表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

入学試験③(未知なる洞窟)

「ねぇ、大丈夫? ねぇ、ノヴァ、目を覚まして!」


薄暗い洞窟の中、ミケチの必死な声が響く。


「うぅ……。」


ノヴァがかすかにうめき声を漏らした。


「ノヴァ! よかった、意識が戻った!」


ミケチは安堵の息をつく。


「ミケチ……ここはどこだ? あっ、俺たち、穴に落ちたんだっけ……。」


まだぼんやりとした様子で周囲を見回すノヴァに、ミケチは優しく微笑んだ。


「無理しないで。待ってて、聖なる輝きよ、生命に祝福を与え、痛みを和らげよ──ヒール!」


ミケチが手をかざし、柔らかな金色の光がノヴァの体を包み込む。傷が癒え、痛みが消えていくのが分かった。


「ノヴァほどじゃないけど、僕にだって人並みに魔法は使えるんだよ。」


ミケチは得意げに胸を張った。


「さすがだよ……。助かった。」


ノヴァは呆れたように笑いながら、そっと体を起こした。


辺りを見回すと、洞窟は奥深くまで続いているようだった。ひんやりとした空気が肌を刺し、壁には青白く光る苔が点々と生えている。かすかな光がぼんやりと周囲を照らし、足元にはゴツゴツした岩が散らばっていた。


「ここ、思ったより広いな……。」


ノヴァがつぶやく。


天井は高く、どこまで続いているのか分からない。奥からはかすかに水滴が落ちる音が響き、薄気味悪い静けさが周囲を支配していた。


「何か嫌な感じがするね。早く出口を探さなきゃ。」


ミケチが剣を構え、警戒を強める。


そのとき──


バサバサバサッ!


突然、洞窟の奥から黒い影が飛び出してきた。


「うわっ!?」


ミケチが反射的に身構える。


影の正体は、赤い目をぎらつかせるグロウフレア──魔力に引き寄せられる性質を持つ巨大なコウモリだった。


「グロウフレア……魔力に反応してるってことは、この先に何かあるかもしれない。」


ノヴァが低くつぶやく。


奇妙な金属音のような鳴き声を響かせながら、グロウフレアは彼らの頭上を旋回し、闇の奥へと飛び去っていく。


「この洞窟、普通の場所じゃないな。」


ノヴァは杖を握り直し、奥へ進む足を止めない。


「もしかして、何か強力な魔力が封じられてるのかも……?」


ミケチが呟くと、次の瞬間──


……ウゥゥゥ……


「おいミケチ、なんかいるぞ!」


洞窟の奥から、腐臭をまとった影がゆらりと現れた。


「うわっ! カーストスケルトンだ!」


ミケチが叫ぶ。骸骨の兵士──しかも呪われた剣を持つ厄介なアンデッドだ。


「エンチャント! 炎! おりゃぁぁ!」


ミケチはすかさず剣を振りかざすが、カーストスケルトンはひるむことなく呪いの剣で反撃する。


「危ない、あんなの当たったらただじゃ済まないぞ!」


「ミケチ!カーストスケルトンには光属性が有効だ!」


「おうけい!」


「ホーリーエンチャント!」


ミケチの剣に光の力が宿り、カーストスケルトンに斬りかかる。


……ウゥゥゥ……


「ノヴァすごい! 少し効いてるぞ!」


「次は俺だ! 輝ける光よ、敵を貫け──ルミナスショット!」


ア゛ァァ……ウゥ……


「効いてる! ノヴァ、トドメは二人で!」


「おう!」


ノヴァの魔法とミケチの剣が一斉に襲いかかり──


……ウゥゥ……グァァ……


カーストスケルトンは悽惨なうめき声を上げ、崩れ落ちた。


「ふぅ、なんとか倒したな……。」


「さすがだよ、ノヴァが弱点を知ってるなんて。」


「本で読んだことがあってな。覚えてて良かったぜ。」


すかさずミケチはマジックポーチにカーストスケルトンの素材をしまう。


「にしても、これだけじゃ終わりそうにないな……。」


ノヴァが天井を仰ぐと、上に続く階段が見えた。


「ひとまず進むしかなさそうだね。」


階段を登っても、洞窟はなおも奥へと続いている。


「ノヴァ、ここで少し休憩しよ。」


ミケチが座り込み、ため息をつく。


「あ~早く帰らないと、シアラに会いたい、シアラが足りないよ~。」


「相変わらずのシスコンっぷりだな、引くわ。」


「うるさいな! 妹と結婚したいわけじゃないけど、どこが好き?って言われたら百個は言えるね!」


「きも。」


ノヴァが呆れた顔を向ける。


「そういうお前は好きな人いないのか?」


「……俺の初恋は、この杖をくれたお姉さんだな。」


ノヴァは杖を握りしめ、遠い目をした。


「数年前、森で偶然会ったんだけど──」


「その人にもう一度会うため、俺は目的を達成しなきゃならないんだ。」


「目的?」


ミケチが問い返すが、ノヴァは立ち上がり、歩き出す。


「そろそろ行こうぜ。早く帰らないと。」


洞窟の奥へと進むノヴァの背中を追いかけ、ミケチも剣を握り直す。


しかし──その足元で、不吉な震動がわずかに響いた。


ゴゴゴ……。


奥から響く不気味な音。巨大な何かが蠢く気配が、確実に近づいていた。


果たして、二人は無事に地上へ戻れるのか──!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても面白い作品だと思いました。今後の展開に期待です! ノヴァの杖の秘密などミステリアスな要素もありそれがキャラの魅力に繋がっていてとても良い作り込みだと思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