弱過ぎる主人公
時は20XX年――
人類は念願の超能力開発に成功していた。
超能力は誰にでも備わっており、能力の大小から種類まで様々だが、全員が能力保持者であった。
一見すると生活は豊かになった様に思えたが……
「YOYO~!そこの兄ちゃん金出せYO~!」
また絡まれた……。
これで今日3回目なんだけどなぁ……。
「何黙ってんだYO~!さっさと財布置いてけYO~!」
少し路地裏に入るとすぐこれだ。
少し前までは日本も治安が良かったらしいんだけど……やっぱり能力の開発のせいだろうなぁ。
「痛い目そんなに見たいかYO~!金出せYO~!」
うわっ!喧嘩になっちゃう!ヤバいヤバい!
「す、すいません。どうか見逃して下さい!」
そう言ってYOYO男に頭を下げた。
「あ?お前俺をナメてるのかYO~?さっさと金出せYO~!!」
そう言ってYOYO男は掌から小さな炎を出し、オレに襲いかかってくる。うわっ!炎系の能力か!
オレはかろうじてYOYO男の小さな火の玉を躱す。
うーん……どうしようかなぁ……。
「火傷する前に金出した方が良いと思うYO~!」
YOYO男はオレを見ながら、しきりに金を要求してくる。
「そんなにお金が欲しかったら、働けば良いのに……。」
思わず呟いてしまったオレの言葉をYOYO男は聞いていたらしく、
「あ?もういっぺん言ってみろYO~!」
等と怒りを露わにして、また火の玉を投げ付けてきた。
その火の玉を再び躱して、オレはこう言った。
「テメェこそ怪我したくなかったらさっさと退け。」
「と、突然どうしたんだYO~!?黙って金出せYO~!」
「あまり調子に乗るなよ。」
「ひっ!!ここはひとまず退散だYO~!」
YOYO男は突然強気になったオレにビビったらしく、逃げていった。
それもその筈か。
オレの能力を一言で表すなら、【威圧感】だから。
我ながら全く使えない能力だと思う。
別に何も起こらない能力だし、この能力を使ったところで対話の相手の恐怖心を煽るだけ。
まあ自分の能力を嘆いていても仕方ない。
家に早く帰ろう。
「ただいまー。」
言ってみて寂しくなった。
この春から晴れて高校生になるオレは、実家を離れて、一人暮らしすることになっていたのであった。翌日、学校に向かって歩いていると突然男が眼前に現れた。