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将来崩壊  作者: PP
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スマホ02

日本崩壊のタイトルは重複が多かったので、将来崩壊に変更しました。

 海水を口に含むたびに咽る僕は、涙目になりながら振り返る。


「ふぅん」


 久方ぶりの人の声だった。

 透き通るようなソプラノボイスに、僕は胸を押さえながら声の主に視線を移す。


「まだ涙が出るって事は新人よね。まっ、そんな馬鹿な事してればそれ以外無いか」


 初対面の僕を小ばかにする女の子の姿に、僕の脳はバグる。

 まず大き目な柄付きシャツに、腰に茶色の革のベルトバッグ。ズボンは履いていないのか、見た感じからは判断できない。そして腰まで伸びた黒い髪の毛は、手入れがされていないのかボサボサしていた。

 初めて見るタイプの姿見に、女の子はみんなオシャれをしなきゃ発狂する生き物だという固定概念が崩壊していく。


「何よジッと見て。それよりアンタしゃべれる? 思考力ある?」


 喋れる? とかどんな質問なんだ。

 そう突っ込みを入れたかったが、そう言いたくなるようなくらいに僕は呆けていたのかもしれない。


「まぁ良いわ。ほら、コレをつけなさい」


 気が付くと女の子は僕の目の前までやってくると、同じ目線でジッと僕の目を見つめながら首元に何かを嵌めだした。その時、何かを首につけられた違和感よりも、女の子の深淵の闇に落とされるかのような黒い瞳に、意識はグッと吸い込まれていた。


 そして、気が付いた時には女の子がケタケタと大きな声で笑い声をあげていた。


「アーハッハッ、何てチョロイのかしら! 貴重な労働力ゲットだわ。改めて聞くわ、あなた喋れるかしら?」


 チクリ。

 言葉に詰まっていると、首元に鈍い痛みを感じる。

 それをキッカケに、僕はやっと女の子に向けて声を発していた。


「なんだよ、やっぱりドッキリなんじゃないか。喉乾いたし、早くこんなバカみたいな事やめてジュースとご飯もってきてよ。本当、信じられないんだけど? 訴えるよ? そうだ、こんな事する奴は録画して晒してやる」


 ちょっと喋りずらかったけど少し含んだ海水のおかげか、気が付いたら僕は次々と思っていたことが口からあふれ出ていた。


 しかし、僕の思っていた通りにはことは進まなかった。


「スマホなんか使って、何するのかしら? あっ! そうか、思春期そうだもんねぇ。ほら、私の生足でも見る? アハハハッハハ、何期待してんの!? お前は一生私のペットになったんだから、ナマ言ってんじゃないわよ! ほら、私についてきなさいポチ」


 録画越しに映る女の子の顔がグニャりと歪み、愉悦のごとく心の底から楽しそうな声で煽ってくる。

 そいて、最後の言葉に僕は反応した。


「なんだよ、犬みたいに呼ぶなよ!」

「あなたは今日今この瞬間から私のペット、ポチよ。貴重な労働力なんだから、死ぬまで私の為に働いてね」

「なっ!」


 反論しようと、僕は自分の名前を伝えようとするも、何故か自分の名前が思い出せなくなっていた。

 そして、自分の意志に反して、まるで首をひっぱられるかのように女の子のもとに引っ張られていく。


「こんなモノっ!」


 首に巻き付いた何かを今さら外そうと試みるも、まるで皮膚にくっついているかのように外れる気配はなく、どんなに力を込めてもビクともしなかった。


「無理よ、その隷属の首輪は一生外せないし、一生終われないの。もうポチには人権は無いの」 


 本当に何なんだこの女の子は。

 訳が分からないが、僕は渇きと空腹から思考が停止しており、引っ張られるがままに女の子の後をついて歩いてゆく。


 砂浜を裸足で歩き続けて10分ほどだろうか。

 僕がいたコンテナハウスと同じものが、そこにはあった。


「その調子じゃあ力も出ないでしょう? 最初だけは私のをわけてあげるから、渇きをいやしたら早速働いてもらうからね」


 コンテナハウスに招き入れられた僕は部屋の中を見渡した。

 僕のいたところと同じで、ベッドが一つあるだけの殺風景な部屋。ただし、僕の部屋の白いベッドとは違い、かなり汚れている。そのせいかかなりの悪臭すら感じてしまう。

 思わず咽てしまうが、そのタイミングで部屋の片隅にある一つのものを見つけた。


「ほら、飲んでいいわよ。でも半分だけよ」


 そこにはたった一つのペットボトル。

 ラベルは無く、エナジードリンクでよくみかける黄色い液体が並々と入っていた。

 新品ではないだろうが、僕は渇きを今すぐにでも癒すべくペットボトルを手に取った。


 そして。


「うっ、、、」


 ふたを開けた瞬間、思わずペットボトルを投げ捨てようとしてしまう。

 しかし、そんな投げ捨てようとした僕の手をグッと握りしめて、投げ捨てる行動を防がれる。


「飲みなさいポチ」

「あっ、、うっ、、、うぇ」


 僕の意志だったのか。

 それとも、先ほどもあったような謎の強制力だったのか。

 嫌なにおいのするソレに口を付け、僕は口を潤す。

 未知の味に、液体を飲み込むことに躊躇をしたが、一度渇きが癒えたら止まらなくなった。


「ハイ、そこまで」


 後もう少し、もう少しだけ渇きを癒したいという欲求を叶えることもできず、僕はペットボトルのふたを閉めて女の子に向き合った。


「見た感じ、一週間以内ってとこでしょ? 少しだけ説明してあげるけど、そこから先は私の労働力として一生働いてもらうからね」


 結局、僕は言われるがままにその場に座り込むと、ベッドに腰かけた女の子は話し出す。

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