クラスF生徒のスキル
それからしばらく経って、俺は病棟に隔離された。この学園は、少しおかしいようだ。学園専属の看護師が、
「この薬を飲んでください」
とか言うもんだから、従って飲んでみたら・・・。傷はみるみると回復していき、痛みも数分しないうちに引いたのであった。すると、俺の部屋の扉が開いた。・・・まぁ、来るとは思っていたよ。
「大丈夫ですか?大和君」
姿を表したのは他でもない・・・。つい数時間前まで、俺と戦っていた、夢川緩涼だ。
「あぁ。結構、薬の効果が凄くてな。もう痛みも傷もほとんど引いたぞ」
「それはよかったです」
「・・・。それだけか?」
もちろん、と言った顔をして、みぞれは語り出した。
「何故、あんなことをしたんですか?」
「あんな事?さぁ、なんのことだ?」
「とぼけないでください。私は戦っていたから分かるんですよ。私は、貴方に傷一つも与えていません。だと言うのに、粉塵が解けた後には、貴方が倒れていた。つまり、貴方が粉塵が蔓延している途中で、何かをしたっていうわけですよね?どうして、そんなことをしたんですか?」
「どうしてって・・・」
まずい。言い訳を考えていなかった。どう言えば、こいつは納得するだろうか。いや、そもそも納得するだろうか。転生者で、前世で関わりがあると言ったらややこしくなるし、みぞれのランクを上げさせるため。と言ったら情があるっていうことになる。考えろ・・・。
「ま、まぁ。俺もよく分かってないんだよ。本当は、粉塵を爆散させて、混乱している隙を突いて倒そうと思っていたのだが、いきなり誰かに殴られた感覚を覚えてな。それって、お前じゃなかったのか?」
「私じゃないです。でも、その言い方からすると、他者が貴方を倒したっていうことになりますよね」
「とどのつまり、そういうことだな。お前じゃないってんなら、試合を観戦していたFクラスの生徒が、俺を倒したってことになるな」
「でも、そんなこと有り得るはずがないんです」
「ほう。そりゃどうして?」
「私でも、貴方ですらあの状況では視界が奪われていたんですよ?そんな中、同じクラスに属する生徒が、あの状況の中自由に動けるなんていう芸当、出来ると思いますか?」
「まぁ、思わないな」
異能力者だったらまだしも・・・。だが、そんな異能力は聞いたことがない。
「だったら、その可能性も低いんですよ。なにせ、他者が試合をしている際に邪魔をしたら、即失格なんですよ?流石に、そんなリスキーな行動は出来ないはずです。だから、私が考えた末、貴方が自分で傷をつけたんじゃないかと」
まずいな。中々、勘が良いようだ。ここまで来られたら、認めるしかないか?だって、打開できる策が思い浮かばない。
「ま、まぁ。俺は自分に対しては何もしていない・・・としか、言いようがないな」
「ふーん。そうですか」
「とにかく、俺は負けて、お前は勝ったんだ。それが、どんな真実があろうとな。だから、もうそれでいいじゃないか」
「私は納得が行きません。しかし、学園側は私の話を聞き入れようとしないでしょうね。だから、その偽りの事実を抱えながら試験を突破します」
「あぁ。がんばれ」
「それでは」
そう言って、みぞれは病室を後にした。まさか、そこまで勘が良いと思わなかったな。
「もしかしたら、あいつは・・・」
とんでもない強者なんじゃないだろうか?いやまぁ、あの状況で俺が倒れている理由を特定するのは、誰にだって出来る芸当だろう。しかし、その勝ちを自分の利益にしないっていうところは、どことなく・・・。Fクラスの生徒ではないと思う。
次の日、怪我も完治した俺は、みぞれの試合を見守っていた。
「頑張って戦ってるな」
トーナメント表を見れば、みぞれのカードは3回戦まで進んでいた。つまり、2回戦は勝利を収めた。ということになる。
「やっぱり、あいつは強いんじゃないか?」
戦った感じでは、攻撃のスキルは良くてもNクラスの下位くらいだが、人格や、考察スキルはそれこそBやAほどの能力がある。だから、この戦いでも、
「お、攻めたな」
みぞれの考察スキルを活かして、自分が有利になる流れへと持っていっていた。
「勝者、みぞれ!!」
そうして、そのアナウンスが響き渡る。やはり、あいつはおかしい。少なくとも、俺の目にはそう映っている。
「近いうち、昇格するだろうな」
これでFクラス残留・・・というなら、見る目がないんだろうな。なんて、俺はそう思うのであった。




