アルス救出へ
ユウキ達は二手に分かれた。
クレマン一行は既に1キロほど先を進んでいる。
馬を走らせずに、現場へ向かっているようだ。
リュウドは一定の距離を保っての尾行を考えた。
まず忍者で会得した隠形術系スキルを使用する。
広く一般に隠れ身と呼ばれる術で、スキル使用中は
影だけを残して姿が消えてしまう。
特定の魔法やスキルを使われると看破されてしまうが、
視覚で相手を探す敵の、目を欺いて行動出来るスキルだ。
続けて、同じく忍者で覚える早駆けを使い、猛然と
走り出した。
文字通り、SPを消費しながら
一定時間素早く移動できるスキルだ。
このスキルを最上位にまで極めると、走っている時は
高速で動く足が見えなくなる。
酷く漫画的な演出とも思えるが、移動だけでなく戦闘に
用いる事も可能な使い勝手の良い能力だ。
リュウドはあっという間に距離を縮めた。
最後尾から20メートル、尾行には丁度良いだろう。
街道沿いの林で隠れ身を解くと、適当なタイミングで
行商人や他のプレイヤー達に混ざり、後を追い始めた。
別にクレマン達に顔が割れている訳ではないので姿を
隠す必要は無かったが、物凄い勢いで道を走り抜ける
リザードマンはとにかく目立つ。
それが自分達の真後ろでピタリと止まって歩き出せば、
誰であろうとおかしいと気付くはずだ。
あくまで旅のプレイヤーを装わなくてはならない。
あと数キロで、受け渡しの場所である三つ岩に着く。
一方ユウキ達は、南の森に向けて街道を進んでいた。
早めに歩けば時間的に余裕はあり、こちらも5キロと
行かずに目的地の屋敷へと辿り着ける。
気楽に、とは言えないものの、決して重々しくはない
雰囲気で歩いているとラリィが口を開いた。
「考えてみるとよ、お嬢の身代金はやっすいな」
50万ゴールド、円に直せば約5000万円。
大金は大金だが、それは払う側の資産額にもよる。
「うん、確かにね。世界有数の紡績業メーカーだっけ?
そこの一人娘をさらったにしてはかなり安いかも」
「この倍、いや4倍ふっかけても払いそうなもんだがな」
「身代金集めに時間を取られると困るからじゃないか」
ユウキが言った。
「身代金の準備に時間がかかれば、それが長引いただけ
捜査の時間を与える事になる。犯人はそういう面倒事を
避けたくて50万で妥協したのかもしれない。もしくは、
提示した額で十分だと思ったか」
「そういうもんか。馬鹿みてえにふっかけて、おじゃんに
なるのが1番まずいやり方だからな」
「クレマンさんは万が一のためにいつも50万ゴールドを
持ってるって言ってたから、準備は凄く早かったのよ」
「出せと言われてポンとそんな現金を出せるってんだから、
金持ちは違うわな」
会話を聞きながら、ユウキは何か引っ掛かった。
要求された50万と常備されていた50万。
この数字の符合は偶然の一致なのだろうか。
誘拐犯が、金満家が家に置いておく平均額を予想した上で
金額を決め、それが合っていただけなのか。
もしそうならグロリアス家とベルカー家、資産家が2つも
揃っているのだからもっと上乗せしても良さそうだが──。
「ユウキどうかした? 難しい顔して」
「いや別に。ちょっと考え事してただけだ」
それから1時間とかからず、森へ入る横道に辿り着いた。
