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冒険者達の集い  作者: イトー
魔法の都ルージェタニア
159/173

新たな大賢人

 

 ぼこぼこと大群で姿を現したゴーレム。

 あっという間に20体以上が地面から這い出たが、

どれも人型として一定水準の形を維持していた。


 ゴーレムなどの、魔力で構築して術者が使役する

タイプのモンスターは、その使用者の力量が姿形に

表われる。

 腕のない術師では人型にすることは愚か、構築の

途中で体が崩れてしまうゴーレムもいるし、操る数に

比例して使用する魔力も多くなり、高クオリティを

保ちつつ数も用意できるとは、かなりの使い手が

作ったものだと推測できる。


「こんなの1体1体倒していったらキリがないぞ」

「そもそも、なぜこんな所にゴーレムの大群が

現れるのだ。岩山や岩石の多い地形ならともかく」

「ちょっと待って、様子が変よ?」


 ユウキは囲まれる前に逃げるか、壊滅させてやるか

で迷っていたが、アキノが何かに気付いた。

 その頑強な巨体で襲い掛かってくるのかと思われた

ゴーレム達だが、綺麗な隊列を組むと、全く動作を

しなくなった。

 まるで兵馬俑(へいばよう)のようである。


「なんだ? 何が起こった?」

 突然現れたくせに微動だにしなくなったゴーレムを

前に首を傾げていると、

「こんなところにわざわざ人が来るとはのぉ」

 しわがれた、それでいてどこか可愛げのある声が、

茂みから聞こえてきた。


 見えない力が草木をかきわけてスペースを作ると、

小さなおばあさんが現れた。

 身長は130センチほどで種族は妖人らしい。

 髪を頭頂部で団子にまとめているのが特徴的だ。

 しわくちゃでワシ鼻には度の強そうな眼鏡、腰の

曲がった正真正銘の老婆だ。


「ほりゃお前ら、いつもの役目はないぞ。土の中へ

戻るのじゃ」

 一声かけると、ゴーレム達は這い出てきた場所まで

のろのろと戻ると、まるで人が寝床にでも入るように

窪みの中へ身を崩しながら入っていった。


 ゴーレムの大群を大仰な術など使わず、声をかけた

だけで操りきってしまうこの老婆は。

 ユウキは確信的に予想できた。


「誰かが近付くと動き出すように設定してあるのじゃ。

あれは魔法の(まと)にするにはちょうどいいからのお」

 最後の1体が地中に納まったのを確認すると、老婆は

ユウキ達のほうへと向いた。


「物好きでも、こんなところまで来るものはおらん。

ぬしら、わしに会いに来たのかの?」

「はい。大賢人のかたとお見受けします」

「いかにも、そうじゃ。それで何故ここに?」

「ガーロナ、という大賢人に、ある特殊な防御魔法が

欲しいとお願いしたのですが、その分野に誰よりも

詳しい大賢人がいるからといきなり」

 飛ばされてきたのじゃな、と老婆は遮って言った。

 現在地は不明だが、そうでなくては来られないような

場所なのだろう。


「自分で教えずわしのとこに寄越すとは、特殊も特殊

なんじゃろうなあ。困る頼みでなければええが」

「お願いします。俺達、ルーゼニア王の願いを聞いて

ルージェタニアの城に伺ったんです」

「ほうほう、そうかえ。で、ぬしらの名は?」

「王から願いを託されたギルドの代表格の1人で、

ユウキといいます」

「旅路を共にする、リュウドと申します」

「同じパーティーのアキノです」


「ふむ。どんな頼みかは、後で聞くとして。まあええ、

久々の客じゃ。ついて来るとええ」

 老婆は茂みの中に入って行こうとするが立ち止まって

振り返る。


「名乗っておらんかったの。わしは大賢人メルセデスじゃ」

「メルセデス!?」

 ユウキが声を上げた。

 ルージェタニアに遠征すると聞き、この辺一帯の風土や

記録などを、事前に、設定集を読んだ記憶から思い出して

いたのだ。


「あのルージェタニアにこの人ありと言われた」

「まあ、そうじゃの」

「数百年前の魔族の侵攻を食い止め、押し返した戦いでは、

ルージェタニア双璧の魔女と呼ばれた2人のうちの1人」

「そんなこともあったのお」

「地に降臨した美の女神の化身とまで称され、求婚者が

毎日数キロの列を成したという、麗しのメルセデス……!」

「ほほ、この歳になってもその呼び方は照れるのお。よし、

茶と特別に茶菓子でも出してやろうかの」

 上機嫌でメルセデスはパーティーを先導し始めた。


 残念だけど、今は女神じゃなくて梅干しの化身だなあ。

 などと口に出せない本音を隠しつつ、ユウキは後に続いた。


メルセデスの外見と声のイメージは高木ハツ江おばあちゃん。

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