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冒険者達の集い  作者: イトー
グランピット
172/173

秘法石の洞窟

もったいないので、話を更新。

 

「ここが秘法石の洞窟」

 洞窟内に入ったユウキが呟いた。

 大部分が苔むした岩の壁。

 入口から20メートルと進まずに

外部からの光は届かなくなる。

 横幅は約十数メートルほどあって

圧迫感はそれほどなく、見上げても

天井は見えない。

 暗さを差し引いて考えてみても、

頭をぶつけるような低さではないと

予想できた。


「トーチ!」

 アキノが照明となる光球を作り出す

 トーチを唱えた。

 明かりがなければ躊躇(ちゅうちょ)なく即使う、

補助役の義務とも言える魔法だ。


 だが、いつもと様子が違う。

「あれ、なんだか普段より光りかたが

弱いような」

 頭上に街灯が設置してあるかのような

明度を生み出すトーチだが、今彼等を

照らす光はロウソク数本分程度だ。


「ああ、説明してなかったね」

 そう話し始めたラディアスに3人の

視線が集まった。

「この辺りの土地は少し特殊でね、

ルージェタニア出身者以外が使う

魔法の効果が弱まってしまうんだ。

慣れれば本来の力を発揮できる

ようになるが、まあ初めてでは

難しいだろう」


「現地についてからそんなことを

言われても」

 ユウキが思わず本音を漏らした。

 パーティのメンバー編成から見ても

戦士系1魔法系2という魔法寄りの

バランスなのだ。

 負わねばならないデメリットは

思いのほか大きくなる。


「どうして言わなかったのかって? 

そんなことは些細なことだからだ。

なんたって、僕がいる」

 そう言うとラディアスは、(てのひら)から

光球を放った。

 本来のトーチよりも強く光りながら、

それは頭上2メートルの高さまで飛んだ。

 呪文や予備動作もなく魔法を使える

とは、さすが魔法大国の王子といった

ところか。

 これだけで彼の実力がうかがい知れる。

 自信ある態度も、はったりなどでは

ないようだ。

「さあ行こう。最短ルートで案内しよう」

 光球の白光が前方を照らし出す。

 闇を白く切り取られた洞窟の奥へと、

彼ら4人は歩き始めた。




 わりと普通だな。

 10分ほど歩いたところで、ユウキは

そんな評価をこの洞窟に下した。


 通路が(せば)まったり大きなアップダウンも

なく、王子が定期的に見に来ている

ためか、歩きづらくない程度には

障害物も取り除かれていた。

 幾つか分岐点もあったが、丁寧に

(しるし)がなされていて迷う心配もない。

 危惧していた原生するモンスターも、

時折気配を感じる程度で死角から

急襲されるような心配もなさそうだ。


 あくまで秘法石の入手が目的であり、

楽なことに越したことはないのだが、

どうにも緊張感を欠いてしまう。

 ユウキは攻略が難解な数多の洞窟を

制覇してきた。


 わずかな足場を踏み外そうものなら

荒れ狂うマグマの海に真っ逆さま、

というものから、氷山の内部にある

何もかもが凍てついた極寒の洞窟。

 白骨の山から絶え間なく構築された

スケルトンが次々に襲いかかってくる

ネクロマンサーの住み処もあったし、

地獄へと通じているという長大な

地下ダンジョンも最深部まで到達した。


 そんなユウキからすれば、今の状況は

あまりにも──

「退屈かい?」

 先頭を行くラディアスが振り向きも

せずに言った。

 ユウキの心を読んだかのように。


「いやその、なんというか」

「気にしなくていいさ、別に気分を

害したってわけじゃない。世界中の

迷宮を渡り歩く異界人にとっては

どうということはない洞窟だろう」

 案内を買って出てもらって悪いが、

その通りだった。


「それにしても、モンスターの姿を

まるで見ませんが」

 横からリュウドが聞いた。

 いかなるタイミングで襲われても

瞬時に抜刀する気構えは怠らない。

 静かな緊張感からそれが伝わった。


「今日はいつにもまして見ないな。

ここまで原生のモンスターが警戒して

出てこないのも、逆に不自然だ」

 ラディアスが足を止め、呟いた。

 前回いつ来たのかは分からないが、

違和感を覚えているらしい。

「今更だが、どことなく洞窟内の

雰囲気も普段よりとげとげしいと

言えなくもない」

 超が幾つも付くような美形を曇らせて

ラディアスが言った。

 その違和を深く突き詰めると思いきや、

「まあ、足を止めて考え込んでも仕方ない。

そのうち嫌でも見つかるんじゃないか。

何が原因なのかは」

 高度な予測なのか、当てずっぽうで

あるのか、それは分からなかった。


「さあ先を急ごう。ここをあと少し

(くだ)れば地下水脈ルートに当たる。

そこからは1本道、目をつぶってても

目的地に辿り着ける」

 ラディアスは軽い足取りで歩を進めた。

 だが彼の緊張感が静かに高まるのが、

3人には感じ取れていた。

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