「これ、荷車の轍だな」
ユウキはしゃがみ、ごく最近出来たと思われる跡をなぞる。
車輪の跡は街道でもよく見かけるが、近道でも何でもない
森の中へ入っていく商人などいないはずだ。
とするとこれは──。
「ここを少し行きゃあ、屋敷が見えてくる。森のどこかに
犯人がいるとも限らねえ。あたしが先頭で行くぞ」
シーフ職で得られるパッシブスキルの警戒は、一定範囲の
モンスターや敵対プレイヤーを察知する効果を持つ。
深い森でないとは言え、このシフトで進むのが最適と言える。
3人は注意深く進んだが、無害な鳥タイプや昆虫タイプの
モンスターがいるだけで犯人らしき者は見当たらない。
どこからか滝の音が聞こえてくる辺りに来ると、
「あれがそうだ」
とラリィが言って指差した。
4、50メートル先、開けた所に2階建ての屋敷がある。
庭とされる部分は整地され、周囲の木々は剪定されている。
ユウキは朝行った豪邸より小さめだなと思った。
だがその感想は、ユウキ達が招かれた屋敷に比べれば小さい
というだけで、左右に広い造りのこの別邸は、建坪だけでも
一般的な庶民が住む家屋の5倍はある。
「あれが盗まれた荷車じゃないかな」
アキノの言う通り、ポーチの近くに古びた荷車があった。
さらった者をあれで運んで来たのだろう。
「おい、突っ立ってると目立つ。そこの岩に身を隠すぞ」
ラリィが顎を向けた方には苔生した岩があった。
ひさしのような出っ張りと窪みがあり、近付かれなければ
隠れている事は分からないだろう。
ユウキはリュウドへのチャットウインドウを開く。
(こっちは屋敷のそばまで来た。これから中を確認する)
(こちらも指定の場所に着いた。クレマン達は時間まで
待機するようだ。確認が済んだらまた連絡を頼む)
現状の報告だけすると、ウインドウは閉じられた。
「ラリィ、屋敷の中を確認してくれ」
「おう、任せとけ」
彼女は岩陰から頭だけ出すと、指輪に手を添えて意識を
集中させ、屋敷を注視した。
指輪にある瞳の意匠が淡い光を放ち出すと、
「よし、来た」
ラリィの目には、屋敷が3Dワイヤーフレームで描かれた
設計図のように見え始める。
間取りまでくっきりと分かり、見事に透視されていた。
玄関から入った先にはエントランスホール、吹き抜けで
階段は左側に1つ、階段左のドアはダイニングでその隣は
使用人が使うキッチンとなっている。
エントランスの右側には手前と奥にドアが1つずつあり、
その先は廊下になっていてそれぞれ部屋がある。
手前側の部屋にラリィは注目した。
そこにはサーモグラフィー映像のように、青くぼんやり
色付いて見える人間の輪郭がある。
「見つけたぞ、背丈から見てアルスだ」
「どの部屋にいるか分かる?」
「手前の──ここから見て1番右側の窓がある部屋だ」
そう言ったラリィが、ん? と声を上げる。
「奥の部屋に見えるのは……あのシルエットからして
例の3人組か。奴等、警戒するどころかちっとも動かねえ。
余裕こいてのんびりしてやがんな」
「相手があの3人だけなら大分楽だ。でオーレリアは
見当たらないか?」
「……いねえようだ。もう連れ出された後かもな」
頭を引っ込めると、ラリィはチャットウインドウを開いた。
(アルス、聞こえてるか?)
