入学試験①(試験の始まり)
「えー、本日は来てくれてありがとう。それではさっそく、入学試験の概要について説明する。」
試験官らしき人物が前に立ち、静かに話し始めた。金色の縁のメガネをかけた女性——彼女の名はルミ先生というらしい。鋭い眼光を持ちながらも、どこか余裕のある雰囲気が漂っている。
「試験内容は、魔物の素材集めだ。集めた素材の量とレア度によって評価をつける。そして、上位10チームが合格となる。」
ざわざわと会場がざわめいた。参加者の顔には緊張や不安の色が浮かんでいる。
「……10チーム?」
ミケチが小さくつぶやいた瞬間、ルミ先生は続ける。
「そうだ。試験は2人1組のペアで行ってもらう。協力して魔物の素材を集めるんだ。上位3チームには特待生としての待遇が与えられ、入学金が免除される。試験の期間は1週間。では、早速ペアを作るといい。」
会場が一気に活気づく。周囲では、仲の良さそうな者同士が素早くペアを組み、互いに頷き合っていた。しかし、ひとりでうろうろする者や、気まずそうに立ち尽くす者もいる。
「なぁミケチ!ペアだって!ドキドキしてたけど、2人でなら合格間違いなしだろ!」
ノヴァがミケチの肩をポンと叩き、満面の笑みを浮かべた。ミケチも安堵の表情を見せる。
確かに、実力的には問題ないはずだ。ミケチは剣術に長け、ノヴァは魔法の扱いが得意。互いに弱点を補える相性の良いコンビだと、自分たちでも思っていた。
「よし、みんなペアになったな!」
ルミ先生が全員を見渡し、満足げにうなずいた。
「では、試験の開始にあたって、お前たちにこれを渡そう。」
そう言うと、彼女は袋を全員に配り始めた。
「これは《マジックポーチ》だ。見た目は小さいが、中は無限に収納できる便利なアイテムだ。これがあれば、素材を運ぶのに困ることはないだろう。」
受験生たちはそれぞれ袋を受け取り、中を覗き込む。ぱっと見はただの布袋だが、確かに底が見えない。手を突っ込んでも、どこまでも沈み込んでいくような不思議な感覚がした。
「これはすごいな……こんなの初めて見るよ!」
「これならどれだけ素材を集めても問題ないってわけか!」
あちこちで感嘆の声が上がる。ノヴァとミケチも試しに袋を開けてみたが、確かに底がない。ミケチが軽く魔力を流し込むと、袋の内側が淡く光る。どうやら、持ち主の魔力に応じて収納の安定性が変わるらしい。
「なるほど。これなら素材を無限に入れられるわけだ。」
「便利すぎるだろ、これ! もっと早く欲しかったな。」
ノヴァが興奮気味に言うと、ミケチが肩をすくめた。
「でも、試験で役立つのは間違いないね。」
ルミ先生が手を打ち鳴らし、全員の注意を引いた。
「では、お前たち——試験開始だ!行ってこい!」
その言葉とともに、一斉に動き出す受験生たち。ノヴァとミケチも顔を見合わせ、互いに気合を入れるように頷いた。
「さて、まずはどこへ向かう?」
「とりあえず、森の奥の方がいいだろう。低級の魔物がいる場所じゃ、レアな素材は手に入らない。」
「だね!じゃあ、出発するか!」
ノヴァとミケチは勢いよく駆け出した。目指すは、未知なる冒険の地。試験の幕が、今まさに開けたのだった。