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冒険者達の集い  作者: イトー
国王主催パーティー
144/173

魔力の柱

 

 柱の表面は流動的で常に動いており、移動する

噴水のようであった。

 それはあたかも海面を切る鮫の背びれのように、

威圧感を持って迫ってくる。


「来るぞ!」

 ユウキが注意を喚起し、各々が呼応する。

 相手は正体不明、出方を窺いながら戦うしかない。


 リュウドは構えを青眼に変えて迎え撃つ。

 迫る柱の上部がぶわっと広がると、大きく広がった

掌となって襲い掛かってきた。


「イヤァ!」

 扇形に剣閃が走り、指にあたる部分が切断されたが、

「むっ!?」

 切り落とされた部分は空中に霧散したが、すぐに

欠けた部位が復元を始めた。

 念のため、リュウドは足を引き、距離を取る。


「厄介なやつ。物理攻撃が無効ではないようだが」

「ゲインジェル並の再生力を持ってるのか」

 ユウキが口にしたのは、凄まじい再生力と増殖力で、

殺し切らなければ延々と戦闘し続けなければならない

スライム系のモンスターだ。


「それは違うなあ。再生じゃないんだよ、僕があれに

供給してるんだ。僕が魔力のサーバーなのさ」

「あれは、魔力そのものか」

 ヨシュアが冷静に分析する。

 床に魔力を伝わらせてジェスターは柱を操っている。

 エネルギーを注いでいる限りはほぼ無限にあの形状を

保っているのだろう。


「はあっ!」

 聖なる力を伝わせた剣身でヨシュアは柱を切り裂く。

 パラディンの鋭い太刀筋で一時は両断されるものの、

先ほどと同じように復元が始まる。


「デーモンベイン!」

 追い討ちでエルザが閃光する光弾を放つ。

 邪悪な属性にのみ特効を示す聖属性攻撃魔法だ。

 命中すると斬撃時の断面から、オキシドールで消毒された

傷口のようにぶくぶくと泡が生じ、形状が歪む。


「見て分かる通りね、こいつはそういうのに弱いんだ。

もっと巨大化させれば何ともないんだが、ミニサイズで

維持するとウィークポイントを補いきれなくてね。まあ、

あんまりやり過ぎると宮殿そのものを壊しちゃうから、

一応加減してるのさ。僕は細やかな気遣いができるんだ」

 ジェスターはわざわざ自らの術の弱点を明かした。

 複雑な仕組みの魔法なのであろうが、力を見せるにしても、

彼からすればまだ遊びの範疇を超えていないのだ。


 彼が説明する一方、かま首をもたげた蛇に変わった柱が

レインへと飛び掛った。

「ソードプロミネンス!」

 彼女は臆することなく、右手の剣から火炎を吐かせると

真一文字に切り払った。


 炎が赤熱した剣の軌跡を追い、空気を熱く焦がす。

 焼かれた断面を見せる蛇は不定形の体をグニャグニャと

歪ませ、やはり再生に手こずっているようだ。

 その様子に安心するのも束の間、別の柱が同じく蛇の

形状を取って彼女に畳み掛けてくる。


「凍結剣!」

 今度は左の剣から凍気を発し、吹き荒ぶ一陣の吹雪を

思わせる曲線が宙に引かれた。

 斜めに斬られた蛇は真冬の滝のように凍りつく。

 魔力の塊であるが故に、魔力を帯びた攻撃に対しては

影響を受けるようだ。


「エクスプロード・セクルデッド!」

 マキシが魔法を唱えると、魔力で作られた半透明の板が

柱を八方から囲み、さながら箱詰めにしてしまう。

 密閉されると中で強烈な連続爆発が起こった。

 行き場のない破壊力は狭い空間に充満し、パッケージ

していた板が消えると、柱は跡形もなく消滅していた。


「ブロウクンアックス!」

 ユウキは魔力で形作った戦斧で目の前を大きく薙ぎ払う。

 斧の刃は2メートルほどもあり、3本の柱をズバズバと

同時に切断することに成功した。



「魔族の力がどうのと威張ったわりに、どうってことないな」

 ユウキは震える柱越しにジェスターを見るが、

「加減してやってるってさ、今言ったろう? そういうふうに

余裕をこかれるとさ、大人気(おとなげ)なくて悪いけど、もう少しだけ

力を示したくなるなあ。弱いって誤解されたくないんでね」


 復元速度が遅くなった柱を床に滲み込ませて消すと、

ジェスターは腕をクロスさせてぶつぶつと詠唱を始めた。

 すると彼の前の床がひび割れ、下から何かに突き上げられて

ボコボコと隆起していく。

 そしてそれが限界に達した時、破裂音と共に巨大な柱が

そそり立った。



 今も数本残る5メートルサイズの柱の、ゆうに3倍以上ある。

 舞踏会場の吹き抜けの天井でなければ、屋根を突き破って

いたであろう。

 高さだけでなく幅や厚みも大幅に増していて、それはもう柱と

言うより、壁と呼んだ方がしっくり来る。

 あるいは大きな滝、宮殿内に現れた瀑布(ばくふ)である。

「さあ、ちょっとだけ大きくしてみたよ。どうってことない? 

だっけ? さっきと同じ、そんな余裕綽々の台詞が言えるかな? 

どうかな、どうかな?」

 ジェスターは愉快そうに口角を上げた。



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