(ラリィさん。大丈夫です。まだ体は動きませんけど)
(今屋敷の前まで来てる。お前の居場所も把握済みだ)
(ああ、すみません……ありがとうございます)
(情けねえ声出すな。条件が揃ったらすぐ助けに行くからな)
(ありがとうございます。……面倒をかけてすみません)
(仲間助けるのに面倒だなんて思う奴がいるか、バカ野郎)
ラリィは一方的にウインドウを閉じて、向き直る。
「こっちは準備万端だ。後は向こうの動き次第」
ユウキは頷き、再びリュウドに繋ぐ。
(リュウド、確認した。屋敷にはアルスとあの3人組が
いるだけだ。人質は、オーレリアの姿は確認出来ない)
(了解した。あと少しで受け渡しの時刻になる。こちらと
繋いだままにしておいてくれ)
リュウドはウインドウを最小化し、視界に集中した。
身代金の受け渡し場所である、三つ岩。
名前は付いているが特に謂れや伝説などがある訳ではない。
街道沿いの雑木林の中に巨岩が複数転がっている場所があり、
その中で単に同じ大きさの岩が三つ並んでいる地点だからと
そう呼ばれているだけだ。
観光名所でもないので6人がまとまっているのは目に付く。
馬を休ませているふりをしながらクレマンは約束の時間を
待っている。
リュウドは再びスキルで透明化し、20メートルほど離れた
茂みから片膝を付いた格好で様子を窺っていた。
クレマンの手には、遠くからでもずしりとした量感が見て
取れる布の袋があった。
中身は身代金、1000ゴールド硬貨で500枚。
硬貨のサイズは500円玉より一回り大きいくらい。
袋に詰めてもそれほどかさ張るものではない。
貨幣の最低単位は1シルバー、これが100枚で1ゴールド。
広く流通している硬貨の種類は1・5・10・50・100と
価値ごとにそれぞれあって、1000ゴールド硬貨は家などの
大金を使う買い物の時に使う。
なので一般人にとっては日常的にはあまり馴染みがない。
より高額な紙幣や手形などもあるが、それは大部分が商人の
取引専用の物で、その辺の店で使えるお金とは別物だ。
そういう意味で1000ゴールド硬貨は、クレマンが想定して
いた万が一、つまり身代金などには打って付けと言える。
「金は持ってきたようだな」
突然響いた男の声に、その場にいた全員に緊張が走る。
リュウドがチェックしていたステータスウインドウの時計は
今丁度1時を示している。
受け渡しの時間だ。
声の主は、慌てる6人から15メートルほど離れた岩の裏から
現れた。
身長は180センチほど。フード付きのローブにマスク、手袋と
露出は一切無い。
今分かるのは、声からして若い男であると言うこと。
リュウドは男の頭上に集中して、名前を確認しようとした。
だが、コンフィグウインドウで表示をさせない設定に変更して
あるらしく、何も読み取る事は出来なかった。
「お前が娘を!」
クレマンが叫ぶ。
「そうだ。見ての通りだよ」
男が自分の出てきた岩陰に手を向けると、
「ああっ! オーレリア!」
おぼつかない足取りでオーレリアが姿を現した。
青いイブニングドレスはパーティーに出席した際の服装か。
眠らされていたのか監禁されていたのか、それは分からないが、
顔色が悪く、表情も乏しい。
(ユウキ、誘拐犯と、オーレリアが現れた)
(……ああ)
一言だが重苦しい返事。
リュウドはユウキの息を飲む音まで聞こえた気がした。
「お前らは一体何者だ!? 何が目的でこんな」
「俺達はアントニーに恨みを持つ者の代理、そのまた代理か。
理由は手紙にある通りだ。奴がどんな男かはお前の娘によく
教えてある。後で聞いてみるのだな」
余分な話はいいだろう、と男は話を切り上げた。
「さあ、早速だが身代金を渡してもらおう」
「金を払えば、娘は返してもらえるんだな?」
「安全は約束すると伝えたはずだ。さあ、こちらに投げろ」
男の要求に、クレマンは1度自分の後ろに並ぶ従者達を見て、
それから力いっぱい袋を投げ付けた。
弧を描くほどに角度は付いておらず、袋は男の数メートル
手前に、硬貨の擦れ合う音をさせながら落ちた。
男は音も無く近寄ると、それを拾い上げる。
「……確かに、50万ゴールドあるようだな」
中身を確認せずにそう言った。
宝箱等からゴールドを入手した際、手にした額がウインドウに
表示されるのもプレイヤーが持つ能力の1つだ。
「よし。おい、あの男の所まで歩いて行け」
男に指示されると、オーレリアはよろけながら、ぎこちない
足取りで歩いて行き、
「おお、オーレリア!」
クレマンに抱き止められた。
従者達も心配そうに駆け寄る。
(ユウキ、取引は一先ず上手くいった)
(それじゃあ)
(ああ、オーレリアは無事戻ったぞ!)
