表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者達の集い  作者: イトー
魔法の都ルージェタニア
151/173

目的

 

 謁見を終えたユウキ達はギルドの拠点に戻ってきた。

 もうそろそろ昼食の時間になる頃だが、食事を取る

前にこれからの予定を決めておかねばならない。


 会議室のテーブルには昨晩のメンバーと、ヨシュアの

パーティー、あの騒動からここで1晩の宿を借りた

フェリーチャがいた。

 それから久々に顔を出した、魔術師のメリッサだ。

 水色の髪に青いルージュという容姿は変わらない。

 双角の塔において妨害魔法の解除を担当し、その後は

ギルドの迷宮攻略に幾度となく同行し、活躍していた。



「国王様から直々に命令が下ったわけだけど」

 手紙を手に、ミナが切り出す。

「魔族の攻撃の時期が定かではない以上、一切猶予は

ありません。午後には出発してもらいたいんだけど、

旅立つ前に誰がどこへ行くか、何をすべきかの確認を

しておきます」


 ミナが視線を送ると、マキシが頷いた。

「ルージェタニアにはユウキさん達が。クラルヴァイン

はヨシュアさんのパーティーに担当してもらいます」

 この振り分けには一応理由がある。

 パラディンやグランドハイプリーストはクラルヴァイン

神国の承認を得て、その職にチェンジできる。

 そしてその格は神国の中において想像以上に高い。

 ヨシュアとエルザの地位と国王からの手紙があれば、

大抵の重要人物との接触が可能だ。


 消去法、というわけではないがもう一方にはユウキが

行くことになる。

 ルージェタニアは魔術師職の経験者なら必ず1度は

立ち寄る都市である。

 ユウキもゲームプレイ時は、希少なマジックポーションの

補充をするため、定期的に行っていた。


 両の国とも、最初は行くことが大変困難とされていたが、

転送魔法陣が復帰してからはグッとアクセスが楽になった。

 加えて、これらの国以外へも、王都から各地に向けて

様々なルートが開拓されている。

 この世界に来た頃は、馬鹿正直にゲームで覚えている

ルートを辿ってモンスターや地形に悩まされたものだが、

現在では、迂回はするがモンスターや難所が少ない安全な

ルートが確保されている。

 これもプレイヤー達が自身で切り開いた道と言えよう。



「私はルージェタニアに同行します。今まで解除して

きた妨害魔術の情報を術の賢人に報告し、魔術図書館の

資料とも照らし合わせてみれば、魔族達の迷宮が何を

意味するものなのか分かるかもしれません」

 ローブ姿のメリッサが言った。

 同行を希望したのは彼女自身だ。


 魔族の術の中には人間の史上には存在しないものも

多くあり、過去の前例や似たものがないかチェック

するのだという。

 彼女はいつしか、妨害魔術の解除と同時に、魔族が

作り出した迷宮の謎解きを己の役目としていた。

 それは正義感や義務感と共に、魔術師としての術への

探究心がそうさせたのだ。


「僕もルージェタニアに向かいます。賢者として、

解除術の1つも使えないようではこれから困る場面も

出てくるでしょうから」

 マキシが生真面目で勤勉な顔を覗かせる。

 魔法とは細かい大系で分かれていて、大半の魔法を

使いこなす賢者であろうと、覚えていない系統は

手付かずのものも多い。


「ユウキちゃんのパーティーにはレインも参加して

もらって。集めてくる情報は主に広域の防御魔法に

ついて。研究中の魔法でもそういった効果を持った

魔法アイテムでも、何でもいいので収集してきて

ください」


 追加で悪いんだけど、とフェリーチャが手を挙げる。

「魔法石以上に強力な力を、長時間発動し続ける

ことが可能なアイテムを探してきて。これは王様の

それとは違って、私がミナに依頼したことなんだけど」


「商人がそんなもの何に使うんだ? 高く買い取って

くれる所に転売しようってんじゃねえだろうな」

 くろうがからかうが、フェリーチャは大真面目な顔で、

「マジックリアクターに組み込むのよ。動力炉として

機能させるためにね」


「マジックリアクター? リーリン、知ってっか?」

「聞いたことない。それ何なの? アイテムか何か?」

「……まず概要から説明しないとね」

 とフェリーチャは身振り手振りを交えて話し始める。


「うちの商会で船を一隻作ろうと思って。国には許可を

もらってて、今は色んな所に協力を要請して、部品を

集めてるところなの。マジックリアクターはオルテックが

開発したパーツで、簡単に言えばその船のエンジンになる

部分よ」

「お前、船は所有してるじゃないか。島に渡るのに使った、

あのクルーザーみたいなやつ」

 ユウキの言葉に、フェリーチャはかぶりを振る。


「戦闘艦を作るのよ。ベースは200メートル級の

輸送船。軽量で頑丈なフェルデニア鋼で装甲して、

艤装(ぎそう)はオルテックとライセンス契約を結んだマジック

ミサイルランチャーとか、うちで独自開発した火器を

載せる予定よ」


「どうしてまた、そのような兵器の開発を?」

 エルザの言葉に、それを待っていたとばかりに

フェリーチャは力強く頷く。


「魔族の拠点には、海路でしか行けない場所も

あるでしょ。そこを完璧に落とすには大人数で

攻めなきゃならない。でも船で近付けば海中や

空から手強いモンスターが群れで襲ってくる。

プレイヤーが健闘しても、船を沈められたら

そこでお終い。手間と時間をかけてやり直しよ。

でも、私が作る戦闘艦ならちょっとやそっとじゃ

ビクともしないし、返り討ちにだってできる。

私は魔族を倒すための艦を作りたいの」


「完成したら、うちのギルドで使ってもいいそうよ。

国王様から後で船をもらえる約束だし、自前で船を

何隻も所有してるなんて、かっこいいじゃない?」

 ミナはこの話を出され、すぐ協力の話を請けた。

 転送魔法陣で行けない場所がある以上、潮の流れさえ

全て正常になれば、海路での移動手段があることは

大きなアドバンテージである。


 この話を聞かされたのは昨晩拠点に戻ってからだが、

国王にルージェタニアとクラルヴァイン神国に行けと

指示されたのは、渡りに船であった。

 2つの国は他国と比べても、高純度の魔法石やそれを

上回るアイテムが数多く取引され、また保管されている。


 王からの命令を(ないがし)ろにするつもりは毛頭ないのだが、

王都防衛の手段を探すついでに見つけられそうなら

手間が省けるというものだ。


「防御魔法を探すのが最優先だからな。魔法石商に

掘り出し物を聞いてくるくらいは出来るだろうけど」

「お願いね。ちゃんと見合った報酬は払うから」

 ユウキにウインクすると、自分の話はもう済んだと

いうように、フェリーチャはゆったり椅子にもたれた。



 2つの国において何をしてくればいいのか。

 任務のスケジュールをある程度組むと、部屋にいた

者達は準備のため三々五々で出て行った。


 アキノが席を立ち、自室に向かおうとすると、

「お昼、まだでしょ?」

「? ええ」

「先約がなければ、一緒にどうかしら?」

 珍しく、ミナがアキノを昼食に誘った。



乗り物を得るには不足するパーツを集める。基本です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