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冒険者達の集い  作者: イトー
国王主催パーティー
128/173

晩餐の始まり

 

「おお、国王陛下」

「陛下」

 従者が開いたドアから、国王リカール7世が

威厳たっぷりに現れた。

 隣には気品溢れるドレスで着飾った王妃の

メアリーの姿があった。


 謁見した時はローブ姿だった国王だが、今夜は

金色の肩章のついた藍色の制服に身を包んでいる。

 国によっても違うが、これがスタンダードな

王族の正装スタイルらしい。

 と、ユウキは設定資料集で読み込んだ情報を

思い出していた。


 ざわつきの中に、抑え気味ではあるものの、

領主の娘達の色めき立つ声が混じった。

 それは国王と王妃の後ろに立つ、2人の王子の

存在に対してだ。


 第一王子、長男のレオン。

 存在感のある、たくましく精悍な顔付き。

 父と同じく肩章のついた服だが、赤い生地が

目を引く。

 騎士団長だけあり、胸には騎士のみが装着を

許された、メダル状の騎士章が輝いている。


 その横には第二王子ルーシュ。

 肩幅のあるがっしりとした体格の兄とは違い、

ほっそりとしたスマートな体型をしている。

 武を体現するような兄に比べ、文武でいえば

文を得意としていて、母親似なのか、顔付きも

顎の細い優しげなものである。

 衣装も地味めな小豆色の礼服を着ていた。



 領主達は片手を胸にやる礼で敬意を示すと、

ひとりひとり並んで、国王の前に立った。

「陛下。このたびはお招きいただき、大変

光栄でございます」

「うむ」

 挨拶に頷いて返していく国王と王妃。


 映画のワンシーンでも見ているかのような

光景に、ユウキは挨拶に行く機を逸して

しまっていた。

 そこでヨシュアが、

「さあ、僕らも国王のところへ」

 率先して列へと参加する。


 スムーズに進む列の途中で、国王とレオンは

ユウキ達の存在に気付いたらしく、目配せを

送ってきた。

 そしていよいよ最後尾の彼等の番が来る。


 ヨシュアが物怖じせずに言った。

「本日はこの素晴らしい晩餐会に特別にお招き

 いただき、ありがとうございます」

 ミナもそれに続き、

「ギルド代表のミナでございます。異界人の私達を

公認してくださった上、このような機会を与えて

くださったこと、心より感謝いたします」

「うむ。この場に異界人を招くのは、こちらも

初めての試み。まあ、気を遣わず楽しむとよい」


 招待客全ての挨拶が済むと、国王は一同を

見回し、

(みな)、今夜はよく来てくれた。今宵の晩餐会

には珍しい客人も招待しておる。これも縁だと

思い、交流の場にしてもらいたい」

 そう言うと、従者達を連れて移動を始めた。


 領主とその家族も、付き従うようにその列に

ついていく。

 どうやらダイニングルームへと移るらしい。


「俺達もついていけばいいのかな」

 ユウキは周りの様子を窺ってから、アキノを

連れて歩き始めた。

 会場で食事をして、休憩後にダンスという

流れしか分かっておらず、細々(こまごま)とした行動は

状況で判断するしかない。


 パーティーは定期的に行われるものらしく、

領主達は慣れたものである。

 どこにダイニングがあるのかも分かっている

らしく、顔見知りと歓談などしながら部屋へと

歩いていった。


 遅くも早くもなく、それでいて歩き方には

気品を欠かさず──そういった所を注意しつつ、

ユウキ達は広大な宮殿で目的地を目指した。

 下手なダンジョンと比べたら、こちらのほうが

よっぽど神経を使う思いだ。


 領主達の流れに乗って着いた先には開け放たれた

大きな両開きのドアがあった。

 その中には、これはまた贅を尽くしたダイニング

があった。


 広い部屋には調度品や絵画が飾られ、中央には

長方形のダイニングテーブルがある。

 それも今回の参加者が全員座れるサイズだ。

 等間隔で置かれたキャンドルのデザインも何とも

凝っていて、ナイフやフォークも極上のものが

準備されていた。


 ユウキは普段行きつけの食堂を卑下するつもりは

毛頭ないが、食事をするにもまるで規模が違うなと

舌を巻いた。


 上座に当たる奥の席に王族4人が座ると、部屋に

入った領主達も着席していく。

 テーブルの形から、左右に三十数人ずつが座って

いく計算になる。


 マキシの説明によれば、席順は王族との親しさや

血筋、乱世だった頃にどこに加担していたか等で

決まっているらしい。

 領主にも反りが合う合わないがあり、人間関係の

しがらみも席の位置に表れているという。

 考えたくないが面倒なことだ、とユウキは思った。


 今回ギルドのメンバーは中央で、王族に近い側の

席に配置された。

 これは、お披露目、の時に招待客によく顔が分かる

ためであろう。


 全員が席につくと、食堂専門の従者がよく冷えた

食前酒を注いでいく。

 給仕役は3人の客に対して2人が専属で付くらしく、

かなりの人数だが、レールの上を移動する乗り物の

ように、各々が滞りなくとてもスムーズに動く。


 食事の準備が整うと、緩やかでありながら厳かな

空気が漂い始める。

 それは国王の簡単な挨拶で、このディナーが始まる

かららしい。

 頃合を見て、従者が椅子を引き、国王が立った。


「それでは今宵の晩餐を始めたいと思う。先ほども

話したが、今回は異界人を客人として招いている。

そなたらも領地で見かけ、その活躍を耳にしている

と思うが、彼等はその異界人の代表である者達だ。

今後よき関係を続けるためにも、今夜の晩餐会を、

互いが互いを知り合う機会にしてもらいたい」

 そう言うと国王は、すまんが立ってくれ、と

異界人───プレイヤーであるユウキ達を促した。


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