「オーレリアが戻った! 今だ!」
隠れているのも忘れて、ユウキが叫ぶ。
その声にラリィは矢のように飛び出し、ユウキとアキノも
後を追った。
ラリィが玄関に取り付き、2人が追い付いた時には既に
ドアの鍵は開錠されていた。
3人がエントランスホールに飛び込むと、
「右側のドア、その奥にある部屋だ!」
ラリィの先導で速度を緩めずに目的の部屋へ走る。
ドアを開け、絵画や調度品の飾られた廊下を走り抜けて、
アルスの監禁場所へと。
「アルス!」
バンと派手な音を立て、弾くようにドアを開けた。
使用人の寝室と思しき、こぢんまりした部屋の中で彼は
ベッドに寝かされていた。
ただベッドの上に転がされているだけかと思っていたが、
外された剣と鎧とブーツは揃えて足側に置かれ、アルス
本人には掛け布団まで掛けられていた。
まるで賓客のように丁重に扱われていたかのようだ。
「アキノ」
「うん、キュアスリープ」
魔法が唱えられ、青い光がアルスの頭を包み込む。
うぅ、と少し唸ると、アルスはゆっくり目を開けた。
「……か、体が動く。あっ皆さん!」
焦るように上体を起こすアルス。
そこに眉根を寄せるラリィが近付き、右手を振り上げた。
身勝手な行いと失態、リーダーに殴られるのは当然。
アルスはそう自覚したのか、顔を逸らさない。
だが。
「このバカ野郎!」
ラリィの右手はアルスの後頭部を押さえ、そのまま
ガバッと自分の胸へと抱き寄せた。
アルスは何が起こったのか分からない。
ただ豊満な胸に顔を埋められ、呼吸を奪われんほどに
力強く抱擁されている。
「お前な、余計な心配させるんじゃねえよ!」
ラリィは言いながら、髪がくしゃくしゃになるくらい
アルスの頭を撫で回す。
それは撫でると言うより、頭をぐりぐりと掴んでいる
動作に近いが仲間への愛情表現に相違ない。
「ラ、ラリィさん、も、もういいです。分かりました。
分かりましたから」
アルスの反省を聞き入れたラリィは最後に少しきつめに
抱き締めた後、解放してやる。
深呼吸して髪を直しながらアルスは、
「皆さんが来てくれたという事は、オーレリアさんは
戻ってきたのですね」
「そうだ。こちらに誘拐犯達が戻ってくるかもしれない。
早く脱出しよう」
ユウキに言われて跳び起きたアルスは、剣と鎧とブーツを
素早く装備した。
自力で回復しつつあった中、魔法で異常を取り除いたので、
いつも通りの機敏さを取り戻しているようだ。
「せっかくだ。あの3人組をここでやっつけちまおう」
部屋を出ながら、ラリィが言った。
ユウキ達が屋敷に駆け出したのと同じ時。
従者達がローブの男を取り囲んだ。
手にはそれぞれ、上着に潜ませていた金属製スティックが
握られている。
屋敷にいなかったリュウドは知る由も無いが、あの場にいた
警官達が従者のふりをしていたのだ。
「そういう事だろうと思ってたぜ」
囲む者達は武術や魔法に、腕に覚えのある精鋭なのだろう。
じりじりと犯人への距離を詰めていく。
「ホールド!」
2人がスティックを杖代わりに魔法を放った。
魔力で編んだロープで捕縛し、麻痺状態にする魔法だ。
男は放たれた光線をわけもなく避けると、ほんの一瞬で、
詠唱した1人に肉迫していた。
掌を突き出す掌打を胸に当てると、手が微かにフラッシュ
して警官はばたりと倒れる。
その隙を狙って後ろから飛び掛った者は、素早い後ろ蹴りで
武器を落とされ、同じく光る掌打を受けて崩れる。
残った3人が同時に向かっていくが、スティックでの攻撃を
全て軽く捌かれ、皆掌打の前に倒れた。
魔法が放たれてからものの10秒足らずで警官達は全滅。
