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郵便局でアルバイト

作者: WAIai
掲載日:2026/09/07

ー今日からアルバイトだ。

郷田は時計を確認し、立ち上がる。

今、夏休み中で郷田はこれからアルバイトに行くところだった。

知人の紹介で入れてもらったのだが、緊張しないわけではなかった。

ー友達もいるし、大丈夫だよね。

スマホを手に取り、LINEを確認すると、一緒にアルバイトする2人から連絡があった。

アルバイト、行くよ、みたいな内容で、郷田はよしと気合を入れる。

まだ女子高生なのだが、薄くメイクし、バッグを持つ。

郵便局は郷田の家の近くにあり、歩いていくつもりだった。

「…外、暑そうだな」

すでに汗をかいており、匂いがしないか心配だった。

ピコン、と音がしたので、スマホを見れば、もう郵便局に着いたようだった。

「お母さん!! 行って来ます」

「はい、気をつけて」

母親がエプロンで手を拭きながら、見送りにやって来る。

自慢の母親で、親友のように何でも話せる仲だった。

双子みたいと言われたこともあるが、それは大げさだと、軽く笑う。

「どんなことをするんだろう?」

「何をするんだろうね? とにかく言葉遣いに気をつけなさい。分かった?」

「うん!! 気をつける。ーじゃあ」

靴を履いて外へ飛び出す。

その途端、むあっとした熱気が襲いかかり、郷田の息を止めようとしているかのようだった。

だから思いっきり息を吐き出すと、太陽に負けてたまるかと、睨みつける。

実は入道雲が気持ち良さそうに広がっており、太陽はかしずいている気がした。

ー郵便局まで我慢、我慢。

熱さを吹き飛ばすように、大股で歩いて行くと、すでに郵便局が見えてくる。

友達2人も外で持っていてくれたようで、悪いなと思いつつ、ほっとする。

「良かった!! 2人に会えた」

「もう遅い。暑くて溶けそうだわ」

「それは大げさでしょう? でも汗は気になるな。メイク、落ちないといいんだけど」

友達の1人が鏡を出すと、顔をチェックする。

鏡は光を反射し、光の道を作る。

「よし。行こうか。楽しみだね」

「お金をもらえるんだよね? これは頑張らないと」

3人はふふふと笑うと、郵便局に入って行く。

受付にいた女性、50代くらいだろうか。その人に声をかける。

「あの…!! 今日からアルバイトする者なんですが」

「…ああ。あなた達がそうなのね」

女性は柔らかく微笑んでくれ、郷田達の緊張が緩む。

「ちょっと待ってね。担当者を呼んでくるから」

「は、はい…!!」

3人はなるべく固まって一緒にいるのだが、郵便局の中はエアコンが効いていて寒いくらいだった。

自然に逆らう人間を、太陽達はどう考えているのだろうかと、ちらりと思ったが、涼しさにほっとする。

すぐに担当者40代くらいの男性がやって来て、郷田達に声をかけてくる。

「君達がアルバイトする娘達?」

「はい、そうです!!」

「よろしくお願いします」

口々に言うと、担当者ー名前は元原というらしいが、優しく言ってくる。

「じゃあついて来て。仕事を教えるから」

「はい!! 頑張ります」

ガッツポーズを作ると、元原が眩しそうに見てくる。

「元気だね。学校でもそうなの?」

「えっと…学校でもこんな感じです。3人で固まっていて…。ねえ?」

「うん、そうだよね。私達、明るくて元気なほうです」

「自分で言わないの、もう馬鹿」

あははと、郵便局内に明るい笑いが広がる。

3人集まるといつもこうで、目立つ存在だった。

元原も笑顔になると、ドアを開く。

「ここが君達の仕事場。郵便番号ごとに、荷物というか、手紙を分けて欲しいんだ。できる?」

「やります!! この日のために、張り切って来たんですから」

郷田が鼻息を荒くすると、元原は「よし」と呟く。

「とりあえず俺がやるのを見てて」

簡単そうに見えるのだが、それは元原が慣れているからであり、郷田はごくりと唾を飲む。

ー初めてのアルバイト。少しでも自分で稼がないと。

自分のものは自分で買うのが教えの家なので、頑張ろうと腹に力を込める。

「やってみる?」

「もちろんです!! ね?」

2人に話しかけると、うなずいてくれる。

元原は立ち位置を変えると、勧めてくる。

「はい、やってみて。最初だけ見ていくから」

「やります…!! よーし!!」

腕まくりをする真似をすると、2人ともやる気のようだった。

元原はじっと3人を眺めてくる。

「若いっていいね。こっちまで元気になるよ」

「そうですか? えへへ」

褒められたと思いつつ、仕事を始める。

傷つけないように、手紙や葉書を持つと、仕分けていく。

ーあ。この仕事、私に向いている。

やってみると楽しく、郵便番号と住所を確認していく。

最初は硬かった動きが、段々とスピードアップし、慣れたようになる。

「おー、すごい。すぐ動けるなんて」

パチパチと元原は拍手をしてきて、3人に言ってくる。

「女子高生が来るって言うから、どんな娘達が来るのかと思ったけど、君達なら大丈夫だ。そのまま仕事を続けて」

「はい!!」

郷田は褒められたのが嬉しくて、郵便物を扱っていく。

アルバイトだからと手を抜くつもりはなかった。

ー人生初のお給料、もらうんだ。

わくわくしてきて、鼻歌を始めそうな勢いだった。

担当者の元原も良い人なようで、注意してくることはなかった。

ーイケメンだし。奥さんとかいるのかな?

ふと気になって振り返ると、元原と目が合う。

どうやら3人を眺めているつもりが、郷田だけを見ていたらしい。

2人は気づいていないのか、郷田だけが気づいてしまった。

ーえ? え? 何で、私?

不思議に思って見返すと、元原が話しかけてくる。

「やってみると単純でしょう? 楽しい?」

「楽しいです!! 仕事するのが、わくわくするというか…。初めてのアルバイトがここで良かったです」

「そう。他の2人は?」

「大丈夫です。順調です。ね?」

「う、うん。失敗しないようにしないと」

「失敗してもいいんだよ。まだアルバイトなんだから。怒られるとしたら、担当者の俺くらいのものだから」

「え? そうなんですか? 怖い人がいるとか…?」

「違う、違う。でも仕事中は厳しいかな」

ははと笑うと、元原は3人に言ってくる、

「俺も女子高生と一緒に仕事ができて嬉しいよ。後で連絡先を教えてくれる?」

「えっと。どうする?」

3人は顔を見合わせると、郷田が手を挙げる。

「はい!! 私が後で教えます。よろしくお願いします」

「分かったよ。じゃあ俺は離れるけど、後で見に来るからよろしく」

そう言うと、ふわりと香水の匂いがし、風が流れてくる。

元原はモデルなように消えていく。

いなくなると、すぐ友達が話しかけてくる。

「かっこよくて、優しい人だね。連絡先、教えるんだよね?」

「皆で教えようよ。学校の同級生よりも、大人でスマートだし」

3人はにやりと笑うと、仕事に戻っていく。

郷田は軽やかなリズムで、まるで踊るように動いていく。

ー私、将来が見えてきたかもしれない。

ふとそんなことを思い、仕事に集中していくのだった。

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