運命
その夜、俺はいつものように屋上で夜風を浴びていた。
「トーナメント・・・かぁ」
もしみぞれと当たってしまったらどうしようか。おそらく、俺はあのときの情けもあって、みぞれに攻撃を仕掛けるなんて芸当、出来っこないだろう。だから、俺は焦っているのだ。もし、当たってしまったら・・・と思うと。
「ま、こればかりは願うしかないかぁ」
当たりませんように___。と、俺は神に誓った。・・・そこで、気がついた。
「あ、そういえば神は俺だった」
この学園で最弱クラスで生活しているからか、自分が神であることをすっかり忘れてしまっていた。そうだ。俺はこの世界での神なんだ。それを忘れちゃいけないのである。と、するとその時、
「何してるんですか?ここで」
「ほんっと、お前何処にいてもついてくるよなぁ・・・」
やっぱり、GPSかなんか仕掛けられているんじゃないか?と思って、俺の身体中を探ってみる。・・・しかし、
「やっぱりない」
「ん?どうしたんですか?」
「いや、なんでもない」
やはり探しても、それらしきものは見当たらなかった。じゃあ、なんでこいつは俺の居場所が分かる?・・・まぁ、愛の力ってことにしておこうか。
「それで、何していたんですか?」
「別に。なんもしてない」
「そうですかぁー。っていうか、明日の試験どうしますか?」
「どうするも何も・・・対戦相手と戦うだけだよ」
「そうですか。私も、流石に頑張らないといけないですからね」
「そう言えば、お前って前の試験は合格したのか?」
「はい。しっかり合格しました!って言っても、ギリギリの合格だったんですけどね」
「はへー」
そこで、俺は気になることが一つ出来てしまった。
「お前ってさ、なんでこの学園に来たんだ?」
純粋な疑問だった。こいつ、夢川緩涼は、あの時の世界以外の、こう言った荒れ果てた世界で見かけることはなかった。それに、転生者でもないからそう言った戦闘経験などはないはずなのだが。
「いつか、言う日は来るんでしょうが・・・今言うことではないかもですね」
「そうなんか」
「逆に、そう言う大和さんはこの学園に来た理由はなんなんですか?」
と、そう問われて一瞬だけ心臓が跳ね上がる。が、しかし。すぐに気を取り戻した。まぁ、嘘の理由くらいだったら言ってもいいが・・・変に勘づかれても迷惑なだけだ。故に俺は、
「俺も、今言えることではない」
と、みぞれの言葉を借りて、俺はそう返した。
「そうですかぁー。少し、気になっちゃいますねー」
「それは俺もだ」
そんなこんなで。
「ま、私はもう寝ますね。明日に向けて、早寝することにします。貴方も、早く寝ておいた方がいいんじゃないですか?」
「そうだな。たしか、寮同じだったよな?」
「そうですね。一緒に戻りますか?」
「あぁ。そうしよう」
そう言って、俺たちは寮に戻るのであった。
そうして次の日、何事もなく試験は開催された。今日は、試験の予選日。このFクラス、総勢1200人ほどいる生徒が、半分敗退が決まる日だ。もう、早速戦いは繰り広げられている。
「うぅ・・・!!」
戦っている途中の生徒が、そう唸りを上げる。
「こう見ると、Fクラスって結構実力低いんだなぁ」
一応、別のランク帯の試合も観れるのだが、観て分かる通り。Fランクの1個上のNランクですら、実力差がかなりあるように見える。だから、上下関係が生まれるんだろうなぁ。まぁ、そう見られても仕方がないのだ。だって、この世界は実力主義の世界だから。
「勝者、和人ー!!」
そうして、その瞬間、勝者が決まったようだ。これで、負けた人間は退学に近づく・・・という話だったな。退学にしない理由は、人が多い方がいいからだろうか。まぁしかし、そんなことはどうでもいい。
「次の戦いは、10分後」
これ、気分が悪いのが、いつ試合が来るかわからないことだ。鼾をかいて寝ることも出来ないし、優雅なティータイムを嗜むことも出来ない。
「来るなら早く来てくれ」
俺は、そう願うしかないのであった。とにかく、みぞれと当てることだけはやめてくれよ・・・?と、俺が怯えながら待っていると、
「次の対戦が決まりました。今から、対戦する2名を紹介します」
と、そのアナウンスが鳴り響いた。俺は、手を合わせてその放送を聞く。
「次の対戦は・・・夢川緩涼VS・・・」
「あ、みぞれ選ばれた」
ここで来ちゃうかー。まぁ、なんとかして勝ってくれ。と、俺は思った。そして肝心なのはここから。みぞれの対戦相手が、俺じゃなければ・・・。
「そして・・・」
その瞬間、名前が読み上げられる。
「無叶大和」
「・・・。はぁ」
大体、そうだろうと思った。だって、そんな簡単に話が纏まると思ってもいなかったから。
「だーもう!!運悪すぎるって!!」
なんで当たってしまうんだよ・・・。どうすりゃいいんだよ。俺は。クソが。
「というか、こんなのフラグ過ぎるだろ」
俺の発言全部が、フラグをピンと立てていた。言わなければ、結果は変わっていたか?
「いや、そんなことはないだろう」
俺は、この現実を受け止めることしか出来ない。
「クソがぁ・・・。ふざけるなぁー!!」
と、俺はその部屋にその吐き台詞を吐き捨てて、リングに向かうのであった。