誰一人としてピクリとも動かないが、強打で昏倒した訳でも、
ましてや死んでもいない。
5人とも眠ってしまっている。
魔法戦士タイプか、とリュウドは相手の能力を見抜いた。
男の打撃はアザさえ残らないほどに威力を加減されていたが、
打ち込むと同時に睡眠魔法を直接かけていた。
物理攻撃と魔法を器用に同時使用するのは魔法戦士系だ。
「怪我人は出すなと言われてるからな」
呆然とするクレマンに男が告げた。
自分がここで助太刀をするべきか、リュウドが判断しかねて
いると男は6頭いる馬の方へと歩いていく。
そして両手から光球を打ち出すと、それに当たった馬は次々
脚を曲げ、体を横にして眠ってしまった。
誰かに事態を伝える、移動力を奪ったのだ。
「う、うわ! どうしたのだオーレリア!?」
クレマンの叫び声にリュウドは視線を戻す。
大口を開けて嘆くクレマンの横で、オーレリアの体が白煙を
吹いてしぼんでいく。
それはまるで空気が抜けていくビニール浮き輪のように。
そのままオーレリアだったものは、どんどんサイズを縮小し、
最後に残ったのは継ぎ接ぎだらけの不細工な人形だった。
「な、なんだ!? これは何の魔法だ!?」
恐れおののくクレマンは人形を凝視する。
リュウドはあれが何なのか知っている。
デコイドール──モンスターからのターゲットを逸らす為に
主に緊急避難用としてプレイヤーが使うアイテムだ。
一定時間使用者の姿となり、簡単な命令で制御してオトリに
使うというものだ。
姿形は彼女そのものだったが、どこかぼんやりとして見えた
のは本物では無かったからだ。
リュウドは悔やんだ。
こんなチープなトリックにまんまと引っ掛かってしまった事を。
「娘は!? オーレリアはどこにいるんだ!?」
「安心しろ、身代金を出せば安全は約束すると言った。しばらく
したら娘は返してやる」
男は大きな岩の裏に走り込むと、隠していた馬に飛び乗って
西へと駆けて行った。
その後ろ姿を、クレマンは怒号とも悲鳴ともつかない声をあげて
見送るしかなかった。
リュウドは飛び出していく機を逸し、ギリッと奥歯を鳴らす。
後悔しても仕方ないと、チャットウインドウを広げる。
(すまない、犯人にしてやられた)
(え、どうしたんだ? こっちはアルスを助けたとこで)
(オーレリアは戻っていない!)
(どういう事だ、さっき戻ったって)
(現れたオーレリアはデコイドールを化けさせた偽物だった。
すまない、見抜けなかった!)
「なんて事だ……」
エントランスホールに戻るドアの前で、ユウキは連絡を受けた。
「リュウドのほうで何かあったの?」
「オーレリアが偽物だった」
「ニセモノってなんで、そっくりな人でも連れてきたの?」
「いや、デコイドールで仕立てた偽物で、犯人も身代金を持って
馬で逃げてしまったと」
4人は顔を見合わせた。
オーレリアが戻らない状態ではアルスを助けてはならない。
最初にそう決めた大原則を破ってしまったのだ。
かと言って、今更アルスをベッドに戻して何事も無かったように
振る舞うというのも無茶だ。
金は約束通り支払われたが、アルス救出が何に影響を及ぼすか。
「ここで考えても仕方ねえ、とりあえず出るぞ」
「ああ、そうだな」
自分達は行方不明になった仲間を見つけに来ただけで、誘拐とは
何ら関わり合いを持っていない。
その言い分が相手に通る事を祈るか、あるいはオーレリア救出に
尽力するしかない。
「出よう、これからの事はここを──っ」
そう言いながらドアを開けたユウキは、言葉を継げなかった。
一体いつ入ってきたのか。
見た事もない2人のプレイヤーがホールにいた。