08エネルギー
不老化してから六年が経った。
不死化を目指し研究を続けているが、やはり不死は難しい。
なぜなら人は容易に死んでしまうからだ。
酸素が無ければ死ぬ。水が無ければ死ぬ。栄養素が無ければ死ぬ。高温や低温で死ぬ。物理的に潰されて死ぬ。薬品や毒で化学反応で死ぬ。絶望で自ら死ぬ。
俺は不老化を達成し、その過程で超免疫を得た為、寿命と病気で死ぬことは無い。そんな俺でも何かあれば死んでしまう。
死なない為には、死ぬ原因を取り除けば良いのだ。
まず、自殺については心配無いだろう。俺の死にたく無い度は、これまでずっと高水準を維持している。ならばこれからも問題無いはずだ。はい、解決。
次に解決が簡単そうなのは栄養素の欠乏についてだ。
今回は不死化研究の第一歩として、エネルギー問題を克服する。
俺は既にある程度の栄養素の変換能力を持っている為、米さえ十分に食べていれば生きていける。故に俺にとっての栄養素の欠乏は、エネルギー不足と同義になる。
まずは消化器官を強化する。
様々な動物の消化器官を参考に、効率の良いシステムを考え、レトロネットワークでDNAを書き換えた。
これで雑草でも食べていれば生きていけるようになった。
次に体細胞分裂制御プログラムを作り、脳細胞分裂のときのアポトーシス制御プログラムを改変し体細胞にも適用した。
これで飢餓時には体を分解してエネルギーに使用し、体を小さく再構築出来るようになった。
脳のスペース維持が必要な為、小学生低学年くらいが限界だが、エネルギーを使うことで若返りが可能になった。
せっかくだから若返っておこう。今の俺はもちもち肌のおっさんだしな。
「電子の契約に囚われし増幅の機器、トランジスタよ。今こそ我が力を解放せよ。――二十倍なんとか拳!! 」
俺は光と電気のオーラに包まれながら、エネルギーを消費するのであった。