードマンって、近くで見るとすごいね」

「皆、同じリアクションを取るのだな」


 リュウドは唇の無い口を尖らせる。

 この辺りにいるリザードマンはまだリュウドだけのようだ。


「アキノはどこからスタートしたの? 俺達は王都の東なんだけど」

「え、そんな近くにいたんだ。私は西」


「助っ人として、サルマクレアにいたのではなかったか?」

「こっちの世界に来る前の日、助っ人の役目を終えて現地でパーティーから離脱したの。取り敢えず王都に戻ってきてソロでログアウトしたんだけど。2人はてっきりアップデートされる地方にいるもんだと思って」


 探し合えばすぐに合流できる距離にはいたのだろう。

 だが、偶然で再会出来るかと聞かれたら、王都は広過ぎる。


「ところでさ、何でこんな所に1人でいたの?」

「材料集め」

「材料集め?」

 ユウキが鸚鵡(おうむ)返しで聞いた。


「うん、急にマジックポーションが値上がりしたでしょう? だからこの辺にある薬草で自作しようと思って」


 この辺りはモンスターの強さに比べて、質の良い様々な野草が多く生えており、薬品調合の素材として薬師や錬金術師の穴場なのだとユウキは以前聞いた。


「ホントはパーティーを組みたかったけど、落ち着いた頃には皆、遠出の旅に出ちゃって、あぶれちゃってたの」


 アキノは人間で、職業は上級白魔法使い。

 白魔法使いは回復魔法と治癒魔法が使えて神官と似ているが、薬草や植物から薬を作れる薬学スキルを持っている。


 薬師には及ばないものの、自作の薬は市販品よりも性能が高く、短時間だが能力をブースト出来る物もあり、何かと重宝する。


 採取スキルで材料になる野草を採るのだが、このスキルがあると、薬草やきのこなどを見た目や匂いで判別できるらしい。

 ユウキの目には、全部同じような草にしか見えない。


「ここに来るまでに、モンスターとのエンカウントは?」

 とリュウド。


「最初は苦戦したけど、これで全部やっつけた」

 アキノはベルトに差したロッドを触る。


 30センチほどのロッドは伸縮し、伸ばすと120センチほどになり、精神力を込める事で、先端から光で作られた槍のような穂先が出る。


 アキノは戦士職で槍術スキルを取得済みで、肉体面にもステ振りをしているので、白魔法使いの中で近距離戦も可能な白魔法槍タイプに分類される。


 レベルも110あり、戦い慣れすればこの辺は楽なものだろう。


「2人はどうしてこんな所に来たの?」

「ちょっと事件があってさ」

 ユウキ達は広場での出来事やリンディとのやり取りを説明した。


 ルイーザ死んじゃったの、とアキノはプレイヤーなら当然の反応をした。


「この世界の人間って、自動で復活したり、蘇生魔法で生き返らないんだね」

 言われてみればそうだなとユウキは思う。


 回復魔法は効果があるらしいが、息の根が止まったらそこまでのようだ。


 巨人に殴り潰されたり、爆発魔法でズタズタになっても、当たり前のように生き返る異界人が生命の摂理に反しているだけだが。


「ユウキ達はその捜査の手伝いって事ね」


「ああ、オークの村までな。ところでアキノ、良かったらパーティーに入らないか? 組んでた者同士なら、意思の疎通もしやすいだろうし」


「私達は後々カーベインまで行く予定がある。回復役がいれば心強い」

 そんな改まった言い方しなくて良いよ、とアキノは首を振る。


「こっちも願ったり叶ったりだから。また宜しくね」

 ユウキはアキノからパーティー加入申請を受けると即承諾した。


 パーティーメンバーのウインドウにアキノの名前と顔アイコンが追加され、HPと状態が表示される。


 セレスティアルロッド、白のローブ、ホワイトケープ、守護道士の腕輪、聖羊のブーツと装備はレベル相応の物だ。


 ユウキは思わぬタイミングでの再会に喜んだ。

 それと同時に、面識ある他のプレイヤーの行方が気になり出していた。



 マップの構成からして、オークの村はもう目と鼻の先だ。

 あと数百メートルと進まないうちに、見えてくるだろう。


「雷の話、聞いた事がある?」

 とアキノが尋ねた。2人は知らないと答える。


「私達がこっちに来た時、キャラの体に魂が入った時って言えば良いのかな。その日の少し前に、色んな所で激しい落雷があったんだって。それがあった後、アドベンチャーズギルドの転送魔法陣とか移動魔法が使えなくなったって」


「その雷、何かしら理由があるんだろうな」


 多くの謎の一部は、カーベインに着けば分かるだろうとユウキは考えている。


 それから3人は他のギルドや知り合いのパーティーが現在どんな状態にあるのか、オークには何を聞こうか、などと雑談しながら歩いた。


 そして開けた場所へ出た、その時、

「ガフッ!」

 と力強い鼻息が聞こえ、茂みからモンスターが飛び出してきた。


 ドラム缶のような胴体に牙を持つ頭とゴワゴワした毛皮を持つ、イノシシをモチーフにしたワイルドボアだ。


 しかも続けて飛び出してきたその数、5体。

 こちらと向き合っても逃走を図る様子は無い。


「これを退ければもう村だ、やるぞ」

 とリュウドが刀を抜き、

「援護魔法は使わなくても平気よね」

 アキノがロッドを槍状に展開させる。


 ユウキもワンドを右手に持ち、構えた。

 ワイルドボアは突進と牙と噛み付きしか攻撃手段を持たない。どれも容易く対処が可能だ。


 最初の1体目が蹄で地面を掻いてから、突進した。

 標的とされたリュウドは構えを八双から上段へと変えると、刀身を微かにきらめかせてワイルドボアと擦れ違った。


 交差の瞬間、ボアは鋭い一撃で額を割られ、つんのめるように倒れて消滅。


 続く2体目はアキノに接近を試みるも、薙刀の要領で胴体を薙ぎ払われ、突進した3体目も、

「やあっ!」

 と気迫の突きで倒された。


 山中に分け入り、1人でモンスターと戦った実力は本物だ。


 次の4体目をユウキはサーチスキルで調べる。

 これはもう無意識に行う習慣のようなものだ。

 表示された数値を見て、ユウキは違和感を覚えた。


 ワイルドボア レベル21


 通常時に出てくるレベル設定は平均で15のはずだ。

 しかも普通は集団で出現するとは言え、5体も一緒に出てこない。


 頭の中のデータと照合し、ユウキの齟齬は一瞬で解決した。

 ああそうだ、この出現パターンは──。

「エリアボスが来る、こいつらボスのお供だ!」


 メキメキ、バキバキバキ


 ワイルドボアの群れが現れた茂みの奥から、木をへし折り、薙ぎ倒す音が鳴り響いた。

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