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冒険者達の集い  作者: イトー
魔法の都ルージェタニア
158/173

送られた先

 

「これであちらの用件はあちらで何とかするじゃろ。

さて、わしらはわしらで役目を果たすとしようかの」

 ユウキ達が消えた辺りを見ていたガーロナは、そう

言ってから、残った2人を見た。


 転送魔法は場所と場所のリンクが繋がっていなければ

発動できないが、それを瞬時にやってしまうのだから

さすが大賢人である。


「さ、ついて参れ。全ての記録と記憶があるとされる

大図書館に案内しよう」

 ふわふわと浮遊しながら、ガーロナは部屋の外へと

向かう。

 マキシとメリッサは顔を見合わせ、決意したように

後に続いた。





「ここは?」

 ユウキ達は転送魔法陣と似たような感覚をおぼえ、

次の瞬間には目の前に広がる景色が変わっていた。

 そこはまばらに木の生えた森の中だった。

 薄い朝もや程度の霧が出ているが視界は概ね良好、

気温も少し涼しいといったところだ。


「魔女のもとへと送られたのではなかったか」

 リュウドの言葉に、アキノがウインドウでマップを

確認する。

 表示から見て、ルージェタニア国内ではあるようだ。

「転送事故じゃなければ、近くにその魔女さんの家が

あるのかも」

 転送魔法の失敗により、目的地以外に飛んでしまう

ことが希にあるという。

 幸い、壁の中にワープしてしまうような事故は未だに

起きていないようだ。


 突然、地名さえ分からない場所に来てしまった。

 が、見知らぬ土地を歩き回ることなど、プレイヤーには

造作もないことである。

 ここが過酷な環境であったり、遭難したというわけ

でもない。

 割と軽い気持ちで、3人は散策を始めた。



 木々の合間を歩いていると、すぐに道を見つけた。

 獣道ではなく、人工的に整えられたものだと分かる。

 ここを辿っていけば何かしらの家屋が見えてくる

のではないか。

「とりあえず、このまま進んでみるか」

「しかしこのような辺鄙(へんぴ)な場所に住んでいるとは、

大賢人とは少し変わったものが多いようだな」

「設定だと個性的な面子みたいだから。大変人って、

運営がギャグで書いてたこともあったな」

 ガーロナの容姿や素性などからしても、世間で言う、

普通の範疇に入るものは少なそうだ。


 10分足らず歩き続けると、開けた場所についた。

 広さは野球のグラウンドくらいはあるだろうか。

 しかし森の中にあって、ここだけ全く草木の生えていない、

乾いた土と岩石が転がる不毛な土地だった。

 地面も所々が隆起したりクレーターになっていたりと、

今までの平坦な道とは大違いだ。


「なんだここ。自然にできたものじゃないよな……?」

「何らかの理由で、人為的に作られたものだと思うが」

「あの辺りの穴とか、どこか変ね。攻撃魔法か何かを

ぶつけたような跡みたい」


 変わった場所ではあるが、詳細な調査などしている暇は

ない。

 さっさと通り越して、その先に進もうと足を踏み入れた。

 その時である。


「じ、地震か!?」

 周辺一帯が震え始めた。

 地震と言えば地震なのだろうが、何かがおかしい。

 まるで何かのスイッチを入れたかのように、揺れだした

のだ。


 立っていられないほどではないが、冒険で染み付いた

クセで、周囲を警戒する。

 ふとユウキが数十メートル先の隆起していた場所に目を

やると、そこに地割れが発生し始めていた。

 それほどの揺れなのかと思ったが、そうではなかった。


 地割れではない。

 埋まっていた何かが、周りの岩石や土を集めながら、

地面から盛り上がってくる。

 蟻塚(ありづか)のようなそれは5メートルほどの高さになったところで、

バキバキと音を立てて亀裂が走った。

 その割れ目が入っただけで、ただの土くれの塊が、まるで

太い両腕を胴体の横につけた人の上半身のように見えた。


「……あの塊、独りでに動き出してるぞ」

 腕、に見えた部分が、腕そのものとして動き始めたのだ。

 手に見える部分を大地に押し当てると、人が水面から

出てくるように、地面から下半身が現れたではないか。


 下半身は厚みのある上半身に比べると見劣りするほど貧弱で、

プロポーションを近いものを挙げれば、ゴリラのようだ。

 申し訳程度に突き出した頭部らしき部分には目鼻などはなく、

足が短いため両手で体を支え、四つん這いになっている。

 地についた手から頭頂部までは6メートルほどか。

 この素材、無骨さ、これはどう見ても──。


「こいつゴーレムの類だろ。なんでこんな場所に!?」

 ユウキがワンドを構える。

 のしのしと両腕を使って前進してくるゴーレム。

 その背後では、後に続けとばかりに、雨後のタケノコの

如く、複数の隆起が生まれ始めていた。


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